陸上100 関学大・多田、スタート磨き世界で飛躍へ
活況を呈する陸上の男子短距離界にまた一人、有望な若手が現れた。関西学院大3年の多田修平。6月の日本選手権100メートルで2位に入り、8月の世界選手権(ロンドン)代表に決定した。初の大舞台での快走が期待される。
脚光を浴びたのが5月のセイコー・ゴールデングランプリ川崎。鋭い飛び出しで、9秒74の記録を持つジャスティン・ガトリン(米国)を驚かせた。6月の日本学生個人選手権は準決勝で追い風参考(4.5メートル)ながら9秒94をマーク。世間の耳目を集め、決勝は堂々の公認タイムの10秒08で優勝した。

6月24日の日本選手権決勝は10秒16でサニブラウン・ハキームに次ぐ2位。桐生祥秀が不振に陥り、山県亮太は右足首痛と実力者のつまずきに助けられた感はあるが、ケンブリッジ飛鳥を含むリオデジャネイロ五輪代表の3人に先着し、21歳の誕生日を飾った。
急成長の一因が、大阪陸上競技協会が今年行った米国遠征への参加。9秒72の記録を持つアサファ・パウエル(ジャマイカ)に「3週間ほぼくっついて」スタート技術などを学んだ。スターティングブロックを蹴ると体が浮くため「(地面と)平行に出る」ことを重視。それまでの跳躍系のトレーニングと相まって一気に記録が伸びた。
大阪桐蔭高出身。京都・洛南高から東洋大に進んだ桐生を筆頭に有力選手の多くは関東の大学に進むが「下宿すると妥協して外食になってしまう」と自宅から通える環境を選んだ。加えて「東高西低」の構図を「打ち砕きたいこともあって関西に残った」。
レースでは重圧を感じず、日本初の9秒台も「1番に出したい気持ちはそんなにない」。無欲の姿勢が存外、世界選手権での飛躍をもたらすかもしれない。
(合六謙二)