SNSマストドンって? ゆる~い交流、本当の魅力
いまさら聞けないネットの話/マストドン 前編

Facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)、Twitter(ツイッター)と「定番」が強さを見せるSNSに、新顔が登場し、話題になっている。名前は「Mastodon(マストドン)」。ドイツ生まれだが日本のユーザーに支持されているマストドンとは、いったいどんなSNSなのか。
マストドンは「分散型」のSNS
「マストドン」が突如としてネット業界を騒がせたのは、2017年4月半ばのことだった。マストドンとはおよそ1万年前に絶滅したゾウやマンモスに似た大型哺乳類の総称だが、突如日本に現れて暴れ出したのだ。
マストドンはミニブログ型のSNSで、日本でも人気なツイッターに非常によく似ている。見た目は「ツイッター・クローン」といってもいい。相互に友だちにならなくても一方的にフォローして購読することで、ゆるいつながりで交流ができるのも共通する。
一方、ツイッターとの違いは「分散型」の構造だ。ツイッターはツイッター社がSNS全体を管理しているが、マストドンは独自に運営されるSNSたちが連携して、大きな連合体を作っている。利用者は、個性の異なるSNSから自分に合ったものを選んで楽しむことができる。

マストドンはオープンソースというライセンス形態でソースコードが公開されており、知識があれば誰でも、マストドンをサーバーにインストールして、自分のSNSを立ち上げることができる。マストドンをインストールしたサーバーは「インスタンス」と呼ばれ、運営方法は自分で決めることができて、機能のカスタマイズも許されている。
現在、公式サイトに登録されたものだけでも1600以上ものインスタンスが存在するが、大勢のユーザーを持つインスタンスもあれば、地域や趣味を絞った小規模なインスタンスもある。どのインスタンスを使っていても相互にフォローしあえるようになっている。

趣味が同じ人たちが集まる心地よさ
では「分散型のSNS」であるマストドンは何が面白いのだろうか。
正直、4月に急激に話題になった頃は「何か新しいものが登場した」という期待感による人気が中心で、ユーザー数の多いインスタンスに人が集まっていたところがあった。しかし、当初のブームが収まり、少し落ち着いてきた今だからこそ、マストドンの本当の魅力が見えてきた。
マストドンは登録したインスタンスによって、雰囲気がかなり変わってくる。地域や趣味を絞ったインスタンスの中には、その特徴を強く出しているものも出てきている。仕組み上、インスタンスごとにタイムラインに流れてくる投稿もかなり違うのだ。
地域や趣味などのテーマがあるという意味では、フェイスブックのグループやmixi(ミクシィ)のコミュニティーなどに近いところもあるだろう。同じ趣味のものが集まって情報交換できるという意味では同じだ。ただ、このようなコミュニティーは、盛り上がっているときはいいが、誰も発言しなくなってくると急に閑散とし始め、次第に利用されなくなるということもよくある。
マストドンの場合、ログインすると外部インスタンスも含めてフォローしたユーザーの投稿がタイムラインに流れてくるため、フォローを積極的にしていれば、インスタンス内では発言がなくても更新情報が楽しめる。普段はコミュニティーで盛り上がりながらも、誰もいないときでもツイッターのように楽しむことができるのだ。外部インスタンスの投稿で見つけた話題を、インスタンス内に共有するのもクリック一つで簡単にできる。
さらに、インスタンスには同じような属性の人が参加しているので、インスタンスのテーマに特化した話題ではない場合も話が盛り上がりやすい。一度、自分に合ったインスタンスを見つけると、同じ趣味趣向を持つ人たちで構成される世界の心地よさが感じられるはずだ。
マストドンでは複数のインスタンスに登録することができる。いろいろ参加し、自分に合ったインスタンスを探すことが、分散型のマストドンの魅力を一番感じる方法といえるだろう。
最後に、簡単にマストドンの基本画面を解説してみた。

(2)ホーム:自分のトゥートとフォロワーの投稿が流れる
(3) 通知:フォローされたり返信やブースト(Twitterのリツイート)されると表示される
(4)スタートメニュー:ローカルタイムラインをクリックすると自分が所属するインスタンスの公開トゥートが表示され、連合タイムラインでは外部のインスタンスも含めた公開タイムラインやブーストが表示される。
個人運営ゆえのリスクも
ただ「分散型」ゆえに、登録する前に知っておきたい注意点がある。
マストドンには、個人でもインスタンスを立ち上げることができる手軽さがある半面、運営者に連絡がつかない場合や、突如閉鎖されるリスクなどもある。大きなインスタンスであっても運用コストが膨れ上がり閉鎖されることも考えられるので、そのリスクは理解しておこう。
また、悪意を持ってメールアドレス収集をする業者もいないとは言い切れない。念のため知られてもいいメールアドレスを利用し、パスワードの使い回しなどはやめておいたほうが安心だ。
後編では具体的にマストドンを始める方法を解説する。
(ライター 佐藤新一)
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