2019年2月20日(水)

売り方も AIで激変する自動車産業の形

2017/6/30 6:30
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VentureBeat

人工知能(AI)システム、データ同士を掛け合わせるデータブレンディング、そして人の認知機能を模した最先端のアルゴリズムは、日常の最も単純な体験までもシンプルにし、改良しつつある。自動車業界も例外ではない。米調査会社トラクティカは自動車のAIハードウエア、ソフトウエア、サービスに対する需要が2016年の4億400万ドルから、25年には140億ドルへと爆発的に増えると予測している。

■「近」未来のクルマ

半自動運転車や完全自動運転車は、運転手や搭乗者から信頼を得るために、フェールセーフ(故障時にも安全だけは確保する)ナビゲーションの信頼性を確実にするAIシステムに大きく頼らなくてはならない。このため、米テスラや米グーグル、独メルセデス・ベンツなど自動運転の開発を手掛ける各社は、全体的な設計の段階から自動運転車に多額のAI関連費用を投じている。米フォード・モーターは今年2月、米自動車業界で過去最高の10億ドルをアルゴAIに投資した。アルゴAIはグーグルと米ウーバーテクノロジーズのトップ技術者2人が共同で設立した自動運転のスタートアップだ。

テスラの創業者イーロン・マスク氏は、AIは30年には人間の能力を超えるとみている。人類は60年にはAI搭載ロボットに取って代わられると主張する論文に対し、マスク氏はツイッターで「私の意見では、おそらく30~40年あたりだと思う」と語った。機械学習でデータの精度が高まり、人間が犯すミスに代わって明確でブレのないプロセスが安全に提供されるようになる時期がどれほど早く訪れるかはよく話題に上るが、大幅に過小評価されている。こうした能力が日常生活を改善してくれるようになるまで、長く待つ必要はない。多くの人の予想よりも早く実現しつつあるのだ。

AIの発展を支えるこのテクノロジーの仕組みは、数十年にわたるコンピューター知能の発展の末にようやく開花しつつある。われわれは初めて、これまで人間にしか担えなかった知的レベルのタスクを機械がこなせるようになる「汎用AI」の開発に近づいている。重層的な知能を実装した現代のアルゴリズムのおかげで、AIは高度な戦略・戦術的判断に基づいて複雑な決定を行うことができる。

■AIでよりスマートなマーケティングを

現代のAIは主に自動運転車と複雑な意思決定に利用されているが、自動車業界は新旧様々な手段を駆使して顧客を取り込む新たな方法を求め続けている。AIを使えば、顧客の行動をより正確に理解し、最適にカスタマイズされたクルマの購入やローンの体験を提供する新たな手段が得られる。

各社は最先端の分析を使って、データを正確に把握し、知見を得て、顧客のために信頼できる予測モデルを構築できる。機械学習の価値は未来の行動を導き、従来は不可能だった規模で素早くパターンを見いだす正確なモデルを構築する能力にある。これは特に、自動車業界に新たな知見をもたらすのに適している。データの量が多く、内容も多岐にわたりすぐに変わるからだ。自動車業界のデータに機械学習を使えば、こうした状況は解決し、これまで知られず、予見もできなかった反復的な関連性が新たに示される。

■クルマの購入体験を根底から覆す

消費者にとって、クルマの購入はワクワクする体験だ。とはいえ、大半の人は毎月決められた予算内でやり繰りしなくてはならない。自動車関連の調査会社エクスペリアン・オートモーティブによると、全米で販売された新車の80%以上がローンやリースでの契約だった。こうした取引形態の顧客のうち、ディーラーを訪れたり、早期の検討段階で調査を打ち切ったり、ネットでの調査から直接の調査に切り替えざるを得なくなったりする前に、ローン情報を収集できなかったと答えた人は70%を超えた。さらに、ネットで提示される毎月の返済額シミュレーションは、顧客によって大きく異なる信用履歴を使ってカスタマイズされていないため、購入を検討している顧客は次の段階で自信が持てない。

現行の自動車ローンのプロセスは、ディーラーや金融機関に課題を突き付けている。ディーラーに足を踏み入れた多くの顧客はどのクルマなら本当に買えるのかをまだ分かっていない。このため、ディーラーは客が1台のクルマに絞るまで、様々なモデルのお得な買い方についての説明や計算に勤務日の半分以上かさらに多くの時間を費やしている。さらに、顧客はディーラーのオススメに応じて融資機関を選ぶことが多いため、もっと相性が良いかもしれない他の貸し手と接触する機会を奪っている。

優れた自動車購入の体験と、透明で顧客の目線に立った融資プロセスの一体化は、クルマの買い方を次の段階に進歩させるために不可欠だ。クルマと利用できる融資機関の選択肢は膨大なため、機械学習を活用すれば顧客は自分に最適なクルマと融資オプションを速やかに見つけ、購入プロセスをシンプルにできる。

筆者はAIが自動車業界にもたらす変化――自動運転車に限らず、サプライチェーン(供給網)の3つの障害に対する根本的な変化――に情熱を傾けている。つまりクルマの買い方、ディーラーの売り方、融資機関による自動車ローンの組み方だ。よりスマートな車から、購入から納車までのプロセスの短縮・円滑化に至るまで、AIには自動車業界のありとあらゆる面を変える力がある。

By Martin Prescher=米自動車ローン関連ベンチャー、オートグラビティーの最高技術責任者。安全で便利な自動車ローンの開発を手掛ける技術者やデータサイエンティストのチームを統括している。

(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)

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