2019年1月19日(土)

兼松、小型ロケットビジネスに接近

2017/6/30 6:30
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兼松は1月に出資した宇宙ベンチャー、米ベクター社(アリゾナ州)の小型ロケットを、衛星を使いたい日本企業に売り込み始めた。2018年から使える予定で、最大の特徴は大型の50分の1とみられる安さにある。兼松は価格破壊の波に乗り、宇宙ビジネスを拡大できるか。

兼松は近くベクターと日本での販売代理店になる契約を結ぶ。ベクターへの出資比率を明らかにしていない。

ベクター社のロケットは全長13~16メートルと小ぶりなのが特徴

ベクター社のロケットは全長13~16メートルと小ぶりなのが特徴

航空宇宙部の佐藤友作さんは出資の理由を「成長性を見込んだ」と語り、小型ロケットの市場拡大への期待は大きい。

小型ロケットの最大の魅力は打ち上げ費用の安さだ。通信や放送、気象の観測に使う人工衛星はロケットに載せて打ち上げるが、三菱重工業「H2A」は本体価格と打ち上げの費用で100億円強かかる。米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者が発足させたスペースXの「ファルコン9」は6千万ドル(約67億円)とされる。

これに対し、ベクターは小型ロケットの費用として150万ドル(約1億7千万円)と300万ドル(約3億4千万円)の2種類を公表している。

ロケットの全長は13~16メートルで、4~5階建てビルと同じ高さ。「H2A」の53メートル、「ファルコン9」の70メートルに比べて大幅に小さく、製作費を安く抑えられる。

エンジンの一部を3Dプリンターで製造したり、発射したロケットの一部を再利用したりする技術を取り入れ、コストを削減しているという。

人工衛星を打ち上げる需要は増える見通しだ。米国調査会社スペースワークスは、重さ50キログラム以下の超小型衛星が今後、世界中の通信サービスなどとして利用が増えると想定。22年に世界で、15年の3倍を超える435基が打ち上げられると予測している。

小型ロケットがこうした超小型衛星を載せる機会が増えると見込まれている理由は、安さだけではない。衛星を使いたい企業は、大型ロケットのように他の企業の衛星との乗り合いをする必要がなく、ビジネスの開始時期を比較的自由に選べる。投入する軌道も自由だ。大型ロケットの乗り合いは、他の衛星企業やロケットメーカーの都合で遅れることがよくある。

兼松が小型ロケット事業に参画する狙いは3つ。(1)小型衛星を打ち上げ、自社で運用したい日本企業をベクターに紹介する(2)ロケットの部品をつくる日本企業をベクターに紹介する(3)兼松が日本での販売権を04年から持つ英国衛星メーカーのSSTL社の商品の拡販につなげる。

兼松は00年ごろから宇宙関連ビジネスを始めた。衛星の関連機器を海外で調達し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や国内の衛星メーカーに販売していた。地上から衛星と通信するアンテナ、地上から衛星をモニタリングする管制システムなどを扱う。

事業規模で首位の三菱商事丸紅など、以前から航空宇宙分野で販売を仲介している総合商社に比べると後発組。新たな潮流と見込まれ世界の資金が動く小型ロケットの事業によって、宇宙分野を抱える車両・航空部門の営業利益を17年3月期の22億円から伸ばす。

ベクターは2016年の設立で、ジム・カントレル最高経営責任者は宇宙産業で30年間働いた技術者だ。スペースXの創業メンバーとして知られており、同社を飛び出して自らの企業をつくった。

今年5月3日、米カリフォルニア州の砂漠で試作機を打ち上げる実験を実施した。兼松によると、18年の商用化に向けて順調に開発が進んでいるといい、すでに米航空宇宙局(NASA)や米国、フィンランド企業から打ち上げを受注した。

日本総合研究所で宇宙分野を担当している斉田興哉マネージャーは「スペースXをはじめベンチャーの技術力は確実に高まっている。ベクターも商用化に成功するだろう」と話す。

今のところ、世界で小型ロケットの商用化に成功した企業は現れていない。ベクターが5月に実験して飛ばした試作機が到達した高度は、約1400メートルにとどまっている。兼松の小型ロケットビジネスは、ベクターがしっかりと最初のスタートを切るまで予断を許さない側面もある。

(企業報道部 渡辺伸)

[日経産業新聞6月30日付]

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