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日本ハムの主砲・中田翔、3番からの再出発

編集委員 篠山正幸

2番に最強の打者を置く打順編成も目立つ昨今、3番だ、4番だと騒ぐところではないのだろうが、日本ハム・中田翔(28)に限ってはそうもいかない。4番といえばこの人、というくらい中心打者の伝統的なイメージを担ってきた選手。プロ初の3番での起用は低迷するチーム、本人にどんな変化をもたらすのか。

今季の中田は打撃の調子がなかなか上がらなかった=共同

プロ野球屈指の伝統を持つ巨人の公式ガイドには歴代4番の選手名と記録が載っている。2017年版では初代4番永沢富士雄(1936年)から、昨年9試合で4番を務めたルイス・クルーズまで、86代にわたる系譜をたどることができる。4番は特別なポジションであるという認識にはそれなりの伝統があるということの一例だ。

王貞治現ソフトバンク球団会長は「僕が4番を打つこともあれば、長嶋(茂雄)さんが4番を打つこともあった。3番でも4番でも意識はしなかった」と話している。長嶋さんも監督時代に「3番打者最強説」を唱えたこともあり、ONたち自身、そこまで4番にこだわった形跡はない。

先発したときは4番が指定席

4番の特別視は一体どこから始まったのか、不明な部分もあるわけだが、ともかく日本球界では打線の要として、特別なポストととらえられてきたのは確かだ。

中田は2012年に栗山英樹監督が就任してからはずっと、その役目を担ってきた。代打にとって代わられることもあれば、事実上の成績不振でラインアップからはずれたこともある。しかし先発したときは4番。それはほかの誰も侵すことのできない指定席だった。

今季の中田は、同じくワールド・ベースボール・クラシック(WBC)出場組の筒香嘉智(DeNA)とともに、なかなか調子が上がらなかった。

必ずしもWBCの影響というわけではないにしても、シーズン前に日本シリーズ、あるいはそれ以上の重圧がかかるひと山を越えてきたことを考えれば、心身の疲労に想像以上のものがあったとみていい。

交流戦、5連敗中だった日本ハムは13連敗中だった巨人を9日から、地元札幌ドームに迎えた。その初戦、巨人のマイルズ・マイコラスから1点しか奪えず、敗れた。4番の中田は1安打をマークしたものの、4試合連続で打点なし。

この時点で打率2割2分8厘。それでも打点さえ挙げられれば、務めを果たしたことになるわけだが、28打点。リーグトップの柳田悠岐、アルフレド・デスパイネ(ともにソフトバンク)がその時点で52打点をたたき出し、僚友のブランドン・レアードも44打点を稼いでいたところからすると、寂しい数字だった。

8日の広島戦で、中田は通常のフリー打撃はせず、キャンプでやるようなロングティーにとりくんだ。トスされた球を外野スタンドに放り込む。緩い球だけに飛ばすのは難しいが、中田は軽々と"本塁打"になる。だがそれが試合では出ない。

八回に逆転打を放ちベンチに向かってガッツポーズする中田=共同

試合後「もう(ロングティーも)やらない」と、万策尽きたような話をして車に乗り込む姿が、陥った淵の深さを物語っていた。

栗山監督がついに動いた。10日の巨人戦で中田は3番に入り、レアードが4番に座った。

これが当たることになる。七回に巨人に1-2と逆転されて迎えた八回。1死二、三塁で中田に回ってきた。マウンドには抑えのスコット・マシソン。追い込まれるまではスライダーに的を絞っていたというが、カウント2-2となってから「なぜかわからないが、ストレートだと思った」といい、直球をガツン。打球が左中間で弾み、決勝の逆転2点二塁打となった。

最も可能性の低い選択肢が…

栗山監督の胸の内では中田の打順を動かすにしても、3番は最も可能性の低い選択肢だったという。だが、これが大正解。翌11日の試合でも安打こそ出なかったが、第4打席で中堅に鋭いライナーを飛ばした。復調の兆しはみえてきた。

連敗を受け、栗山監督は「チームを大きく動かすときがきた」と話していた。空気を一新することで、浮上のきっかけを求めたようにもうかがえた。中田が早速その采配に乗り、反転攻勢への足場をつくった。

ただ栗山監督も打線の巡りがいいからといって、このオーダーを続けるつもりはなさそうだ。4番復帰については「考える」とし、タイミングを計ることになるようだ。

栗山監督には「中田の4番」への思い入れがあるようだ=共同

発想の自由な栗山監督は特定の4番論といったものに縛られてはいないが「中田の4番」については就任以来の経緯もあり、やはり思い入れはあるようだ。3番起用の前後にじっくり中田と話し合ったとされることからも、気遣いのほどがうかがえる。

10日の殊勲打の前、中田の目には大型スクリーンに掲示されたファンの応援メッセージが飛び込んできたという。「4番でも3番でもやることは一緒」

確かにその通りで、チームの勝利に貢献できれば打順は関係ない。本人もそのつもりで打ったというのだが、日本の古典的な4番像の重圧に、どんなに振れていないときでも黙々と耐えて打席に立つ姿こそが、中田の味だった。勝った、負けた、あるいは打った、打たなかったということとはまた別の世界がある。指定席復帰が待たれるところだ。

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