2019年7月19日(金)

東芝テック、世界初の「消す印刷」と「残す印刷」

2017/7/25 6:30
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東芝テックは今月、複合機「Loops(ループス)」シリーズの新製品を発売した。通常の白黒印刷と、後で消すことができる特殊印刷の両機能を内蔵した複合機は世界初という。紙の電子化が進む一方で、日本のオフィスや店舗などでは、いまだに紙の印刷が主流になっている。利用シーンに応じて「消す印刷」と「残す印刷」の使い分けを提案していく。

ループスはもともと、「消す印刷」機能のみを搭載した複合機だった。発売したのは2013年。文具メーカーのパイロットコーポレーションと共同で、加熱すると消える専用トナーを開発。書いた文字を摩擦熱で消すパイロットのボールペン「フリクションボール」のように、印刷した文字に熱を加えインクを溶かし消す仕組みだ。文字は青色で印刷する。

わずか数秒で文字を消し、すぐに紙を再利用できる複合機は世界初だった。「環境意識の高い企業からの問い合わせが多くあった」(湊敏彦マーケティング部長)が、課題があった。ループスは消す印刷機能に特化した複合機で、青色インクでしか印刷ができなかったのだ。

「通常の白黒印刷機能もつけてほしい」という顧客の声を受け、14年末から「白黒印刷」と「青色印刷」の両機能を搭載した、ハイブリッド型複合機の開発を始めた。

開発は苦悩の連続だった。青と黒、トナーの成分はそれぞれ異なる。青色印刷と白黒印刷、両方の仕上がりを同じにすることは、「例えるなら、マグロと牛肉を同じ味にするくらい難しい」。技術統括部の武田和久氏は開発当時をこう振り返る。

複合機は感光ドラムと呼ばれるローラーにトナーを乗せ、紙に押し付けることで印刷する。その後、「定着器」によって、熱と圧力で紙にトナーを固定させるが、「この定着器の熱制御が開発の中で最も難しかった」(武田氏)と話す。

通常の白黒印刷の場合、160~180度の高温で定着させる。しかし、加熱すると消える青色インクの場合、100度以上の熱をかけると溶けてしまい印刷できない。そのため、「白黒印刷はできるが、青色印刷はできないという失敗が何度も続いた」(技術統括部の吉田稔氏)。

そこでまず、トナーの成分を見直し、白黒印刷を120度の低温でも定着できるようにした。さらに、定着器の熱制御機構を変え、青色印刷の時は100度に、白黒印刷のときは120度になるように設定。「冷却ファンなども使って緻密に温度を制御している」(武田氏)

実際に両方の印刷機能を使ってみた。液晶パネルの操作画面には「白黒」「ブルー」の2つがあり、どちらかを選択して印刷する。白黒を選ぶと見慣れた黒色で、ブルーを選ぶと濃い青色で印刷された紙が出てくる。青色で印刷された紙を再び複合機にセットし「消色」というボタンを押すと、わずか数秒で白色の紙になって出てくる。紙は最大5回再利用できる。

使い方は様々だ。社内で使用する紙や掲示物、受信FAXなど、残す必要がない文書は再利用できる青色印刷にする。重要な資料や、ペンで書き込みをする資料などは通常の黒色印刷にするといったシーンに合わせた使い分けを提案している。3月にドイツで開いた国際見本市に出展すると、環境意識の高い欧州企業中心に注目を浴びた。競合他社からもユニークさを評価する声が聞かれた。

ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)によると、16年の複写機・複合機の出荷台数は15年比1.9%減の479万台だ。新興国を中心にカラー印刷機が伸びる一方、先進国では成長が鈍化している。

ここ最近の複合機の新製品は、ソフトウエア面での機能進化が多かった。リコーや富士ゼロックスは、経費精算や名刺管理などの業務クラウドサービスと複合機を連携。名刺や領収書をスキャンしデータを取り込み、クラウドで管理するなど、ネット連携を強化する。

「ループス」はエコと使い勝手を両立した、ハード面での進化だ。セールスポイントがはっきりしている。すでに新機能の開発にも着手したという。複合機市場はプレーヤーも多く、競争環境は一層厳しくなると予想される。

(企業報道部 斉藤美保)

[日経産業新聞 2017年7月25日付]

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