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雨と寒さと上り坂…でも100キロの先に歓喜
編集委員 吉田誠一

(3/3ページ)
2017/6/15 6:30
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北上市から金ケ崎町、花巻市、西和賀町を経て雫石町に至り、フィニッシュタイムは11時間31分26秒。5度目の100キロマラソンで最も悪い。前半、ペースを抑えることに集中したにもかかわらず、後半、膝の痛みもあって、さらにペースが落ちた。

達成感は一瞬、次はいろは坂

前半の自制はプラスにならなかったのだろうか。しかし、前半に無理をしていたら、もっと悲惨な結果に終わっただろう。練習で35キロまでしか走っていなかったのだから、タイムは仕方がない。歩かず走り続けるという自分との約束を果たせたことがうれしい。

フィニッシュタイムは最悪。苦しかったが、でも楽しかった

フィニッシュタイムは最悪。苦しかったが、でも楽しかった

いつも感じることだが、100キロを走り終えたからといって、心がいつまでも達成感で満ちあふれるというわけではない。「やった!」という思いはすぐにどこかに飛んでいく。

ゴールの瞬間を目指して苦闘を続けるが、歓喜のすべてがその一瞬にあるわけではない。歓喜は走り続けている間に流れた11時間半というトータルの時間の中に横たわっている。

哲学者のマーク・ローランズがオオカミとの暮らしをつづった「哲学者とオオカミ 愛・死・幸福についてのレッスン」には、考えさせられる文章がいくつもある。

「わたしたち人間は時間を理解しようとする。時間を、過去から現在を通って未来へと飛ぶ矢として考える」

「瞬間は無限に前後にずらされる。わたしたちが今として見なすものは、以前に起こったことの記憶とこれから起こることへと予想からできている」

「瞬間はつかみどころがない。わたしたちにとっては、完全にリアルではない。存在しないのだ。瞬間は過去と未来の亡霊で、過去にあったことと未来にあるかもしれないことのエコーであり、予想なのだ」

「瞬間は絶えずわたしたちの手を逃れる。したがって、わたしたちにとって生きる意味は、決して瞬間の中にはない」

オオカミと違い、人間にとってのあらゆる瞬間には、それまで起こったことの記憶と、これから起こることへの期待がちりばめられているという。まだよく理解しきれていないが、11時間半も走った結果、わかりかけていることもある。

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私は連なっていく時間の中で、そこまでの行程のうれしくもつらくもある過去と、かなりの苦しみにわずかな喜びが混じるであろう未来に支配されながら走り続けた。それが苦しくもあり、楽しかった。うれしくて、つらくて泣きそうになった。

サッカーのコンフェデレーションズカップの取材のためのロシア出張を挟んで、7月2日に日光で再び、100キロに挑む。今度はいろは坂を上り、下らなくてはならない。いまはまだ、この挑戦の折り返し点に過ぎない。

いわて銀河での過去と、いろは坂での未来が絡み合って、胸が不安と期待でいっぱいになっている。もちろん、不安が9割です。大丈夫だろうか。

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