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「自分の人生かける」 スピードスケート高木美帆(下)

「心と体と技術の3つのレベルが上がり、かみ合ってきた」。昨季、個人種目でも世界のトップ選手の仲間入りを果たした高木美帆は実感を込める。15歳で五輪に出場した早熟なスケーターが、経験を積み上げ、花開こうとしている。

象徴の一つが肉体強化だ。2年前から師事するナショナルチームの中長距離ヘッドコーチ、ヨハン・デビットの下でハードトレーニングを重ね、自転車のロード練習やウエートなどの数値は軒並み上昇した。高木は「体はパワーも上がって強くなり、いい方向に進んでいる」とうなずく。

ハードトレーニングでの肉体強化が実を結び、重心の安定した滑りができるようになった

日体大時代から成長を見守る教授の青柳徹は「体幹に弱いところがあったが、重心が安定し、ぐっと絞れて今は体が全然違う。スケートの操作性が上がった」とみる。カーブで左のエッジ(刃)がより倒れるようになって安定感が出たほか、足の運びやピッチを上げる動作が向上したという。

高木自身も「(滑りの)1歩が軽いと言われる時期が長くて、(1歩で進む距離より)歩数で稼ぐタイプだった」と振り返ったうえで、「だいぶ氷をとらえている時間が長くなって、氷を押していけるようになったので(1歩で)進むようになった」と成長を語る。「チーターみたいな、しなやかさがある。躍動感という言葉がぴったりくる」(青柳)という滑りは、世界のトップと十分伍(ご)していけるようになった。

得意の1500メートルをはじめ、1000メートルに3000メートル、新種目のマススタートに団体追い抜き……。高木は各種目の相乗効果を狙って大会では複数のレースに出場、どの種目も五輪を狙える位置につけている。「疲れるけど、レースに出れば出るほど感覚が研ぎ澄まされていって、成長もする」。最も思い入れのある1500メートルも、昨季はペース配分で確かな手応えをつかんだ。オールラウンダーとして誰よりもタフにこなしてきたレースの数々が、昨季の躍進につながり、大きな財産となっている。

「体」と「技」、そして最も成長したのが「心」だ。2014年のソチ五輪出場を逃し、時間をかけて自分を見つめ直した。自問自答を繰り返すなか、身に染みて感じたのが、スケートに真摯に向き合う姿勢、五輪にかける思いが、足りなかったということだった。来年2月に迫った平昌五輪へ向け、高木はこう覚悟を決めた。「スケートに自分の人生をかける」――。

大舞台で最高の自分を出し切れるように日々全力を尽くしている。高木は最近気づいたことがあった。「息抜きするときにも、スケートにつながる何かを考えている。スケート選手って休みはないんだなと思った」。充実の表情で話す23歳にとって、それはスケートに人生をかけられている証し。苦難を乗り越え、コツコツと磨き上げて心技体がそろった。集大成ともいえる平昌五輪まで一直線で突き進む。(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊7月12日掲載〕

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