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引退後初のアイスショー 浅田真央さんプロデビュー

浅田真央が7月29日、プロスケーターとしてデビューした。舞台は今年で11回目を迎えた「The Ice」。浅田をたたえる内容となった今回は、近年まれに見る素晴らしいアイスショーとなった。

現役時代の浅田はショーにたくさん出るタイプではなかった。だが唯一、毎年必ず出ていたのが、自らホステス役を務める「The Ice」。キャストも毎年、現役トップ選手が多い。今年は海外のキャストが5人(組)だけ、ほかのショーと比べてもやや地味だったが、完成度の高さは驚くほどだった。

テーマが明確、成功のポイント

アイスショーで現役引退後の初滑りを披露した浅田さん=共同

成功のポイントはテーマが明確だったからだ。アイスショーは、国内外のトップスケーターを集め、それぞれがエキシビションナンバーを滑るものが多い。エキシビションは一つのショーのためにつくるわけではないので、ショー全体に統一感が生まれにくく、間延びして観客が飽きる時間がある。それを回避する意味もあるのか、有名歌手を招くショーもあるが、「The Ice」は毎年、「真央」を主役にしつつも、テーマを決め、衣装や舞台装置に凝ってきた。今年は引退後初のショーであり、「真央」がテーマ。スタッフから打診を受けた浅田は「昨季のプログラムである『リチュアルダンス』をやりたいとだけ言った。(現役)最後といってから、ファンの方に見てもらっていないから」。折り目を大切にし、フワフワしていながら周りに気を使う浅田らしい。

スケーター以外のアーティストをあまり招かない「The Ice」だが、今回は氷上でアクロバットを披露する黒竜江省雑技団を中国から、昨季ショートプログラム(SP)版「リチュアルダンス」の音源となったピアニスト、鈴木羊子をスペインから招いた。生演奏に合わせて、浅田がまず滑った。それぞれ出演者のソロナンバーもあったが、見どころは浅田がショーや試合で滑った曲を出演者がそれぞれ滑った場面だろう。

かつて同じ曲でプログラムを滑ったことがある人たちが登場した。織田信成が「スマイル」、宇野昌磨は昨季ショートプログラム(SP)でもある「ラベンダーの咲く庭で」、チンパン、ジャントン組(中国)は「愛の夢」。さらに小塚崇彦は「人それぞれ得意な方向の動きがあるので、他人のステップを滑るのは大変」(浅田)なのに、浅田の2010年バンクーバー五輪のフリープログラム、ラフマニノフの「鐘」のステップを浅田の振り付け通りに滑る芸当を見せた。14年世界選手権2位のケイトリン・ウィーバー、アンドリュー・ポジェ組(カナダ)は、このショーのためだけに振り付けられた「Sing Sing Sing」をアイスダンサーだからこそできる演技で盛り上げた。

記憶に新しい浅田の14年ソチ五輪フリープログラムであるラフマニノフ「ピアノ協奏曲2番」は、同曲を06年トリノ五輪のフリープログラムで滑った高橋大輔がトリノ五輪での衣装を着て滑った。当時19歳で、高橋のプログラムの代表作にあげる人は少ないが、ニコライ・モロゾフが絶頂期に振り付けたもので、ステップに見応えがある。「14歳のとき、これを見て、すごく覚えていた。自分が男子だったら使わなかったけれど、女の子だからいいかなって。今日、大ちゃんのプログラムを見られてよかった」と浅田も話した。

高橋さん(右)と演技を披露する浅田さん=共同

主役動き、出演者のノリもよく

浅田だからこそ、できたショーだろう。多様なジャンルの曲を滑ってきたからこそ、メドレーにしてもショーとして成立する。その人徳で多くのスケーターがショーの趣旨を理解し、参加した。そして本人はほぼ出ずっぱり。オープニングに始まり、前半に村上佳菜子とデュエットをし、昨季フリー版「リチュアルダンス」を披露、後半にはエキシビションナンバーを2曲滑り、フィナーレで「蝶々夫人」をジェフリー・バトルとデュエット、グランドフィナーレでは「メアリー・ポピンズ」を全員で滑った。

改めて責任感の強い人だと思った。選手時代から、浅田はショーだからといってはしゃいで目立とうとすることもなければ、試合よりパフォーマンスが落ちることもなかった。昨年12月の全日本選手権から3カ月以上、「スケート人生で最も滑らない時間が長く大変」と振り返りながらも、現役時代と遜色ないほどまで戻した。あれだけ主役が動けば、出演者全員のノリもよくなる。

ショーの初日はどのスケーターも動きが硬いことが多いが、転倒した浅田は言い訳をせず、「プロとしてこれからやるなら、失敗は絶対に許されない。申し訳ない」。まるで試合後のように話した。今後については「The Ice」の後に決めるそうだが、何となくこれが最後の気がした。スケートに対して真摯な浅田は、ショーでも試合に劣らぬほどの準備をする。中途半端な気持ちや状態で演技を見せられないと思っているだろうから、軽々には言えないが、ぜひプロスケーターは続けてほしい。宇野が「やっぱりすごいなと思った。表現やつなぎの所作がほかより圧倒的にきれい」と話したように、浅田こそ、ジャンプだけではない、フィギュアスケートそのものの美しさを伝えられる人だから。=敬称略

(原真子)

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