2019年9月18日(水)

体操「自動採点」 富士通、世界標準作りへの挑戦

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2017/8/9 6:30
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■FIGと進める「新たな基準作り」

ただし、これまで誰も手掛けたことがない体操競技の「採点のデジタル化」は、FIGにとっても富士通にとっても大きな挑戦であり、地道で骨の折れる作業だ。

例えば、あん馬で体の正面で馬体を支持する「正面支持」。教本には「正面支持の姿勢で、体があん馬に対して15度以内に収まっていること」と書いてあるが、その場合の「体」とはどこか、頭のてっぺんから足の先までなのか、首から腰にかけてのラインなのか、などが明確に書かれていない。

このようにアナログ的な曖昧さが残るものを「0」「1」のデジタルの世界に落とし込むには、「骨格Aと骨格Bの角度を15度以内」というように、いちいち厳格に規定しなくてはならない。

体操のルールは、FIGで上級審判を束ねているテクニカルコミッティーという委員会が決定する。富士通では3Dレーザーセンサーが検出する18の関節に番号を付けており、例えば「この技は1番と3番のラインの角度を見る」などと規定する作業を、テクニカルコミッティーにいちいち確認しながら進めている。まさにFIGと共同で「新たな基準作り」に取り組んでいるのだ。

体操教本には男子で807の技が書かれており、それを分解すると346の基本動作の組み合わせになるという。作業の効率化の観点から、この346の技の辞書化を進めている。

そのとき重要になるのが、「審判・選手との感覚のズレがないかを突き詰める作業だ」(佐々木氏)。3Dレーザーセンサーは関節の位置を検出するが、関節を結んだラインの角度は、例えば肘の内側か外側を見るかで、感覚が異なったりする。

また、センサーの設置位置によって選手の"見え方"が変わり、それが「精度」に影響を与える。設置場所や台数などノウハウの蓄積が必要になるという。

そこでセンサーが取得したデータをCG化したものを審判が見て、彼らの感覚とずれていないかを、いちいち確認する作業が重要になるという。「こうした検証を繰り返さないと使いものにならない」(佐々木氏)

骨格認識ソフトの画面例。3Dレーザーセンサーは18個の関節の位置を検出。そのデータからあん馬上で倒立する選手の骨格を認識し、膝や脊椎などの曲がり具合を割り出す(図:富士通)

骨格認識ソフトの画面例。3Dレーザーセンサーは18個の関節の位置を検出。そのデータからあん馬上で倒立する選手の骨格を認識し、膝や脊椎などの曲がり具合を割り出す(図:富士通)

■残された時間は2年

今、富士通では本社、研究所・関係会社を含め50人弱の体制で、デッドラインまで残された日数をにらみながら、作業を急ピッチで進めている。

開発に残された時間は少ない。ゴールは2020年東京五輪で男女10種目への適用だが、実際には五輪のテストイベントは2019年7月に始まり、前哨戦となる2019年10月のドイツ・シュツットガルトでの体操世界選手権に運用を間に合わせる必要がある。開発期間は実質、あと2年だ。

2017年5月時点では、「技の辞書」を作るためのデータ取得が6割程度終了している。採点の自動化は種目ごとに難易度が異なるが、あん馬は技術的にほぼできるようになってきたという。

実は、あん馬の演技は体操競技のさまざまな動きを含むため、これを判定できるようになれば他の種目に流用できる。ただし、あん馬には宙返り系の技はないので、あん馬をベースにそれ以外の種目の技を加えていくイメージだ。

あん馬に続いて、跳馬と、静止技でEスコアの減点がよりはっきり分かるつり輪の2つに取り組んでいる。跳馬は男女共通の競技で、ここで得たデータを女子の床などに活用していく。

■世界148カ国・地域に市場あり

50人弱の体制で開発を進めている採点支援システムだが、藤原氏はビジネス面について「市場性は大きい」と期待を寄せる。

マネタイズ領域は3つある。"本流"の採点支援のほかに、試合の中継用データの提供とトレーニングシステムの販売がある。中でも潜在市場が大きいのが、採点支援システムと同じ技術を使いながら選手用に見せ方を変えたトレーニングシステムである。

放送用の画面例。技の種類や難易度などを画面に表示。体操に詳しくない一般の視聴者にとって中継の魅力が大きく増す(図:富士通)

放送用の画面例。技の種類や難易度などを画面に表示。体操に詳しくない一般の視聴者にとって中継の魅力が大きく増す(図:富士通)

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