2018年9月21日(金)

山岳遭難、ポケット無線でヘリが捜索 その実力は?

2017/8/8 6:30
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 登山ブームを背景に増加傾向にある山岳遭難。警察庁によると、2016年に全国で起きた山岳遭難は2495件、遭難者は2929人に上り、過去最高だった15年に次いで2番目の多さとなった。そんななか、独自技術を生かした無線機器と遭難時のヘリコプター派遣をセットにした登山者向けサービスに注目が集まっている。7月下旬に岐阜県の山域で行われた実証実験に密着した。

■子機の電波をキャッチせよ

 「ココヘリ」はパナソニック出身者らによるベンチャー企業、オーセンティックジャパン(福岡市)が提供する、山岳遭難に特化した会員制のヘリコプター捜索サービスだ。

 会員には同社開発の無線機器「ヒトココ」の子機が貸与される。ヒトココは、親機が子機の発する電波をキャッチして、離れた場所にある子機の位置を探し出すという無線機器。子機の重さは20グラムでお守りサイズ。1回の充電で3カ月もつ。入れづらいスイッチも、行動中誤って切れないための設計だ。電波は平均約3キロ、見通しがよければ最大5キロまで届くという。子機を携行した会員が遭難した場合、提携する民間ヘリ運航会社が捜索ヘリを派遣。子機の発する電波を親機でたどりながら遭難者の居場所を特定する。「電波を補足できれば、子機の場所を必ず見つける」と久我一総社長。遭難者発見後に救助活動は行わず、警察や消防などに位置情報を伝える。実証実験では、ヘリ離陸から10分、子機までおよそ1.5キロの地点で電波を補足した。その後10分で遭難者を発見。親機の操作も簡単で誘導もわかりやすい。あまりに短時間で見つかることに、正直驚いた。

 年会費は3650円で、1度の遭難につき3回まで無料で捜索ヘリを派遣する。子機を携帯するだけの手軽さに加え、1日あたり10円という安さに注目が集まり、サービス開始から1年で会員は約6000人、17年度中には1万7000人以上を見込む。会員から集めた年会費の一部は提携先のヘリ会社に事前に支払い、人命救助のための捜索事業を安定収入のひとつとしてもらう。その代わり「比較的低料金でヘリを飛ばしてくれる」(久我社長)。サービスの仕組みとしては保険に近く、加入者が増えれば負担が軽くなる。現在5社のヘリ会社と提携し、全国8カ所のヘリポートから32機を飛ばす。沖縄県や島しょ部を除いた日本全国の山域をカバーし、離陸から遭難山域まで1~2時間で到着する。今後も順次増やしてバックアップ体制を整える計画だ。

■無線機器は警察・消防なども導入

 無線機器としてのヒトココも評価が高く、すでに各地の警察が導入している。東京消防庁のハイパーレスキューでは隊員に子機を配備し、二次遭難防止に役立てる。体験型の環境教育施設「トヨタ白川郷自然学校」(岐阜県白川村)では、ガイドツアー参加者にヒトココの子機を、ガイド役の職員に親機を持たせている。山田俊行学校長は「参加者の行動把握がしやすくなった。万が一のときは空からも探してもらえるので、安心感が違う」と語る。

■山での「行方不明」をなくすために

 山で遭難したとき、まず捜索に当たるのは警察や消防だ。しかし、機体調整などで民間ヘリ会社や地元の山岳会などが救助に当たることもあり、場合によっては遭難者本人が多額の費用を負担することにもなる。特に民間ヘリは1分1万円といわれ非常に高額だ。捜索が長期に及べば、死亡認定まで最長7年、保険や税金の支払いで家族にもさらに重い負担がかかる。「早期に居場所を特定することが何よりも重要」と久我社長。山岳保険やオンラインの登山届との連携も進め、ココヘリと組み合わせての利用を訴えている。

 現在は高度や尾根の形状により電波の届く範囲にばらつきもある。「今後も提携先とともに様々な山域や気象条件の下で訓練を重ね、精度の高い捜索活動につなげる」(久我社長)。独自の技術とサービスで安全登山の新常識となるか。今後の広がりに注目だ。

(映像報道部 湯沢華織)

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