パクチー商品大増殖 実は和食、おにぎりも相性よし

パクチーが大ヒットしている。もともと「一部の人だけが強烈に好き」な味だったが、潜在的に持っていた薬味としての万能性から、あらゆるジャンルの食品と融合し、話題が一気に拡散。新規の「パクチスト」が各所で急増している。
2017年5月31日~6月4日に東京都新宿区で開催された「パクチーフェス」(東京クラフトビールマニア主催)には何と約4万人が集結。また、パクチーをふんだんに使った異色のインスタントラーメンは、14年6月の発売から約3年で累計350万食超を売り上げ、今や定番化している。

ブームの火付け役は飲食店だ。タイ料理店でパクチーを追加する「追いパク」が話題を呼び、パクチー料理専門店も続々と開業。これでもかと盛った鍋やパク天(パクチーの天ぷら)など、ファン垂ぜんの料理も誕生した。専門店の先駆けである「パクチーハウス東京」の佐谷恭氏は、「最初は怖いもの見たさで食べていても、次第においしさが認識された。それほど好きでなかった人もハマり、リピーターになっている」と言う。

この流れを急加速させたのは、SNSでの拡散だ。パクチー山盛りといった度肝を抜く見た目の料理が写真栄えしたのに加え、強烈なアンチがいるなかで、「パクチー好き」をカミングアウトすることが、共感や反論を呼ぶ格好のネタに。芸能人の投稿も相次ぎ、5月に歌手の大原櫻子が「きざみパクチー」(エスビー食品)を持った写真を投稿した直後の週には、同商品の売り上げが前の週に比べて30%近く跳ね上がった。

あらゆるものと融合を始める
この盛り上がりを受け、メーカー各社も加工食品の開発を加速。前出のラーメンの他、ドレッシングやポテトチップスなど、パクチーがあらゆるものと融合した。フェアを行うなど力を入れるナチュラルローソンでは、パクチーおにぎりまでもが登場。選択肢が広がり、パクチストが以前にも増して大量に消費するようになった。2月に発売したチューブタイプのきざみパクチーが、当初の販売計画の1.5倍を売るヒットとなったエスビー食品の大町政幸氏は、「実は、パクチーは和食とも相性が良く、薬味としては万能」と言う。その意外な使い勝手の良さも、ブレークした背景にある。

加えて、国産パクチーが増産され、一般化したこともブームを後押ししている。国産は栽培法や生育条件の違いによって、東南アジア産と比べて味や香りがマイルド。実際に食べてみると意外にいけるという人も多い。生産量は急増しており、大町氏によれば「これまで生鮮ハーブのなかで最も生産量の多かったバジルを抜く勢い」というほどだ。「需要に供給が追い付かず、パクチーを使った新商品の発売も抑えるほどの状況」(ナチュラルローソンの谷口佳明氏)だという。パクチーを食わず嫌いだった層すら取り込み、ブームはさらに勢いを増している。

(日経トレンディ編集部)
[日経トレンディ2017年8月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界