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白鵬の1047勝は通過点 横綱は優勝を一番の目標に

9日に初日を迎える大相撲名古屋場所(愛知県体育館)の話題の一つが横綱白鵬だろう。夏場所では復活を印象づける6場所ぶり38度目の優勝。今場所は私(元大関魁皇)が持つ通算最多1047勝へあと「11」に迫り、記録を更新しようとしている。白鵬の復活優勝への道のり、そして大相撲と記録について語っていきたい。

通算勝利数
魁皇1047
千代の富士1045
※白鵬1036
大潮964
北の湖951
旭天鵬927
若の里914
大鵬872
寺尾860
10※安美錦823

先場所の白鵬は、まず体つきを見て、いつもと違うなと感じた。体重はそんなに変わらなくても、体の張りがあるかないかで、結果が見えるときがある。調子が悪いときは体に張りがないとか見ていてわかるし、下半身が大きく見えるときはやはり強い。白鵬はそれまで上半身がちょっとしぼんでいるなと思うときもあったけれど、夏場所はそれがなかった。

夏場所までの1年間は、白鵬はけがで休場を繰り返した。その間、稀勢の里は優勝し、横綱にも昇進した。数々の悔しさを味わい、白鵬は何かを変えないといけないと思ったのだろう。本気で体のことを考えて調整したようにみえた。新しいトレーニングを取り入れたり、ヨガや断食をやったりしたと聞く。また稽古も量より質を重視しているそうだ。そういった取り組みが、いい方向に流れてきたのではないだろうか。

白鵬も横綱に昇進して丸10年となり、32歳になった。30歳を過ぎると、それまで痛くないところが痛くなってきたり、けがの回復も遅れたりする。体力も一気に落ちてくる。押し相撲の力士は、頭ではこういう形になったら押せるとわかっていても、体力が落ちて押せなくなる。そうしてみんな引退していく。結局、ベテランになると、技術面は十分体に染みついたものがあるわけだから、少しでも現役を長く続けるためには、体力を落とさないようにやっていくしかない。誰もが体がきつい時期は来るから、それをどう乗り越えていくか。白鵬はその対応ができたのだろう。

ほかの横綱と比べ安定感勝る

名古屋場所に向け稽古する白鵬。今後強さをどれだけ維持できるかが大事になる=共同

夏場所では全勝優勝を飾ったものの、内容を見ると余裕はなくなっているように感じた。ちょっと前の調子がいいときには、そこまで本気を出さなくても6~7割の力で勝っていたのが、このごろは8~9割の力を出さないと勝てない。実力をつけた若手が幕内上位に番付を上げ、白鵬自身も年齢を重ねてくるとなると、だんだんと差も縮まってくる。ただ、それでも強さは健在だった。余裕はなくなっても、白鵬が本気を出せば若手はまだまだかなわない。高安戦で頭をつけて取ったように、逆にいえば相撲が厳しくなった印象だ。最近は衰えを指摘する声も出ているが、今まであまりにも強かったから休場すると目立つし、すごく力が落ちたようにも見えるけれど、実際はそこまでではない。ほかの横綱と比べても安定感は白鵬の方がある。

年齢的にもこれから先、もっともっと強くなるというわけではない。現状でも十分な強さをどれだけ維持できるかが大事になってくる。しっかり体を動かし、体のケアをする。人付き合いとか遊ぶ時間を削って、自分の体のために使う時間を増やしていければ、まだまだ第一線に居続けるのは間違いない。

白鵬はモチベーションを維持するために、私の通算最多1047勝を目標にしていると聞く。自分は記録を抜かれても当たり前のことに感じるし、今の白鵬からすればただの通過点でしかないと思う。そもそも務めることさえ大変な横綱という地位で記録を達成するのと、自分のように大関でやっと届いた数字を比べるのは違うと思う。

数字などを目標にしていくことはいいことだし、目標があると日々の取り組みも変わってくる。自分の場合は1場所1場所、ただ必死にやるだけで、これといった数字の目標はなかった。ただ、現役を続けているうちに、幕内在位数については目標が出てきた。90場所くらいになると、100場所やりたいという気持ちが芽生え、結局は107場所(歴代1位)まで幕内を務めることができた。三役に上がったら10場所やりたいとか、幕内で長く相撲を取りたいとか、目標は人それぞれだろう。相撲は地位によって記録への思いなどが変わってくる。

白鵬(左)が自分の中で目標を定めればまだまだ優勝回数を伸ばせる=共同

白鵬は数々の記録を樹立してきたが、横綱の場合はやはり勝利数よりも優勝回数が一番だと思う。通算勝利数の場合、自分はたとえば大関から十両まで番付を下げればもっと記録を伸ばすことができただろう。だから、そういう記録にはそこまでこだわりがなかった。現役のベテランでいえば、安美錦とか豪風とかが長く相撲を取り続ければ、いつか1位に到達できるかもしれない。だが、優勝というものは、はかの力士にはなかなかできない。優勝は一番大変でほかの記録と重みが全く違う。だからこそ価値がある。

目標定めれば優勝50回も可能

自分の場合は幕内100場所に到達した後、達成感みたいなものはあった。ただ、次の目標はどこかといったら探すのが大変だった。マスコミから当時の通算最多1045勝(元横綱千代の富士)の記録のことを知らされ、数字のことは気にしていなかったけれど、「せめてそこまでは頑張ろうか」という気持ちになった。しかし振り返ってみると、「幕内100場所」以上の欲がなかったというか、出なかったのかもしれない。

しかし、白鵬の場合はまだまだ優勝できるだけの力がある。優勝回数は現在38回。自分の中で目標を定めれば、40回、45回、50回ということも可能だろう。まず優勝を一番の目標にすればいいだろう。優勝すれば、自然とほかの数字もついてくるわけだから、通算勝ち星については1047勝を超えた後は、次は1100勝といった新たな目標を持っていけばいい。できないことを目標にするのではなくて、できそうな目標があるからいいと思う。また白鵬は2020年東京五輪まで現役を目指しているという。そこまでやることは、本当に並大抵の努力ではできないことだし、様々なものを犠牲にする必要があるかもしれない。それでも、そこまで覚悟を持ってやりたい気持ちがあるのはすごいこと。新たな目標に向かって突き進んでいってほしい。

(元大関魁皇)

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