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もっと関西 間近で改修 平安の象徴 比叡山延暦寺 根本中堂(時の回廊)

大津市

滋賀県と京都府にまたがる比叡山。凜(りん)とした木々が天を突く。天台宗総本山、比叡山延暦寺はこの山全域を境内とし、伝教大師・最澄が788年に創建した一乗止観院が始まり。1200年余にわたって国の安泰と人々の平安を一途に祈ってきた。

その総本堂、根本中堂(大津市)で昨年10月、10年がかりの大改修が始まった。総工費は約50億円。約60年ぶりの改修となる。

根本中堂は幾度となく災害に遭い焼失し、そのたびに復興してきた。現在の建物は1571年9月、織田信長による焼き打ちの後、徳川3代将軍、家光の命で1642年に再建された。国宝に指定されている。

堂内は外陣と中陣、内陣に分かれる天台仏堂特有の形式をとる。僧侶が祈りをささげ、本尊の秘仏、薬師如来を安置する宮殿(くうでん)が置かれた石畳の内陣は、中陣より約3メートル低い。つまり中陣にいる一般参拝者と同じ高さに、本尊がある設計になっている。

同寺総務部の礒村良定主事は「天台宗では人間はだれでも仏になることができる、と説いている。参拝者が見上げるのではなく、本尊と対等にすることでそれを表している」と話す。

「不滅の法灯」

中陣の格天井には花の絵が描かれている。その数、約200。地元の名産を描いた「百花図(ひゃっけのず)」で、各地の大名が献上した。今で言えばさしずめ「県花」か。その中に面白い1枚がある。カボチャが描かれているのだ。

カボチャは16世紀に九州に伝来した。ただ当時はそれほど普及はしなかったとされる。誰がなぜカボチャを選んだのか。それぞれの絵の由来に関する詳しい記録は残っていないといい、想像を巡らすのも楽しい。

薄暗い闇が包む宮殿の前には3つの釣り灯籠がある。創建以来1200年以上の間、ともり続けるという「不滅の法灯」だ。それぞれ過去、現在、未来を表すともされる。「本当に一度も消えたことがないのか」。そんな参拝客からの質問に、礒村さんはこう答えるという。

「大事なのはなぜ火がともされたのかということ。世の中を明るくしたいという最澄の思いを守り、後世に伝えていく。法灯はその象徴でもある」

法灯の当番はいない。皆が気にかけ、油がなくなりかけたら誰ともなく補充する。「油を絶つな」。延暦寺の僧侶がひとときも忘れることのない自身の心への戒めでもある。

中庭に4階仮設

大改修では銅板の屋根のふき替えや極彩色に彩られた蟇股(かえるまた)彫刻の塗り直しなどをする。改修を前に、現在は根本中堂を屋根や壁で覆う工事を進めている。

来年3月には外からは見られなくなるが、根本中堂に面する中庭に同4月、4階建ての「修学ステージ」がお目見えする。改修の様子を参拝客が間近で見られるようにする試みだ。

江戸時代の匠(たくみ)、それを受け継ぐ現在の補修技術。新旧の共演が見られるまたとない機会でもある。

文 大津支局長 橋立敬生

写真 松浦弘昌

 《交通・ガイド》比叡山坂本ケーブル延暦寺駅から徒歩約15分。車は比叡山・奥比叡ドライブウェイを利用。巡拝時間は午前8時30分~午後4時30分(11月まで)。巡拝料は大人700円など。
 見どころは3地区にあり、根本中堂は東塔(とうどう)エリアにある。西塔(さいとう)にある居士林(こじりん)は一般に開放した修行道場。座禅や写経を体験できる。

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