2019年6月24日(月)

自動運転だけじゃもうからない 鍵は「コネクテッド」
自動運転が作る未来(13)

(1/2ページ)
2017/6/23 6:30
保存
共有
印刷
その他

日経BPクリーンテック研究所

完全自動運転車を社会に実装するには、多様な先進技術が求められる。AI(人工知能)技術を用いた自動運転ソフト、ディープラーニング向けの車載コンピューター、周辺認識のための車載センサー、センサーデータから周辺物の形状や周辺物までの距離を測定する画像/情報処理ソフト、正確な自車位置推定に欠かせない高精細な3次元デジタル地図などである。今、さまざまな分野の技術系企業がその実現に向けて多額の投資を続けている。

ただし、この多額の投資に見合うだけの新たな売上の作り方、つまりビジネスモデルは見えていない。大型トラックに続き、乗用車向け自動ブレーキの基準策定/義務化の動きが具体化しつつあることを考えると、自動運転技術の多くは将来的に義務化の方向に向かうだろう。問題は、自動運転技術が交通事故削減に貢献できることが証明されたとしても、今の車両価格を大幅に値上げすればユーザーの支持は得られないであろうことだ。

そうしたなか、オンデマンド配車サービスに代表される新ビジネスを立ち上げて新たな収益源を育てようという動きが自動車産業全体に広まっている。新ビジネスの鍵を握るのは、自動車に通信機能を持たせてIoT(モノのインターネット)化する「コネクテッド」だ。コネクテッドカーならではの魅力あるオンラインサービスを開発できれば、車両販売とは別の事業売上を作れることに加え、ICT(情報通信技術)の世界で一般化している月々あるいは利用見合いで課金する「サブスクリプションモデル」を主流にできるかもしれない。そうなれば、新車販売に頼る「物販モデル」からの脱却も見えてくる。

PwCコンサルティングの戦略コンサルティング部門であるStrategy&は、2013年から自動運転時代を踏まえた将来の自動車産業の動向を分析する調査レポート「コネクテッドカーレポート」を毎年発行している。自動車業界における戦略コンサルティングの豊富な経験を持ち、同レポート日本語版の監訳を担当したPwCコンサルティング Strategy&の白石章二パートナーと北川友彦ディレクターに、自動運転とコネクテッドという新たな投資要求に直面する自動車産業の行方を聞いた。

――最新版(2016年版)の調査レポートで、2030年の自動車産業全体の売上が2015年の約1.5倍になるものの、自動車販売の売上と収益の伸びは産業全体の伸び率を下回ると予測・分析した()。自動車メーカーと自動車部品サプライヤーは自動運転やコネクテッド向けに多大な投資を迫られているものの、開発投資に見合うだけの売上拡大シナリオを描けていないということなのか。

図 2015~2030年の自動車産業における価値の移行(出所:PwC Strategy& 「コネクテッドカーレポート2016」)

図 2015~2030年の自動車産業における価値の移行(出所:PwC Strategy& 「コネクテッドカーレポート2016」)

白石 自動運転にしても、コネクテッドにしても、自動車メーカーは研究開発と実用化に向けて積極的に取り組んでいる。自動運転開発の第一の目的は「安全性の確保」。この考えは新しいものではなく、これまでもそうした研究開発に投資を続けてきた。安全性を高めるために、これからも運転支援のインテリジェント化は継続的に進めていくだろう。ただ、これらの開発投資をどのように回収していくのかについては、自動車メーカーもまだ判断がつかないようだ。

自動車メーカーの中には「まずは自らの手で全部を手がけてやってみないと、クルマ全体の姿が見えてこない」という考えのところもある。すべてが分かれば、自前で取り組むべきことと外部に任せてもいいところが判断でき、コストカットの手法や新しいビジネスの姿も見通せるようになるというわけだ。このような考えを持っていて、自動運転とコネクテッドは自動車の将来を見通す上で欠かせない重要な技術であると判断したなら、その実現に向けた開発投資は惜しまないだろう。

――安全を確保するための機構は、本来、すべての自動車が装備すべきものと言える。エアバッグが広く普及したように、今後は自動ブレーキなどのADAS(先進運転支援システム)機能の義務化も求められることになりそうだ。となると、安全機構の「安全性の高さ」を売りに、大きな価格差を設けるのは難しいのではないだろうか。

白石 ADASや自動運転機構を装備したからといって、販売価格を大幅に引き上げるのは難しいだろう。ユーザーが納得できる価格帯にしなければクルマは売れないからだ。その点、コネクテッドの方はサービスの作り方に幅を持たせやすい。他の技術やサービスをコネクテッドと組み合わせることで新しい価値を作り、さまざまな事業分野で新市場を開拓できる可能性は十分にある。

  • 1
  • 2
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報