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再生医療、本格化へ一歩 規制緩和でVB黒字

政府がこぶしを振り上げて振興する再生医療だが、今までに商業化した企業3社は赤字に悩まされていた。しかし、そのうちベンチャー企業が単年度の営業黒字を初めて達成した。黒字額はまだ小さいが、第1期の再生医療の本格化に向けた大きな一歩といえる。

そのベンチャーは愛知県蒲郡市に本社を置くジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)だ。創業18年目を迎えた同社は、2017年3月期の黒字転換を目指し、社員一丸となってコスト削減と販売拡大に励んできた。その結果、同期に3億1200万円の営業黒字を計上した。

その内訳には、親会社の富士フイルムに再生医療関連の特許権を譲渡して得た2億8400万円が含まれている。この特許譲渡の反動で、18年3月期の営業利益が前期比2300万円減になる見通しだ。このため、アナリストたちの渋い評価を招いてしまった。「市場はあまり評価してくれず、株価は上昇していない」(大須賀俊裕専務執行役員)と眉も曇りがちだ。

しかし、これは決して本質を突いていない。J-TECは今後も黒字体質を維持、今後もしっかりと売り上げを伸ばす見通しだからだ。17年3月期の販売実績は21億3500万円だったが、20年3月期には36億円に引き上げ、それに伴い営業利益を拡大する強気の中期計画を立てている。

こうした同社の強気な姿勢には2つの根拠がある。

第1は同社が日本で初めて実用化に成功した再生医療2製品の着実な売り上げ増だ。この背景には、政府の再生医療振興策を受け、14年に施行された薬事法改正(薬機法制定)と再生医療新法の制定という規制緩和がある。17年3月期に発売した培養表皮「ジェイス」は7億4300万円を売り上げた。来年も6%程度の伸びを期待している。

市場の立ち上がりが遅かった培養軟骨「ジャック」も3億2300万円を売り上げ、18年3月期には売上拡大期に突入、73%以上の大幅な増収を見込んでいる。黒字転換に貢献した「ジェイス」は、再生医療新法や薬機法の改正を受けた保険償還価格の改定が決定打となった。

16年4月から従来は培養表皮1本の薬価が、採取・培養キットと調整・移植キットの2本立てになった。これで重症火傷を対象にするジェイスの販売歩留まりが向上した。以前は培養中に患者が死亡し、費用を回収できないことが35%前後もあり、収益を圧迫。さらに同年12月にジェイスが先天性巨大色素性母斑に適応拡大され、同時に重症火傷で20枚だった使用制限が40枚まで緩和された。

第2の根拠は再生医療新法より認められた受託細胞培養事業(培養とコンサルタント)にJ-TECが参入、売り上げを伸ばしていることだ。16年3月期は7億9900万円、そして17年3月期は10億6600万円と同期の売り上げの半分を稼ぎ出した。再生医療実用化の進展に応じて、製造・品質管理基準(GMP)生産で2つの商品を製造販売するJ-TEC社の実績を買い受託細胞培養の依頼は増加している。

14年に始まった再生医療の規制緩和が、低迷していた再生医療に火をつけた。今後はベンチャーのみならず大手でも、再生医療で収益を確保する製薬企業が続々と現れるだろう。

(日経BP社 宮田満)

[日経産業新聞 6月23日付]

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