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イチローの打撃の神髄、ゼロコンマ何秒の世界(後編)
スポーツライター 丹羽政善

(1/3ページ)
2017/8/7 6:30
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 その日も米テキサスは暑く、レンジャーズは外での打撃練習を中止した。一方で、クラブハウスなど室内は極端なまでに冷房を効かせる。時々、腕をさすりながらマーリンズのクラブハウスにいると、1本だけバットを手にしたイチローが室内ケージから戻ってきた。結果的には、レンジャーズでの最後の登板となったダルビッシュ有との対決を翌日に控えた7月25日のことである。

 「聞きたいことがあるんですが」と声をかけると、イチローはバッティンググローブを外しながらいう。

 「どうぞ、僕が答えられることでしたら」

イチローは0.015秒の大きさにうなった=AP

イチローは0.015秒の大きさにうなった=AP

 その水が冷たいのか、温かいのか、触った本人以外には答えようがない。聞こうとしていることもおそらく、イチローにしか答えられない。

「そりゃ、大きいよ」

 あるデータを伝えると、即答だった。

 「そりゃ、大きいよ」

 5月から不定期で追いかけてきたイチローのスイングスピードの話。「イチローの打撃の神髄、ゼロコンマ何秒の世界(前編)」では、イチローのスイングスピードのデータをたどりながら、プロ野球中日時代の1994年から3年連続でセ・リーグの首位打者を獲得したアストロズのアロンゾ・パウエル打撃コーチによるこんな仮説を紹介した。

 「スイングスピードが速ければ速いほど、自分の打ちたいポイントに対して、始動を遅らせることができる。その分、長くボールを見ることができ、打者はそれだけ、多くの情報を得られる」

 では実際、スイングスピードの違いによってどれだけ長くボールを見られるのか。

 「イチローの打撃の神髄、ゼロコンマ何秒の世界(中編)」では、国立スポーツ科学センターの森下義隆さんに協力を依頼し、例えばスイングスピードが時速に換算して10キロ違うとどうなるかを算出してもらった。森下さんはスポーツバイオメカニクスが専門で、同センターで野球打者のスイング技術の評価をテーマに研究している。

 条件などは中編を参照してほしいが、例えばインパクトの瞬間の時速が100キロと90キロのスイングスピードを比較した場合、同じポイントでボールを打つとすれば、「100キロの方が、約20センチ分遅くスイングを開始することが可能になります」とのことだった。その20センチを時間に置き換えると0.015秒。150キロの球で考えれば、0.015秒の間にボールが約60センチ進む計算だという。

 ならばそれぞれの数値が、イチローにとってはどんな意味を持つのか。それが今回のテーマだが、打撃練習から戻ったばかりのイチローの顔はほんのりと上気し、まだ、スイッチがオンのまま。それがゆっくりと静まっていく中で森下さんのデータを伝えると、冒頭でも紹介したように「そりゃ、大きいよ」とイチローは話し、続けた。

 「0.015秒と聞いただけで、そりゃ、デカイだろって(笑)。全然、違う。でも、わざと遅くしているケースだってある。単純な比較はできないから難しいところだけれど、本当に振った結果としてその差が出ているなら、それはデカイよね」

 言い換えればそれは、0.015秒に詰まった情報量の大きさということか。

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