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実は幻想、iPhoneの「日本製部品頼み」

裏読み「アップル経済圏」(下) 大槻智洋 TMR台北科技代表

<訂正>22日6:30に公開した「実は幻想、iPhoneの『日本製部品頼み』」の記事中「日立グローバルストレージテクノロジーズ[現在の米シーゲイトテクノロジー(Seagate Technology)]」とあったのは「[現在の米ウエスタンデジタル]」の誤りでした。

iPhoneなどのアップル(Apple)製品には、日本企業の部材ばかりが使われている――。こうした認識を持っている日本人は少なくない。

アップルの「iPhone 7」

しかし、これはもはや"神話"だ。確かにかつて、携帯音楽端末「iPod」では日本企業の部材の採用も目立ったが、今では台湾企業が強く、中国企業も躍進している。

アップルとの直接取引という"業界地図の一等地"を得た企業は、世界でどのように分布しているのか。アップルが毎年公開している、部材供給企業リスト、いわゆる「サプライヤーリスト」から読み解く。

常に台湾 > 米国 > 日本

アップルに部材を供給しているサプライヤー数を本社の国・地域別に調べると、最大勢力は常に台湾企業である。図1に、同社がサプライヤーリストを公開し始めた2012年から2016年までの各年別の実績を示す。国・地域別の順位はこの5年間まったく変わっていない。

過去5年通算でも同じだ。アップルサプライヤーとして掲載された269社中、台湾企業は71社、米国企業は60社、日本企業は55社である。

図1  本社の国・地域別に見たアップルのサプライヤー数,。2012年から台湾→米国→日本の順位は変わっていない

日本企業がサプライヤーの最大勢力だった時期について、明確なデータはない。ただし10年以上前のiPodシリーズは、そうだったと推測される。東芝や日立グローバルストレージテクノロジーズ[現在の米ウエスタンデジタル]のハードディスク装置、ソニーのリチウムポリマー電池、オプトレックス(現在の京セラディスプレイ)の液晶パネルなどが採用されていた。こうした大型部品の採用実績が"神話"を生み出したのだろう。

しかし、それも今は昔。台湾企業がトップの座を占めている。台湾企業の強みの一つは、製造の現場とコミュニケーションが取りやすいことだ。鴻海(ホンハイ)精密工業(通称:フォックスコン、Foxconn)など台湾系の電子機器受託企業(EMS/ODM)企業が、アップルから製造案件をほぼ独占的に受注しているからだ(表1[注]

社名供給物
英語中国語
Compal Electronics仁寶2015年からタブレット
Foxconn
(Hon Hai)
鴻海スマートフォン、タブレット、筺体などの部材も供給
Foxlink
(Cheng Uei)
正崴アクセサリー(周辺機器)、コネクターなどの部材も供給
Inventec英業達音楽プレーヤー、Bluetoothイヤホン
Pegatron和碩スマートフォン、タブレット
Quanta Computer広達ノートパソコン、Apple Watch
Wistron緯創2015年から旧世代スマートフォン、2017年インド生産開始

これらEMS/ODM企業傘下の一部の部材メーカーは、親会社とは別口座でアップルと取引している。つまり、間接納入より難しいアップルへの直接納入を実現した。こうした部材メーカーは、親会社を通じてアップルのニーズを直接に近い形で把握できる。この立場が大いに役立った。

具体的には、鴻海系ではコネクターの台湾FITホントン(FIT Hon Teng、鴻騰)、プリント基板の中国ゼンディン(Zhen Ding Technology、ZDT)が、台湾ペガトロン(Pegatron、和碩)系ではWi-Fiモジュールなどを製造する台湾アズールウェーブ(Azurewave、海華)が、それぞれ直接取引を実現している。このほか鴻海関連では、子会社化したシャープと、シャープの持ち株比率が44%のカンタツがアップルに直接納入している。

[注]例外は、米国とシンガポールに本社を持つフレクストロニクス(Flextronics)やアイルランドPCHインターナショナル(PCH International)が、ごく一部の製品を米国などで生産していること。

機構部品系が半導体系よりずっと多い

アップルと直接取引する台湾勢の中で、実は半導体企業は少ない。2016年はアップルが設計したアプリケーションプロセッサーの製造前工程を受託する台湾TSMC(台積電)と、同後工程を担うASE(日月光)の2社だけだった。

これはアップルが米国勢の半導体を重用しているためだ(図2)。しかしながら、米国半導体メーカーの大半は、TSMCやASEに製造を委託している。

図2 本社の国・地域別に見た半導体サプライヤー数。2016年に米国勢ではGPUのエヌビディア(NVIDIA)が消えて、マイコン開発のマイクロチップ(Microchip)が加わった

あまり知られてはいないが、台湾には精密加工技術を用いた機構部品のメーカーが多い(表2)。これらは多くの場合、材料や工作機械を手掛ける日本メーカーの大口顧客である。アップルと直接取引した機構部品メーカーは、過去5年に10社。世界市場で大きな地位を占める台湾のプリント基板メーカーは、過去5年に9社だ。

社名供給実績供給物・
サービス
英語中国語20122013201420152016
Asia Vital Components (AVC)奇鋐放熱機構部品
Auras双鴻×××放熱機構部品
Catcher可成筺体
Coxon谷崧××筺体
Hama Naka Shoukin浜中松琴ネジ
Jarllytec兆利×××ヒンジ
Shin Zu Shing (SZS)新日興ヒンジ
Sunon Electronics建準電機×××放熱機構部品
Taiwan Hodaka台灣穗高×××筺体加工
Triotek鈦鼎×××メッキ鋼板
大槻智洋(おおつき・ともひろ)
ベンチャーキャピタルで投資や経営支援に従事した後、2001年より日経BP社で日経エレクトロニクス記者となる。カメラ技術やEMS/ODM産業の分析記事で高評価を受ける。2011年に台湾でTMR台北科技を設立。コンサルティング会社や電子関連企業に調査サービスを提供するほか、メディアに寄稿している。

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