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エコシステムか賢さか、「AIスピーカー」Amazon対Google

ITpro

米Apple(アップル)も2017年12月の新製品投入を発表するなど、世界で開発競争が活発化しているAI(人工知能)スピーカー。現時点でこの市場で圧倒的に優勢な米Amazon.com(アマゾン)の「Amazon Echo」を、米Google(グーグル)の「Google Home」が追従する格好となっている。果たして、Google Homeに勝ち目はあるのか。米国在住の記者が両製品を試してみた。

Amazon Echoの発売は2014年11月であるのに対して、Google Homeの発売は2016年11月。市場での存在感は、2年先んじたAmazon Echoが圧倒する。米国の調査会社であるConsumer intelligence Research Partnersによれば、2016年のAmazon Echoの年間出荷台数は800万台を超えたという。

Amazon Echoの音声アシスタント「Amazon Alexa」の機能を拡張する「Alexaスキル」の種類も、2017年2月に1万種類を超えた。Alexaスキルはパソコンやスマートフォン(スマホ)のアプリケーションに相当するもの。アマゾンが用意するAlexaスキルのストアから、どのスキルを導入するかを選択できる。ストアではキーワードによる検索もできるし、ユーザーによるスキルのレビューも掲載されている。

Google Homeが搭載する音声アシスタント「Googleアシスタント」にも「Action」や「App」と呼ぶ機能を拡張する仕組みがある。しかしこれらのストアは用意されていない。Google Homeで利用したい機能がある場合は、Google Homeのスマホアプリの設定画面から「Assistant apps」という項目を開いて選択する仕組みだが、機能がアルファベット順に並んでいるだけで、使い勝手はよくない。

エコシステムではAmazon Echoが先行

いわゆる「エコシステム」の充実度では、完全にAmazon Echoに軍配が上がる。アマゾンは既に、小型スピーカーの「Echo dot」や、Amazon Echoに画面が付いた「Echo Show」、ユーザーが身に着ける衣類のスタイリングを選ぶ手助けをするカメラ搭載Echoである「Echo Look」など、Echoファミリーを拡充している。

音声アシスタントのAmazon Alexaは、こうしたEchoファミリー以外にも、Amazonの「Fire TV」や「Fire Tablet」だけでなく、Amazon以外のサードパーティーのスマートウォッチやスピーカーなどに続々搭載されている。

それに対してGoogleアシスタントを搭載する端末は、現状ではAndroidスマホとGoogle Homeに限られる。グーグルはアップルの「iPhone」にもGoogleアシスタントを提供するほか、Android搭載のスマートTVや車載端末にもGoogleアシスタントを搭載する方針を示しているが、エコシステムの構築はこれからだ。

もっとも音声アシスタントの性能を比較すると、Googleアシスタントを搭載するGoogle Homeが、Amazon Echoに比べて優位のようだ。Amazon EchoとGoogle Homeに同じ質問を投げかけてみて、その結果を比較した。

間違った質問にも正しく答えるGoogle Home

まずはAmazon EchoにAmazon.comの株式時価総額を、Google HomeにはGoogleの株式時価総額を聞いてみた。

Amazon Echoが「分かりません」と答えたのに対して、Google Homeは「午後4時の終値を元にした米Alphabet(アルファベット:グーグルおよび関連企業の持ち株会社)の株式時価総額は~」といった具合に返答した。ここで興味深いのは、Google Homeに対してグーグルの株式時価総額を質問したのに対して、Google Homeはその持ち株会社で上場しているアルファベットの株式時価総額を答えた点だ。

Googleアシスタントは、Google検索に実装されている「ナレッジグラフ」を活用している。ナレッジグラフとは、あるモノとモノの関係性についての知識の集合体だ。Googleアシスタントは、グーグルの親会社がアルファベットであることを理解している。だからグーグルの株式時価総額を尋ねるというピント外れの質問に対しても、的確に回答したわけだ。

続いて「オフィスまで何分かかる?」と聞いてみた。Amazon Echoは、この質問の意味を理解できなかったのに対して、Google Homeは自動車で移動した場合の所要時間を返答した。実は記者は「Googleマップ」に、自宅の住所と職場(オフィス)の住所を登録している。そのためGoogleアシスタントは、Googleマップに登録された住所を使って、Google Homeが設置された場所から筆者のオフィスまでの所要時間をGoogleマップの交通情報に従って答えられたわけだ。

Amazon Echoも、自分がよく出かける場所の住所を1カ所登録しておくと、Amazon Echoが今ある場所から登録住所までの所要時間を答えてくれる。オフィスの住所を登録しておけば、そこまでの所要時間を検索することは可能だ。しかしAmazon Alexaは、その住所が記者のオフィスだとは認識していないということだ。この辺りは、グーグルの各種クラウドサービスと連携しているGoogle Homeの有利な点だ。

音声合成機能

翻訳機能も検証した。両方に「フランス語で『おはよう』は何と言う?」と質問した。するとGoogle Homeは、Google翻訳の機能に基づき「ボンジュール」と発音した。それに対してAmazon Echoは「結果を発音できないので、Amazon Alexaのスマホアプリを見て下さい。翻訳機能が欲しい場合はスキルを追加してみてください」と答えた。

実際にAlexaのスマホアプリを見てみると、確かにそこには「Bonjour」という答えが表示されていた()。Googleアシスタントは多言語に対応した音声合成機能を備えているが、Alexaにはまだそうした機能は実装されていないようだ。

音声アシスタントの賢さでは、Google Homeが備えるGoogleアシスタントが、Amazon EchoのAmazon Alexaを上回るように感じた。米国の調査会社であるStone Temple Consultingによる調査でも、そうした結果が出ている。2017年1月に同社が発表したレポートによれば、同社がGoogleアシスタント、Amazon Alexa、アップルの「Siri」、米Microsoft(マイクロソフト)の「Cortana」の賢さを検証したところ、Googleアシスタントが他を大きくリードしたのだ。

音声アシスタントの賢さには大きな差

同社が5000件の質問を四つの音声アシスタントに投げかけたところ、Googleアシスタントの回答率が68.1%で、その正答率は90.6%。いずれの数値も四つの中で最も高かった。

次に成績が良かったのはマイクロソフトのCortanaで、回答率は56.5%、正答率は81.9%だった。この二つに対して、アマゾンのAlexaは回答率が20.7%で正答率は87.0%、アップルのSiriは回答率が21.7%で正答率は62.2%と振るわなかった。

音声アシスタントの賢さは、Webの検索エンジンの有無、特に「ナレッジグラフ」の有無に大きく左右されるようだ。マイクロソフトの検索エンジンの「Bing」にナレッジグラフを実装している(日本語にはまだ無い)。ナレッジグラフがあれば、音声アシスタントは質問文の内容を類推して補うことができるため、より多くの質問に答えられるようになるからだ。

エコシステムのAmazon Echoに対して、賢さのGoogle Home――。現時点での両者を比較すると、このように言えそうだ。

(日経BP社シリコンバレー支局 中田敦)

[ITpro 2017年6月30日付の記事を再構成]

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