2019年7月20日(土)

真の伝説へ準備着々 スキージャンプ・葛西紀明
8度目の挑戦 気負いなし

2017/6/24 2:30
保存
共有
印刷
その他

5月16日から6月6日まで沖縄・宮古島で行われた土屋ホームの合宿。ノルディックスキー・ジャンプ男子の葛西紀明(45)は「若さ」を全開にしていた。監督兼任として練ったメニューのヤマ場は400メートル走を皮切りに200メートル5本、100メートル7本と続く、昨年から取り入れたインターバルトレーニングだ。

砂浜でテレマーク練習する葛西

砂浜でテレマーク練習する葛西

小林陵侑(20)、伊藤将充(19)らの若手に対抗心むき出しで歯を食いしばる。後れを取ったとしても数メートルほど。その走力、持久力も驚異なら「これだけやったと自信がつく」との言葉が初々しい。同行した綿谷美佐子トレーナーは「(身体)能力は20代前半と遜色ない」と驚く。

とはいえ、「心肺能力は若者と変わらないけど、筋肉はじじいになってきた」。ここ数年減らしていた練習量を増やし、「もと(の体)に戻す」のが今の命題。平昌五輪に向けてそろりネジを巻き直しつつ、やり過ぎを避けるあんばいも知るのが経験のなせる業だ。

2002年のソルトレークシティー五輪前。所属していたマイカルは昔ながらのスパルタ指導だった。20代の葛西は1500メートル3本、200メートル10本など極限状態で走り込んだ。体力、瞬発力、筋力はすべて全日本でトップの値。自信に満ちて臨んだが、結果は49位、41位の大惨敗に終わった。

キレすぎた体が逆にジャンプとマッチしなかった。「瞬発系の筋肉の反応が異常に速く、伸びるタイミングが早くなって(飛び出しで)全部すっこ抜けた状態になって」。苦い経験も加味した膨大な「データベース」から最適解を探り、メニューに落とし込んでいる。

葛西流は陸上トレーニングにとどまらない。ほぼ毎日励んだビーチバレーなどの球技は、「猛スピードの中で一瞬で判断し、体を動かす力」を養うためのもの。砂浜で毎日設けた、五輪での姿に想像を巡らせる瞑想(めいそう)タイムは「色々な(予期せぬ)ことが起こるなかで焦らない」余裕を持たせる狙い。牧歌的な光景にも、すべて意味が詰まっている。

無印に近かったソチ五輪はシーズン中に一気に浮上、イメージトレーニングも「うまくはまって」銀メダルに駆け上がった。昨季も前半の不振から終盤に急浮上し、W杯で最年長記録を更新する2度の表彰台。瞑想で湧き上がってくるイメージは「団体、個人の3種目で金銀銅」と貪欲だ。8度目の挑戦で悲願の金をつかむため、上昇気流に乗る準備はできている。

(西堀卓司)

かさい・のりあき 北海道下川町出身。1992年アルベールビル五輪から五輪に7連続出場し、ソチ大会ラージヒル銀メダル。W杯は個人戦出場528試合で17勝。ジャンプ界の「レジェンド」の異名を持つ。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。