Aimer、初のベスト 幻想的な歌声で、振り幅広く
ハスキーながら甘い歌声で、ジャズからロックまで幅広い楽曲を幻想的に歌いあげる、シンガーソングライターのAimer。2月の「第9回CDショップ大賞」では、ONE OK ROCKのTAKA、RADWIMPSの野田洋次郎などが楽曲制作に参加したアルバム『daydream』(2016年)で準大賞を獲得した。

音楽好きだった父の影響で、小学生からピアノやギターを習い始めた彼女。「椎名林檎や宇多田ヒカルの声色を完コピして家で歌っていました」
15歳の時に声帯を痛め、半年間、発声できない経験をする。「歌えなかった日々のおかげで、歌手になりたいという夢が明確になりました。そして、喉を守るように工夫して歌うなかで、今の声が生まれたんです」
11年から本格的に音楽活動を始め、同年9月に『六等星の夜』でメジャーデビュー。そんな彼女が初のベストアルバムを2枚同時リリースする。『blanc』は心に染みるバラード系、『noir』には力強いエモーショナルな楽曲が収録されている。
「力強さと優しさ、悲しさとうれしさなど、真逆の価値観を大切に歌ってきたので、その両方をこの2枚で味わってもらえるとうれしいです」
今作には彼女の転機となった2曲が収録されているという。1つは『RE:I AM』。「それまでは静かな楽曲が中心でしたが、初めてパワフルさが求められました。試行錯誤の結果、あえて体の力を抜き、しなやかに全身の筋肉を使うことで力強い声が出せるようになりました」

2つ目は『insane dream』だ。「内側にこもりがちな性格だったんですが、(一緒に制作した)TAKAさんから『外側に意識を向け、いろんな経験を積むことや、様々なジャンルの楽曲に挑戦することが、歌手としての可能性を広げる』とアドバイスをもらいました」。その後、RADWIMPSの野田とも楽曲を制作する機会に恵まれ、繊細な人間関係を歌うバラード『蝶々結び』が生まれた。
ベストには新曲も収録。『March of Time』は美しいメロディーが印象的な、一歩を踏み出す人にエールを送る応援ソング、『歌鳥風月』は和のイメージをピアノと歌詞で表現するなど、新しいテーマにも挑む。「今後は、例えばラップのような自分のイメージを裏切るような楽曲にも取り組んでみたいですね」
進化を求め続ける彼女の音楽性の振り幅は、この先も広がりそうだ。
(「日経エンタテインメント!」6月号の記事を再構成。敬称略。文/中桐基善)
[日経MJ2017年6月23日付]
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