2019年7月19日(金)

レーシングワールド

フォローする

5年連続で業績回復 地方競馬の真の復活条件

(3/3ページ)
2017/8/12 6:30
保存
共有
印刷
その他

結局、組織形態問題は現状維持の形で決着がつき、中央・地方相互間で馬券販売の相互受委託を解禁する改正競馬法が05年に成立。この年はディープインパクトが3冠を達成したが、競馬の業績は相変わらず厳しく、JRAもこの頃からは地方との協力を通じた反転を探る方向にカジを切り、発売協力の道が開かれた。

3つに大別、今後の課題

発売協力し始めた時点では、当事者もここまでの成果は期待していなかった。だが、12年以降の景気回復ムードに、競争相手であるパチンコの失速も重なり、少し前まで存廃問題が浮上していた地域でも今は廃止論が影を潜めた。ただ、喜んでばかりもいられない。まず、売り上げを押し上げた委託発売には手数料が伴う。地方の場合、同じ1億円でも自前の発売施設で売ると、粗利は2200万円程度だが、JRAのネット投票経由なら手数料を10%として粗利は1200万円ほどにとどまる。委託販売への依存度が高いと、見た目ほど収益が上がらないのだ。全体のパイは拡大しているが、思い切った投資に踏み切るにはまだ十分とはいえない。

7月のジャパンダートダービーを制したヒガシウィルウィン(中)=共同

7月のジャパンダートダービーを制したヒガシウィルウィン(中)=共同

第2に、中央との馬の競争力の格差が絶望的に開いている。実は発売協力以前もJRAの地方支援は行われていた。90年代後半から地方で中央の一流馬が出走できる交流重賞の設置が相次いだが、賞金の半額は原則としてJRAが負担。馬と賞金を提供して地方の商材をつくる仕掛けだった。だが、発売網の不備もあって売り上げが伸びなかったばかりか、地方馬が全く勝負に参加できない状況が繰り返された。交流重賞は97年からダートグレード競走として体系が整備され、G1級は現在、地方で年間10競走行われるが、07年以降、地方馬の優勝はわずか10回で、うち5回はフリオーソ(現種牡馬)1頭が挙げた。80年代末にオグリキャップやイナリワンが中央に移籍し、芝のG1で活躍したことを思えば、惨状というほかない。7月のジャパンダートダービー(大井)で、船橋所属のヒガシウィルウィンが中央馬を抑えて勝ったのが、3年7カ月ぶりの優勝だった。

とりあえず存続の危機が遠のいた今、地方競馬の課題を挙げれば(1)馬の競争力向上(2)老朽化したスタンドや走路の改善(3)厩舎労働力の確保――の3つだろう。だが、どれも簡単ではない。生産地で逸材を探す網の目が以前よりもはるかに細かくなり、見込みのありそうな馬は高額賞金の中央の関係者が放っておかない。隠れた大物が地方に入厩(きゅう)する可能性は薄れており、賞金復元や調教施設に大きな投資をしなければ、現状を動かすのは難しい。第2の施設問題も待ったなしだ。すぐに手をつけるべき老朽施設も多く、特に走路は時間をかけて根本的に改善しないと、人馬の安全や調教の効率に影響が出る。また、リストラの過程で厩舎従業員の待遇は底のレベルまで落ちており、各競馬場では人手不足が深刻化。経営改善を受け、入厩を希望する馬主は増えたが、需要に応えられないのだ。各施行者がこうした難題にいかに優先順位をつけて、投資を進めていくかが問われている。

(野元賢一)

レーシングワールドをMyニュースでまとめ読み
フォローする

  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 3
保存
共有
印刷
その他

競馬のコラム

電子版トップスポーツトップ

レーシングワールド 一覧

フォローする
4億7千万円の最高値が付いた「タイタンクイーンの2019」と購入者の近藤利一氏=共同共同

 世界に類を見ない「お化けセール」が、またも記録を塗り替えた。7月8、9の両日、北海道苫小牧市で行われた競走馬のせり市場「セレクトセール」(日本競走馬協会主催)。売却総額、売却率などほぼ全ての指標で過 …続き (7/13)

禁止薬物を含む飼料添加物を摂取した可能性がある馬の「競走除外」について、取材に応じるJRAの庄村之伸裁決委員(中央)=共同共同

 中央競馬の厩舎で流通していた飼料添加物「グリーンカル」から、禁止薬物のテオブロミンが検出され、6月15、16両日に出走を予定していた156頭が一括で競走除外となった問題。日本中央競馬会(JRA)は1 …続き (6/29)

キズナは現役時代日本ダービーで優勝するなど、13年のクラシック戦線を盛り上げた(13年5月、東京競馬場)=共同共同

 東京、阪神両競馬で6月から2歳戦が始まった。ターフにさっそく姿を現した2019年の2歳世代には、新種牡馬による初年度産駒も含まれる。なかでも注目の種牡馬は13年の日本ダービー(G1)を勝ったキズナ( …続き (6/15)

ハイライト・スポーツ

[PR]

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。