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日本ハム近藤無念、4割打者誕生はいつか…

スポーツライター 浜田昭八

打率3割をマークする好打者でも「10回打って7回は失敗している」と野球人は言う。それほど打撃は難しく、奥深いものであることを強調しているのだ。3割でも難しいのだから、4割となると陸上競技100メートル競走の10秒の壁のように、非常に高いハードルだと言えるだろう。

長い歴史がある大リーグでも、シーズン打率4割を記録したのは"球聖"タイ・カッブら数少ない。それも1800年代に記録されたものが多く、1941年にテッド・ウィリアムズが4割6厘を打ったのを最後に、4割打者は生まれていない。

張本ばりのスプレーヒッター

1936年秋季リーグから始まったわが日本プロ野球では、1リーグ時代、50年からのセ、パ両リーグ時代を通じて、だれもまだ4割を打っていない。しかし、今季序盤戦で「ひょっとして」と話題を集めた選手がいた。日本ハムの近藤健介だ。2012年に横浜高からドラフト4位で入団した6年目の23歳、右投げ左打ちの捕手登録の選手である。今季は外野や指名打者で3番や5番を任され、開幕から快調に打ちまくった。

173センチ、87キロと小柄だが、スイングスピ-ドが速く、それ相応にパワーもある。フェアグラウンドいっぱいに安打をまき散らす典型的な"スプレーヒッター"だ。とりわけ外角球をぎりぎりまで呼び込んで左方向へ飛ばす痛打は、チームの先輩で3000安打をマークした張本勲を思い出させるほどだ。

日本ハム・近藤は交流戦途中まで打率4割をキープした=共同

開幕後1か月は固め打ちが多く、4月25日には4割6分2厘にまで打率を上げた。5月に入って調子はやや下降したが、すぐ盛り返した。小柄な左打者といえば、ちょこんとミートして、快足を生かした内野安打が多いと思われがちだが、近藤は中軸を任せられる打者にふさわしく、しっかりとスイングしてきた。

しかし、残念なことに、セ・パ交流戦の最中、6月4日に右太もも裏を痛め、同11日に登録抹消となった。その後の検査の結果、腰部椎間板ヘルニアと診断され、長期欠場は免れないらしい。この時点で出場50試合、打率4割7厘。仮にこのままシーズンを終えても規定打席数不足で、4割打者とは認められない。夏場を乗り切るのは難しかっただろうが、あの4割打法がどこまで続くか見届けたかった。

もちろん、近藤には来季以降にチャレンジの機会が残されている。このほかにも近い将来、4割のハードルを越えるのではないかと期待される打者は何人かいる。

フルスイングが持ち味の柳田は三冠王が視野に入っている=共同

例えば、ソフトバンク・柳田悠岐。15年に打率3割、30ホーマー、30盗塁のトリプルスリーを達成した。すさまじいフルスイングが打率アップの邪魔にならないかと思われるが、あの打撃スタイルを続けてこそ好調を維持できる。4割、40本、40盗塁の"トリプルフォー"を、夢の記録として待望したい。

このほか、得意の内角打ちに磨きがかかってきた巨人・坂本勇人、広島を引っ張る丸佳浩、西武のヒットメーカー秋山翔吾らにも期待がかかる。高打率のカギを握るのは、どれだけ四球を選べるかだろう。打ちたいと思うのは打者の本能。そこで悪球に手を出し、フォームを崩して不振に陥った打者は多い。

オリックス・イチローの最高は3割8分7厘

近藤以前にも「ひょっとして」と期待された打者はいた。シーズン打率の最高記録は1986年、阪神・バースの3割8分9厘。2年連続三冠王になったときの2年目だった。話題が三冠に集中したため、打率4割が特にクローズアップされることはなかった。

大リーグ入りする前のオリックス・イチローは、94年から2000年まで7年連続で首位打者になった。そのいずれもが高打率だった。00年は3割8分7厘、94年は3割8分5厘だった。最も低い95年でも3割4分2厘をマークしている。打撃人として最も脂が乗っていた2000年代初頭に、日本球界でもう数年プレーしていたら、きっと一度は4割打者になったのではなかろうか。

これほどの高打率を残したイチローだから、首位打者争いに関する限り、競り合ったことがほとんどない。99年にイチローの3割4分3厘に対し、当時西武の松井稼頭央(現楽天)が3割3分をマークしたのが最も接近したケース。これと近鉄・クラークと1分4厘差だった97年以外は、いずれも2位以下の打者が追走をあきらめるほどの大差だった。

ペナントレースも終盤になると、個人タイトルの争いが優勝争いとは別に注目される。ここでいつも問題になるのは、敬遠や欠場などの作為的行動だ。4割打者誕生か、という歴史的な場面で、そのようなことが起こらないことを切に願う。

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