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「もはやオワコン?」東京は五輪の未来を示せるか

編集委員 北川和徳

今から15年後。2032年の夏季五輪はどこで開催されることになるのだろう。いや、それ以前にオリンピックはそれまで続いているのだろうか。

2大会同時決定、IOCに危機感

国際オリンピック委員会(IOC)は先日の臨時総会で、24年夏季五輪招致に立候補しているパリとロサンゼルスを24年と28年の両大会に振り分けて、同時に開催都市として決定する案を全会一致で承認した。IOCと両都市で合意することが前提となるが、24年は100年ぶりの五輪開催となるパリ、28年が44年ぶりのロスで落ち着くことになりそうだ。

IOC臨時総会後の記者会見を終え、手を取り合う(左から)ロサンゼルスのガーセッティ市長、バッハ会長、パリのイダルゴ市長=共同

膨れあがる開催経費を嫌って世界中の都市、市民に五輪を敬遠する風潮が広がっている。今の状況で有力都市のパリとロスをどちらも逃がしたくないという思惑は分かる。だが、本来なら21年に決定する28年の開催都市を立候補を募ってもいない段階で決めてしまう性急な提案があっさりと通ったのには驚いた。IOCの焦りと危機感がそれほど強いということか。

いうまでもなく、パリとロスの2大会同時決定は問題の先送りによる時間稼ぎにすぎない。五輪離れを食い止め、その魅力を取り戻す抜本的な対策を打ち出せない限り、数年後にはIOCとオリンピックにとってもっと深刻な事態が到来する。

この窮状を乗り切るには、まずは歴史を振り返り、五輪開催の目的を問い直すことから始めるべきなのだろう。IOCにとって五輪の各大会はオリンピズムを世界中に浸透させるための舞台である。オリンピズムとは「スポーツを通じて、体と心を鍛え、世界中の人々と交流し、差別のない平和な世界を実現する」という理念。だから、かつてのIOC委員はこの崇高な理念の実現のために自腹で活動した。そして五輪開催地に選ばれた都市はオリンピズムを実践する場を提供する栄誉を担う、という考え方が五輪運動の根底にある。

開催都市の負担、もはや限界

とはいえ、多額の財政負担と市民生活の犠牲を伴うイベントを、栄誉だからとありがたがって受け入れる都市などそうはない。大会が巨大化するにつれて開催都市の負担は大きくなり、さらに東西両陣営の対立の激化もあって、五輪は1980年代に存続の危機を迎えた。それを救ったのが84年ロサンゼルス大会を大成功に導いた商業主義だった。

1976年大会を開催したモントリオールは長年、その赤字に苦しんだ(メーン会場だった五輪スタジアム)=共同

五輪のイベントとしての商業的価値をフルに活用し、その価値を最大化することによって開催都市に財政負担以上の経済的な利益をもたらす。これで五輪は息を吹き返し、以後はひたすら商業的な価値を高める方向に突き進んだ。プロのスター選手を招き入れ、新たな人気スポーツを取り込み、世界で最も注目を集めるイベントであり続けるためにスケールアップを繰り返した。五輪招致を契機に都市の再開発を進める動きとも結びつき、10年ほど前までは、世界中の大都市が五輪を求めて招致レースに手を挙げた。

五輪離れが進む現状はそれが限界に達したことを示している。商業主義はスポーツ界全体に広がり、各競技の国際団体(IF)は世界最高の大会にふさわしい豪華で巨大な会場を開催都市に求める。テロへの対応はもちろん、サイバー空間を含めたセキュリティーを確保するためにも莫大な経費がかかる時代になった。スポンサー収入や放映権料でいくら資金を稼ぎ出しても足りない。一方で、五輪を引き受けるような先進国の主要都市の財政事情は切迫している。一過性のイベントよりも教育や福祉に税金を使うべきだというのは、きわめてまっとうな考え方である。

IOCはどんな改革案を打ち出すべきなのか。商業価値を追い求めて豪華になりすぎた大会のスリム化、簡素化にかじを切ることは間違いないと思う。

スリム化を求めながらIOCは種目拡大をあっさり決めた(記者会見するバッハ会長)=共同

東京大会の巨額の経費にあれほど厳しい目を向けていたIOCが、過去最多を大幅に上回る339種目の実施を決めたのにはあきれた。「アジェンダ2020」で開催都市による新競技の提案を認めても、結果がこれでは逆効果。競技会場に既存施設の活用を推奨しても、各IFが座席の増設や映像制作のための設備新設を求めるのだから経費膨張に歯止めはかからない。

しかも、開催都市にはコスト削減を求めながら、IOC関係者は大会期間中に高級ホテルに滞在し、すべてにVIP待遇を受ける。負担を強いられる開催都市の市民からそっぽを向かれても仕方ない。

とはいえ、実施競技を大幅に削減し、豪華な会場施設を求めるIFの横暴を抑え、IOC委員がVIP待遇を返上したところで、いまさら五輪が求心力を取り戻すとは思えない。縮小していくイベントが崇高な理念を訴えたところで、今の余裕のない世界では「オワコン(終わったコンテンツ)」となるだけだろう。

ポジティブな変化、東京から発信

再び五輪を都市にとって魅力あるイベントにするには、パラリンピックの力も借りて、五輪開催が都市や国、社会にポジティブな変化をもたらす力があることを実際に証明するしかないと思う。その舞台はもちろん3年後の東京となる。

東京五輪・パラリンピックに関してはネガティブなニュースばかり目立っている。だが、人口減、高齢化に直面するこの国を持続可能な方向に変えてくれそうな前向きな変化もたくさん生まれている。最も分かりやすいのが訪日外国人(インバウンド)の急増だ。東京大会開催が決まった13年に初めて1000万人を超えたのが、20年には4000万人という目標が掲げられている。もちろん20年大会だけがインバウンド増の理由ではないが、3年後の五輪・パラリンピックは世界から多様な人々を受け入れるように日本が変わっていく象徴ともいえる。

企業も五輪・パラリンピックの存在に背中を押されるように、新技術や新サービスの開発を進める。街のバリアフリー化や多言語への対応なども進み、東京はより安全で快適な都市へと変わろうとしている。一方で、そうした投資が20年以降の持続可能な日本の社会につながっていくかどうかはまだ分からない。

宴が終わった2年後、あるいは3年後。東京、そして日本は将来への展望をきちんと描けているだろうか。それは五輪の未来も左右することになるのだろう。

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