日本サッカー世界への挑戦

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レフェリング、急激な変化の背景にあるもの
サッカージャーナリスト 大住良之

(2/3ページ)
2017/7/28 6:30
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「人での判定」に拘泥していたブラッターだったが、14年ワールドカップでのGLTの成功を見て「不可欠なシステムとなった」と称賛した。

その一方で、「やはりサッカーの判定は人間の手で」と考える人もいた。その筆頭は、当時欧州サッカー連盟(UEFA)会長だったミシェル・プラティニ氏だ。FIFAのGLT案に対して彼が出したのは「追加副審(AAR)」だった。主としてオフサイドを監視する副審に対し、ゴール近くに位置してペナルティーエリア内の出来事やボールがゴールラインを完全に割ったかどうかを監視する役割の副審を2人追加するという案だった。

この案も、GLTと同様、12年7月5日にチューリヒ(スイス)で行われた国際サッカー評議会(IFAB)の会議で正式に認められ、以後UEFAはチャンピオンズリーグなどの公式大会でAARを使うようになった。

「人間の目」には限界あり

日本でも15年のJリーグで連続して誤審があった後、村井満Jリーグチェアマンが日本サッカー協会にAARの導入を要請、翌年のルヴァンカップ決勝トーナメントなどで導入され、今年も続けられている。主審と挟み込むようにペナルティーエリア内のプレーを監視するAARの存在で、選手たちはより気をつけてプレーするようになったという。だがゴールかどうかの正確な判定はときとして難しい。選手が重なってボールが見えないこともある。そして何より「人間の目」には限界がある。

一方、GLTは正確無比だが、判定できるのはボールがゴールラインを越えたかどうかだけ。86年ワールドカップのマラドーナのように手で入れたものも「ゴール」と判定されてしまうだろう。しかもこのシステムを動かすには非常に多額の費用を必要とする。どちらのシステムも課題を抱えていた。

そうしたなか、ブラッター、プラティニ両氏に共通していたのは、「ビデオ判定だけはしない」ということだった。GLTではボールがゴールラインを越えた瞬間に主審の腕時計に「GOAL」の文字が浮かぶ。AARも、たとえばペナルティーエリア内で反則があったのに主審が笛を吹かなかった場合、2秒待って「PK! PK! PK!」と知らせることになっている。ほぼ遅滞なく情報を伝え、観客からはスムーズに判定が行われているようにみえる。しかし他競技のようにビデオ判定を採用すると、そのたびに試合が止まってしまうのだ。

思いがけないものが一挙に状況を動かした。「政変」だ。15年のFIFAのスキャンダルによってブラッター、プラティニ両氏が失脚、UEFAの事務総長だったインファンティノ氏がFIFA会長に就任したことで「タガ」が外れたのだ。

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