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不振のアルゼンチン W杯出場の鍵は信頼と自信

サッカージャーナリスト 沢田啓明

現在、世界各地で行われているサッカーの2018年ワールドカップ(W杯)ロシア大会予選で最大の驚きの一つが、南米の強豪アルゼンチンの不振だろう。

1978年と86年のW杯で優勝し、マラドーナ、メッシ(バルセロナ)ら世界サッカー史上に輝くスーパースターを輩出し、2014年大会でも準優勝した超大国が、南米予選の全18節のうち14節が終わった時点で参加10カ国の中の5位に沈んでいる。この順位のままならオセアニア地域代表との大陸間プレーオフを戦う必要がある。残り4節の結果次第では6位以下に転落し、70年大会以来の予選敗退という屈辱を味わう可能性もある。

昨年3月の第6節終了時点の順位は3位。6月のコパ・アメリカ(南米選手権)創設100周年記念大会で準優勝し、チームづくりが軌道に乗りつつあると思われた。しかし、この大会で優勝を逃した責任を取ってヘラルド・マルティーノ監督が辞任し、エドガルド・バウサ氏が後任に就いた。

新監督、若手を積極起用

ここからチームが迷走する。FW、MF、DFの3ライン間の距離が間延びして、攻撃と守備が分断された。前線からのプレスが効かず、最終ラインが相手の攻撃に直接さらされて失点が増えた。攻撃陣も大黒柱のメッシが故障で欠場を繰り返し、CFイグアイン(ユベントス)らFWが不振を極めた。第14節終了後、バウサ監督が更迭され、チリ代表やセビージャなどを率いて実績を残したホルヘ・サンパオリ氏が新監督に就任した。

サンパオリ氏が志向するのは、3ラインを常にコンパクトに保ち、敵陣から相手選手に強烈なプレスをかけ、ボールを奪うと人数をかけて攻撃し、常に主導権を握る戦い方だ。最終ラインからでも、しっかりパスをつないで攻撃を組み立てる。選手の技術と判断力を信頼し、リスクを冒してでも攻守両面で積極的にプレーするのが特長だ。

監督就任後最初の試合が、今月9日にオーストラリア・メルボルンで行われた宿敵ブラジルとの強化試合だった。南米予選で首位を独走してすでに来年のW杯出場権を獲得しているブラジルは、エース・ネイマール(バルセロナ)をはじめとするレギュラー7人を休ませた。一方のアルゼンチンはメッシを含むベストメンバー。南米予選で結果を残せなかったベテラン、中堅に代えて23歳のディバラ(ユベントス)ら若手を起用し、「過去の実績ではなく、現在のコンディションを重視する」というメッセージを発信した。

選手たちは試合の序盤からブラジル選手に猛然と襲いかかった。ボールを持つ相手選手を3人、4人で取り囲むというこれまでついぞ見られなかった光景が続出し、ボランチも速い縦パスを前線へ送って攻撃を活性化した。

45分、左CKからの流れからのクロスをCBオタメンディ(マンチェスター・シティー)がヘディングシュート。これがポストに当たって跳ね返ったところを左SBメルカード(セビージャ)が押し込んだ。

後半は中ごろからブラジルが優勢となり、CFガブリエルジェズス(マンチェスター・シティー)らのシュートがポストをたたく場面もあった。しかし、アルゼンチンはブラジルの猛攻にも必要以上に受け身にならずにボールを保持して盛り返し、1-0で勝ち切った。

試合後、サンパオリ監督は「短い練習時間しかなかったが、選手が私の考えをよく理解し、ピッチ上で表現してくれた」と勝因を語り、「ブラジルに勝てたのは大きな自信になる」と笑顔を見せた。

その4日後には、シンガポールと対戦。若手中心のメンバーで臨んだが、リズムよくショートパスをつないで決定機をつくり続け、ともに22歳で初めて代表入りしたFWコレア(セビージャ)、MFパレーデス(ローマ)らの代表初ゴールなどで6-0と圧勝した。

この2試合を通じて新監督が目指す戦い方とチームづくりの方向性が明確になり、試された若手が見事なプレーを見せ、連勝したことで選手たちが自信を取り戻した。極めて実り多いオセアニア、アジア遠征だった。

重要な8月末のウルグアイ戦

今後は8月31日に宿敵ウルグアイ(アウェー)と当たり、9月5日にベネズエラ(ホーム)と、10月5日にペルー(ホーム)と、そして10月10日にエクアドル(アウェー)と対戦する。

強烈なライバル意識が渦巻く南米予選は、強化試合とは雰囲気が全く異なる。サンパオリ監督がこれまでの中心選手に若手を融合し競争力のあるチームをつくれるかどうか。また選手たちが厳しい状況でも自分と仲間を信じ、自信を持ってプレーできるかどうかが南米予選突破のためのキーポイントだろう。

極めて重要なのが最初のウルグアイ戦。引き分け以上の結果が必要で、もし勝てば予選突破に向けて大きく前進するが、負けたら暗雲が垂れ込める。一方、ウルグアイも現在3位で、W杯出場を目指して懸命だ。両国は100年以上前から隣国のライバルとしてしのぎを削ってきた間柄だけに、壮絶な試合となるに違いない。

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