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やっと復帰も完調遠し 日本ハム・大谷の現在地

首位から23ゲーム差の5位と低迷する日本ハムに大谷翔平が戻ってきた。待ちに待った投打の柱の復活をチーム浮上への起爆剤としたいところだが、状態はまだまだ復調道半ばの様子。栗山英樹監督もはやる気持ちを抑えつつ、ぐっと絞った手綱のゆるめ時を探っているようだ。(記録は7月17日現在)

力感や安定感欠けたフォーム

12日、球宴前の最終戦となったオリックス戦。1軍では昨年10月22日の日本シリーズ第1戦以来、今季初先発した大谷がエンジン全開にはほど遠いのは明らかだった。先頭打者への初球から直球がひっかかってストライクが入らない。この回は併殺でしのいだが、二回に2安打1四球で満塁のピンチを招き、この日の29球目が押し出し四球となったところで降板。球速表示だけなら最速158キロと往時に近かったものの、バランスの崩れたフォームは力感、安定感ともに欠けた。「やろうとしたことは全然できなかった。出力を上げるという意味では問題なかったけれど、制御することができなかった」と振り返った。

実戦と同じ距離での投球練習を始めたのが約1カ月前。調整登板の色が濃かったとはいえ調整不足は否めず、「キャンプでも全く投げていないのだから」。昨季は"二刀流"でフル回転し、チームを日本一に導いた右腕も今季は苦難の連続だ。日本シリーズの走塁中に痛めた右足首の影響でワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を辞退。春季キャンプでも別メニュー調整を余儀なくされ、シーズンを打者限定として迎えた。

開幕から打率4割超と打ちまくったが、4月8日のオリックス戦で一塁へ走った際に今度は左太もも裏の肉離れを発症。右足首の悪化を防ぐため、ベースを右足で踏むことや、全力疾走が首脳陣との約束事で禁じられていた。その「経過観察」のような時期に「球を打って走る」という野球の最も原理的な動きの中で起きたけがは、突出した能力とともにその体が繊細であることを改めて周囲に認識させた。

千葉・鎌ケ谷の2軍施設での調整を経て、6月27日にはまず打者限定で1軍に復帰。それでも、栗山監督は投手としての本格復帰までには石橋をたたいて渡る構えを崩していない。試合前のフリー打撃の投手を務めた翌日の7月7日にも、「まだ10ぐらいやらなければいけないことがある。どうやってそれを潰していけるか」。12日の登板も「1度一軍で出力を上げてみるのが目標だった」とステップの一つと強調した。趨勢の決した試合の中継ぎでなく、先発での試運転も勇気がいる決断だっただろうが、それもこの存在の大きさゆえ。「時間をかけてやっていくこと。本当だったら一足飛びにいきたいけれど、丁寧に体のことを考えてやっていく」と、少なくとも球宴明け2カード目までは登板はさせない意向を示した。

投打に誤算続きのチーム状況

大谷も「全力でできる体に戻してゲームに入っていければ」とはやる気持ちを抑えるように話す。足元を見渡せば、高梨裕稔、加藤貴之と左右の先発の軸が2軍降格。開幕投手を務めた有原航平も防御率4.90と本来の安定感には遠く、先発陣は崩壊気味。クライマックスシリーズ(CS)進出圏内の3位にも14.5ゲーム離されたまま最終コーナーも見えてきて、見切り発車でもムチを入れたくなる状況だ。それでもぐっと手綱を絞るのは、球界の宝にもうけがはさせられないという事情が大前提にあるとはいえ、流れを一気に変えうるカードが中途半端にならぬよう、じっと「切りどき」を見極めているようにもみえる。

機を見るに敏な監督である。昨季は4連勝していた6月下旬の西武戦、4点差から2点を返してなおも好機で不動の4番中田に代打矢野を送ったことがある。その起用が伏線となって当時の相手エースだった岸を崩して大逆転。勢いに弾みがついて連勝はその後15に伸び、ソフトバンクに一時つけられた11.5ゲーム差を最終的にひっくり返した。来日初年度はさっぱりだったブランドン・レアードを起用し続け、大砲に育てたように我慢強さもある。最近、「大ばくちとめちゃくちゃは違う」と語ったこともあるが、昨年の日本シリーズでは先発の加藤を二回途中で早々に交代させる奇策で逆転勝ちした試合もあった。

もっとも、今季はその打つ手もうまくはまっていない。6月に復帰した「打者・大谷」の方も起爆剤としたい思惑はあっただろうが、本人も実戦不足を口にするように、ためをつくれずもう一伸びが足りない打球が多く、15打数4安打でわずか1打点。打率2割2分3厘と低迷し、「(中田)翔が翔らしくなってくれないと連勝はない」と4番から3番、さらに1試合限定で1番と打順を変えた中田翔も、打順変更がカンフル剤になるどころかさらに元気がなくなってしまった印象だ。4割を超える打率で序盤戦を引っ張った近藤健介が椎間板ヘルニアの手術で今季絶望となる痛手もあった。投打に誤算続きの中で「大谷カード」が昨季のチャンピオンチームに残された最後の切り札といっても過言ではないだろう。

日本で勇姿見納めの可能性も

とはいえ、大谷の扱いには今後も難しいかじ取りが迫られる。「大谷ありき」が先行しすぎて調整登板で再び試合を壊すことになれば士気に触るだろうし、打者としても全力疾走を解禁しないままの起用は過保護との声も上がりかねない。さらには完全復活がなった際に、2本の「刀」をどうやりくりするか。キャンプ前から綿密な計画を立てて仕上げた昨季と異なり、不測の事態に見舞われた。再び「指名打者解除」といった形でファンも望む「リアル二刀流」を披露する舞台ができるのか、今後も指揮官は複雑なパズルを解くように頭を巡らせることになるだろう。

大谷は昨年12月の契約更改で来オフ以降の米大リーグ挑戦の希望を球団に伝え、容認された。けがで出遅れた今季をもってその決断を下すのかどうかはシーズン終了を待たねばなるまいが、残り数カ月が日本での見納めになる可能性もある。史上まれに見る二刀流で注目を浴び続けたスター選手と、賛否両論を巻き起こしつつその起用を敢行してきた指揮官が、どういう形で師弟関係の「最終章」を締めくくるのか。ペナント争いと同様、今後も球界の話題の中心であることは間違いない。

(西堀卓司)

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