パナソニック、反転攻勢へ手応え 純利益67%増
パナソニックの業績が回復基調に入った。7月31日に発表した2017年4~6月期の連結決算(国際会計基準)では純利益が前年同期比67%増の487億円となった。4つの社内カンパニーのうち3つで増収増益を確保し、特に注力してきた電気自動車(EV)向け電池など車載機器が急拡大した。同社は来年、創業100周年を迎える。津賀一宏社長にとって自ら仕掛けてきた成長戦略で着実な成果を出せるかが焦点になっている。

パナソニックの梅田博和取締役兼最高財務責任者(CFO)は31日に都内で開いた記者記者会見において「(今期は)増収増益に転じる年と位置づけており、順調なスタートが切れた」と強調した。
実際、17年4~6月期の連結売上高は前年同期比5%増の1兆8652億円、営業利益は同17%増の839億円といずれも好調だった。
1年前は予想外の不振だった。16年4~6月期は円高や熊本地震、中国での景気減速に見舞われて純利益は63%も減少した。そのため、その後に業績見通しの下方修正に追い込まれた。
津賀社長は18年3月期について「成長への仕込みが大きく実を結ぶ」としており、17年4~6月期から結果を出すことが求められていた。
事業別の売上高では車載関連が成長のけん引役となった。7月に出資比率を引き上げて子会社化したスペインの自動車ミラー大手「フィコサ・インターナショナル」が寄与している。それだけでなくパナソニックが強みとするカメラやセンサーの出荷も増えたほか、車向けAV(音響・映像)機器も好調だった。
EVに搭載するリチウムイオン電池を含むエナジー事業も好調だ。18年3月期は前期比1000億円増の3千億円を投資する予定で、米テスラと共同運営するネバダ州の「ギガファクトリー」や中国・大連の新工場の建設などに充てる。
テスラ向けでは6月から新型車「モデル3」向けにも出荷が始まった。「来年に向けて生産が増えてくる」(梅田取締役)という。
両事業を手がける社内カンパニー、オートモーティブ&インダストリアルシステムズ(AIS)社の売上高は13%増の6564億円だった。車載用のコンデンサーや産業用モーターなど電子部品関連も伸びたため、営業利益も22%伸びて177億円となった。
白物家電などが主力のアプライアンス(AP)社も好調を維持し、売上高と営業利益が4カンパニーで最大だった。主力のエアコンや冷蔵庫などは日本とアジアで販売を拡大した。デジタル一眼カメラの高機能機種も引き合いが強まっており、「一部で品切れになっている」(梅田取締役)。米国における業務用冷蔵庫の減少分を補った。

住宅向けを手がけるエコソリューションズ(ES)社は3%の増収を確保。地場の住宅メーカー向けにシステムキッチンなど水回り製品を開拓する戦略が奏功した。
4カンパニーで唯一減益だったのが企業向けシステムを手がけるコネクティッドソリューションズ(CNS)社だ。日本マイクロソフト会長などを務めた樋口泰行氏が同カンパニーのトップに就任し、成長戦略を進めている。
17年4~6月期は同カンパニーでも営業利益率が非常に高く稼ぎ頭の航空機向けシステムが低迷した。航空機製造の落ち込みが響いたためだ。
それでも、パナソニックが得意とする小売業の店舗向け決済システムなどは伸びており、海外を含めて新規顧客の開拓などを急ぐ。
パナソニックは創業100周年の19年3月期に4500億円の連結営業利益を目指している。かつて掲げた連結売上高10兆円の目標は撤回しているが、営業利益は必達目標といえる。
もちろん、先行きに課題もある。投資負担の重い電池事業は費用が先行しており「17年度後半から18年度に収益が本格化してくる」(梅田取締役)。激戦のEV向け電池事業で勝ち抜くには中長期的に大型投資を続ける必要があり、リスクも背負うことになる。
また、テレビ向けを撤退し、医療向けなど産業用に特化している液晶パネルは利益を収益改善が進んだものの、依然赤字のままだ。国内市場の縮小という逆風にさらされている太陽光発電関連も縮小が続く。半導体を含めて業績不振が続く事業における構造改革もまだ必要になりそうだ。
(大阪経済部 上田志晃)
[日経産業新聞 8月1日付]