60年代の働くリケジョ レトロ新鮮な仕事服に注目
宮田理江のおしゃれレッスン

1960年代を思わせるレトロファッションが復活しています。当時のNASA(米航空宇宙局)を舞台にした映画『ドリーム』には、お手本にしたくなるスタイリングがたくさん登場します。
米国の宇宙開発を支えた、3人の女性数学者がオフィスで見せる着こなしは、男性中心だった宇宙開発の現場で差別と戦った「リケジョ(理系女性)」たちの芯の強さも映し出しています。フェミニンさや鮮やかな色、ディテールなどに光が当たるなか、古くて新しいお仕事ルックとして注目したい装いです。

鮮やかな色使いは静かな自己主張
主人公たちはNASAで主に計算を担当するアフリカ系女性。まだトイレも通勤バスも白人用と非白人用に分けられていた時代に、数学の実力で仕事と地位を勝ち取っていきます。カッチリしたオフィスルックが求められていた当時らしく、スカートスーツやワンピースが主流の装い。上品な丸襟のジャケットは今、レトロコーディネートとして生かしたくなります。
女性の社会進出が進んだ時期の勢いを感じさせるイエローやグリーンのはっきりした色は静かな主張を帯びています。今季の秋冬もポジティブな色使いが盛り上がる気配で、夏のうちから試しておけば、鮮やかな色の服を自分らしく操りやすくなるでしょう。

同じ色・生地のトップス、カーディガン、スカートなどで統一感を出す「アンサンブル」も、懐かしさを感じさせる風情が再評価されてカムバックを果たしました。丸首のニットトップスを組み込むと、ソフトな人柄を演出できます。ワントーンでそろえられているから、いくらか目立つ色でも、うるさく見えにくいのもアンサンブルのよさ。お仕事着に、いつも地味めの色を選びがちな人は参考になりそうです。
懐かしさ感じるデザインやアクセ使い
襟や胸元につけるブローチは大人っぽさと気品をまとわせるアクセサリーとして見直されています。着慣れた仕事用スーツも、大ぶりのブローチを添えるだけで印象が変わって見えます。襟に刻みがなく、やわらかい曲線を描くショールカラーは落ち着いた雰囲気を漂わせます。

英国の伝統的なチェック(格子)柄は、ジャケット付きのアンサンブルでまとうと、さらに古風なムードが濃くなります。チェック柄には様々な種類がありますが、今度の秋冬にはクラシックな表情のタイプが多くの有力ブランドから提案されています。
ベルトで腰の位置をしっかり示す「ウエストマーク」もノスタルジックな小技。細いベルトはシャープさを印象づけやすく、太めのベルトはグラマラスな着姿に仕上げやすくなります。
スーツほどにはかしこまって見えない上下そろいのウエアは「セットアップ」と呼ばれて、近年のヒット商品になっています。襟のないラウンドネックのジャケットを選べば、さらに穏やかなたたずまいに整えられます。

3人のリケジョは差別的な仕打ちにもへこたれず、才能と行動力で自分たちを成功に導いていきます。しかも、3人は全員が実在の人物。その1人、キャサリン・ジョンソンさんは長年のNASAでの功績をたたえられて2015年、オバマ米大統領(当時)から大統領自由勲章を贈られています。
3人の装いがすてきに見えるのも、彼女たちが自信を持って堂々と着こなしているから。仕事にもおしゃれにも手を抜かないリケジョたちの姿からは、現代の働く女性も学ぶところが多そうです。
http://www.foxmovies-jp.com/dreammovie/
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報、リアルトレンドを落とし込んだ着こなし解説などを発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした消費者目線での解説が好評。自らのTV通版ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。著書に「おしゃれの近道」「もっとおしゃれの近道」(学研パブリッシング)がある。公式サイト http://riemiyata.com/
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