勝利のメンタリティー(山本昌邦)

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W杯連覇へ進化のアクセル踏み続けるドイツ

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2017/7/26 6:30
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6大陸の王者にホスト国のロシアなど8チームが参加したサッカーのコンフェデレーションズカップはご存じのとおり、ドイツが優勝した。3年前のワールドカップ(W杯)ブラジル大会の覇者は随所に「さすがは世界チャンピオン」とうならせてくれた。来年夏には同じロシアでW杯が開催される。W杯本番のプレ大会として行われたコンフェデ杯をリハーサルの視点で振り返ってみた。

コンフェデ杯ロシア大会で試されたVARに対し、サッカーのプレーが変わる印象を持った

コンフェデ杯ロシア大会で試されたVARに対し、サッカーのプレーが変わる印象を持った

来年の本大会を滞りなく運営できるように今大会はいろいろなものが試された。これまで3人だった選手の交代枠を延長に入るとさらに1人、代えられるようにしたのもその一つ。

審判の人生設計変える可能性も

また、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)もトライされた。ピッチ上の主審1人、副審2人に加えて、モニター前のVARも判定に関与し、主審の要請に応じて助言を与えるシステム。「スピーディーな試合進行を妨げる」といった批判もあるが、私は選手に対する抑止力の大きさから「かなりサッカーのプレーを変えるな」という印象を受けた。

例えば、現状ではFKやCKの際に、守る側も攻める側も相手の体や腕をつかんで動きを抑制するのは「プロフェッショナルファウル」として看過されがちだが、これも悪さの度が過ぎるとVARでPKやレッドカードの確認の対象になるだろう。となると、守る側は対応の仕方を変えざるをえず、ゴール前の競り合いがよりクリーンになれば、得点チャンスの増加につながるだろう。ファウルはファウルとして「プロフェッショナルファウル」という言葉自体、死語になる気もする。

偽物のゴールがなくなるのもいい。早い話が、新聞に『疑惑のゴール』『誤審で勝利を盗まれた』といった、おどろおどろしい見出しが立つことは減るだろう。

問題点はある。主審とVARの連携にまだまだ難がある。試合会場ではVARによる検証の間、電光掲示板に「VIDEO REFEREE」の文字が映し出され、お客さんは回答待ちの状態に置かれる。その間、感情はどうしても宙をさまよう。サッカーというゲームの最大の魅力はゴールが決まったときの感情の爆発にあるが、VARの対象になると、突き上げた拳も隣人との抱擁も中途半端になってしまう。

テレビのアナウンサーが「ゴーーーール」と絶叫している傍らで「うーん、これはビデオレフェリーの出番かも」とつぶやく私の立場も、喜びに水を差すようで、結構きついものがあった。

ソチのスタジアムには、葛西紀明ら14年ソチ冬季五輪メダリストの名前が刻まれている

ソチのスタジアムには、葛西紀明ら14年ソチ冬季五輪メダリストの名前が刻まれている

判定の仕方も変わるかもしれない。主審も副審も迷ったら、とりあえずプレー続行を選ぶことが増える気がする。例えば、得点に直結する場面でオフサイドが疑われたとする。副審としては、旗を上げてプレーを止めて、それが実はオフサイドではなかった、というそしりを受けるよりも、とりあえずプレーを続けさせてゴールが生まれてからVARの対象になって認否を決めてもらった方が、はるかに気は楽。となると、疑わしきは流す、という方向にどんどん判定は向かうのかもしれない。それにより、シューターと1対1になる場面が増えるGKにケガが増える危険性もある。

VARの導入は、あるいは審判の人生設計も変えるかもしれない。審判に求められるフィジカル的要素はかなり高く、プロ審判も走れなくなると失職の危機にさらされる。VARはそんなプロ審判の「次のステージ」になりうる。モニターの前でチェックする、まさにデスクワークだけに、要求されるのは体力的なものより、ルールに基づいて事象を解釈する目。その眼力は、豊富なキャリアを通じて磨き込んできた審判に勝るものはいないだろう。

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