2019年4月23日(火)

AIで皮膚病診断 実現間近、画像収集カギ

2017/6/30 6:30
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X線やコンピューター断層撮影装置(CT)などの医療画像を人工知能(AI)に学ばせ、病気を診断する技術の実用化が近づいている。なかでも実現が早いとみられるのが皮膚病の診断だ。患部の外見から診断しやすいうえ、スマートフォン(スマホ)などで撮った普通の写真を使える利点がある。AIに学ばせる膨大な画像をどう集めるかが信頼性向上のカギを握り、医療機器大手のほかベンチャー企業(VB)もアイデアを競っている。

医療情報を手掛けるVB、エクスメディオ(高知市、物部真一郎社長)は、アトピー性皮膚炎などの皮膚病をAIで自動診断する技術の開発に力を入れている。同社の共同創業者で最高技術責任者(CTO)の今泉英明氏は「診断精度を上げ、3年以内に実用水準まで高めたい」と話す。

AI診断で駆使するのがディープラーニング(深層学習)技術だ。皮膚病には皮膚が変色する紅斑や色素斑、水疱(すいほう)など40近い症状があり、専門医は経験に基づき疾患を特定する。AIにその過程を学ばせ、スマホなどで撮った画像と問診をもとに「アトピー性皮膚炎の可能性が90%」などと診断する。

症状と疾患の関係をAIに学ばせるため、30万点以上の画像を収集。うち約10万点を実際の学習に使い、実験では良好な成績を上げているという。

同社がAI診断に挑んだ背景には、多くの医師と接点をもちながら遠隔診断サービスを展開し、画像を集めやすかったことがある。

2014年に創業した同社の主力事業は、医師同士がネット上で情報交換するサイト「ヒポクラ」の運営だ。医療の専門化が進む一方、総合医や家庭医らは経験の乏しい症例に遭遇することも少なくない。ヒポクラでは医師がサイトで「この症状から推測される病気は」などと質問すると、各分野の専門家が助言してくれる。「専門医と知見を共有できる」ことを売り物に、会員医師は1万人近くまで増えた。

これをさらに深化させたのがAI診断だ。今泉CTOは慶応大学大学院でIT(情報技術)を学んだ後、楽天のチーフサイエンティストを経て米シリコンバレーのトヨタ系研究機関でAIを研究した異色の経歴をもつ。

皮膚病の自動診断に先行し、医学論文のデータベース検索にAIを応用したサービスも8月から始める。ヒポクラの会員医師が「花粉症に点鼻ステロイドは有効か」といった質問をすると、AIが関連性の高い論文を探してくれる。

AI診断をめぐっては医療機器大手や研究機関も開発に乗り出し、早期の実用化を競っている。

国立がん研究センターと産業技術総合研究所などはCT画像などをAIで解析し、がんの最適な放射線治療法を見つける研究を始めた。富士フイルムやオリンパスも内視鏡検査で胃がんなどの疑いを自動判別する技術を研究し、20年にも実用化をめざしている。

だが診断精度を上げるにはなお課題が多い。一般的に深層学習で信頼性の高い判断を下せるようになるには、100万以上の画像を学習させる必要があるとされる。医療画像の一部には機種が違うと読み出せない場合があり、業界団体や学会が中心になり標準化やデータベースづくりがようやく動き出した段階だ。

技術的に実用水準に達しても、臨床で使うにはルールづくりも要る。医薬品医療機器法(旧薬事法)では、AIを含む診断ソフトは臨床試験で有効性が確認できれば「支援ツール」として認める一方、最終的な判断は医師が負うとした。だが医師がAI診断の結果を患者に伝えるかどうかや、個人情報の保護などをめぐり曖昧な点が多い。官民でこれらの指針づくりを急ぐ必要もありそうだ。

(編集委員 久保田啓介)

[日経産業新聞 6月30日付]

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