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T―岡田、誰もが認めるチームの「顔」になれ

大器がいよいよ長い眠りから覚めた感がある。オリックスのT―岡田が開幕から順調に本塁打を積み重ね、16本はアルフレド・デスパイネ(ソフトバンク)の18本に次いでパ・リーグ2位タイ。33本で本塁打王に輝いた2010年以来の量産ぶりは、主軸の大半を外様が占めるチームにあって明るい材料といえる。(記録は6月18日現在)

T―岡田の魅力の一つはその飛距離=共同

今季は3月31日の開幕戦で本塁打を含む2安打と幸先良く滑り出し、3戦目でも本塁打。4月13日からは8試合で5発と打ちまくり、3~4月は7本塁打に長打率6割7分5厘(ともにリーグトップ)、打率3割5分1厘の成績で月間MVP(最優秀選手)に輝いた。現在の打率は3割5厘。過去3割を打ったシーズンのないT―岡田としては依然、高いレベルをキープしている。

低いゾーンの球、見極め奏功

打率が比較的高い水準で推移している要因を、下山真二打撃コーチは「もともとローボールヒッターで、これまでは低めのボールになる変化球も振っていた。ところが、今季は低いゾーンの球をあまり振らなくなった」と説明する。「今年、四球が多いのはその表れです」。従来、四球が最も多かったのは129試合に出た10年の49個だが、今季は63試合を終えた時点で早くも43個だ。

硬式球を遠くに飛ばすには、ボールの下側をたたいて強烈なバックスピンをかけることが重要。ストライクゾーンの下限の球ならまだ下側をたたけるが、そこから低いところに落とされると、どうしても上っ面をたたいて凡打になってしまう。ここが、低めの変化球の見極めが重要とされる点だ。

ローボールを打つのが得意な打者ほど低めを振るから、ボール球で誘う投手の術中にはまりやすい。ひところのT―岡田もそうだった。貴重な長距離砲だけに、首脳陣とすれば好球だけを強くたたき、打点を多く稼いでほしいところ。そこで下山コーチは今季に臨むにあたり「ストライクゾーンを上げていけばいいのではないか、という話を本人にした」。

T―岡田は好球に素直に反応する姿勢が好成績につながっている=共同

低めを捨てて真ん中付近から高めに狙いを定めることを「ゾーンを上げる」という。ただ、ストライクゾーンから低めに落ちるフォークボールならともかく、直球であればストライクゾーンの低めぎりぎりに決まることもある。好球を見逃してストライクを取られるリスクを考えると、ローボールヒッターにとってゾーンを上げることは勇気がいるはず。低めの見極めについて、本人はどう考えているのか。「(特段)見極めようとしているわけではない。(ボール球を振らないよう)我慢できているのが大きい」。見極めよう、とことさらに構えるのでなく、好球に素直に反応する姿勢が好成績につながっている。

10年に就任した岡田彰布監督が、同じ「岡田」姓で紛らわしいとの理由から「岡田貴弘」の登録名変更を提案。公募を経て、「Takahiro」と恐竜のティラノサウルスの頭文字を取って「T―岡田」に決まった。

"改名"の効果はすぐに出た。大阪・履正社高からプロ入り後の4年間で計7本塁打だったのが、5年目のこの年は2割8分4厘、33本塁打、96打点とブレーク。成績とともに強い印象を与えたのは飛距離で、ノーステップ打法から高々と舞い上がる弾道で京セラドーム大阪の上層階席にぽんぽん放り込み、中村剛也(西武)に次ぐ和製大砲の誕生を思わせた。

13年が再出発の「きっかけに」

だが、期待はすぐにしぼんでいく。翌11年は本塁打が16本と半減。その後は左太もも裏の肉離れなどに悩まされ、12年は10本、13年は58試合の出場で4本に終わった。ヤクルトの山田哲人が11年にプロ入りする際、同じ履正社高出身であることから先輩にあやかって「T―山田」と呼ばれたことがあったが、T―岡田の成績が下降線をたどった一方、山田は2年連続トリプルスリーを達成するなど球界屈指のオールラウンダーに。先輩の影はすっかり薄くなった。

福良監督はT―岡田を不動の4番と認めていないようだ=共同

今にして思えば、打率2割2分2厘と、とりわけ低調だった13年が再出発への「きっかけになった」とT―岡田は話す。食事に気を使うようになり、100キロ以上あった体重を90キロ台に減らすなどした結果、14年は24本塁打、昨年も20本と徐々に再飛躍の準備を整えつつあった。そして今年、ブレークした10年以来となる30本塁打、さらには自身初の打率3割を狙える状況にある。

課題は長年指摘されてきた、優しすぎる点だろう。5月2、3日と2試合連続で本塁打を放ち、4日から7試合にわたって4番を任されたものの、この間の成績は打率2割、本塁打ゼロ。同月16日から再び4番に座るとぽつぽつ一発も出るようになったが、交流戦初戦の30日に左膝の負傷から1カ月ぶりに復帰したステフェン・ロメロにいきなり4番を奪われた。以後、打順は5~7番をさまよっている。

下山コーチは「ロメロや(腰痛で離脱中の)吉田正尚が帰ってきても4番を打てる。あとは本人が『4番は渡さない』という意識でやれれば」と話していたが、他人を蹴落としてでも4番に、というぎらぎらした様子はうかがえない。福良淳一監督が復帰したロメロをすぐに4番に据えたのは、T―岡田を不動の4番とは認めていない証し。日本ハムの中田翔は今月に入ってたびたび3番を務めているが、基本的にはどれほど不調でも栗山英樹監督が4番で使い続け、決して下位に据えることがないのとは対照的だ。

ファンの記憶に残る一発ほしい

T―岡田は本数こそ16発打っているが、本塁打を打った試合の成績は7勝9敗。5-4で勝った今月3日の巨人戦の初回に放った3ランのような効果的な一発は少ない印象だ。対して、ロメロが本塁打を打った9試合(今月14日は2本塁打)は7勝2敗。今月2日の巨人戦は敗色濃厚の九回2死から代打で放ったソロが呼び水となり、チームは逆転勝ち。9日には中日・田島からサヨナラ2ランを放つなど、ファンの記憶に残る一発が多い。

今季は36歳の小谷野栄一に34歳の中島宏之と移籍してきたベテランの活躍が光るが、チームが中期的に強者へと成長していくには、生え抜きの筆頭格である29歳のT―岡田のさらなる奮起が不可欠。「逆転」「決勝」「サヨナラ」といった枕ことばが付く強烈な一発で存在感を高め、誰もが認めるチームの顔となりたいところだ。

(合六謙二)

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