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解剖「ケイレツリスト」 アップル経済圏の栄枯盛衰
裏読み「アップル経済圏」(上) 大槻智洋 TMR台北科技代表

(1/3ページ)
2017/6/15 2:00
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 米アップル(Apple)が毎年公開している「サプライヤーリスト」という“企業名簿”がある。同社に部材を供給する業者(サプライヤー)の、いわば“ケイレツリスト”である。そこに名前が載ることは、電子機器の世界で“業界地図の一等地”に入居したに等しい。

アップルのロゴを背景に製品発表するティム・クックCEO(最高経営責任者)
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アップルのロゴを背景に製品発表するティム・クックCEO(最高経営責任者)

 アップルは2016年度にiPhoneだけで2億1600万台(世界出荷2位でシェア14.4%)を出荷し、全社の売上高が2156億米ドル(2016年9月24日までの1年間、1ドル110円換算で約24兆円)に達する。さらに、部材に対するQCD(品質・コスト・納期)はことさらに厳しい。それ故、選ばれたサプライヤーは「優良」のお墨付きを得る。

 連載「裏読み『アップル経済圏』」では、著者が5年分(2012~2016年)のサプライヤーリストを集計し、取引内容などを補足した結果を3回に分けて報告。消費者からは普段見えないアップル経済圏の「裏側」を分析することで、世界の部材産業における日本企業の立ち位置や、日・台・中の部材メーカーの動静、栄枯盛衰を浮き彫りにする。

 アップルは2012年以来、毎年3月頃にサプライヤーリストを公開している。主目的は、コンプライアンス(法令順守)の強化。外部機関が、アップルとサプライヤーが社会規範を守っているか、チェックしやすくすることだ。同様なリストを公開している日本企業には、ファーストリテイリングがある。

アップルが毎年公開しているサプライヤーリスト
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アップルが毎年公開しているサプライヤーリスト

 サプライヤーリストには社名と事業所の住所が記載され、供給内容は書かれていない。掲載されている業者は約200社。その調達額は全体の97%以上を占める。商社などを通じてアップルと間接的にのみ取引している企業は、このリストに載らない[注]。なお、2012年からの5年でサプライヤーリストに名を連ねた企業は合計で269社、本社所在国・地域は17、事業所所在国・地域は37に及ぶ。

 昨今、アップルのような民生機器メーカーが台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業(通称:フォックスコン、Foxconn)のようなEMS/ODM(設計製造受託)企業に、製品の組み立てを依頼するのは“常識”になっているが、アップルは他社よりも多く部材を自ら調達し、EMS/ODM企業に供給している。調達に要する手間や費用は増えるものの、「部材の最新事情を把握すればサプライヤーを制御して所望の水準で製品を量産出荷しやすくなる」と信じているためだ。

■カンタツが「1等地入り」した理由

 まずは、日本企業の直近の状況を見てみよう(表1~表2)。

 2016年に初めてリスト入りした企業は、日本電波工業、カンタツ、東レインターナショナル、日本特殊陶業の4社だ。いずれも、かつてはアップルに間接納入をしていたとみられる。

 一方、2015年のリストにはあったが、2016年にはなかった日本のサプライヤーは以下の3社だ。シチズン電子(液晶バックライト)、カネカ(熱拡散シート)、スリーボンド(接着剤)である。

 日本電波工業、カンタツなど“新顔”4社が直接取引に切り替わった理由は一様でないが、レンズメーカーのカンタツに関してはアップルの明確な意志がある。既に直接取引している、“ある特定サプライヤー”の競合に育て上げ、一層の値下げを迫れる状況を作ることだ。

供給内容
の分類
社名詳細、補足



アルプス電気レンズ用モーター、地磁気センサー
トーキンタンタルコンデンサー
京セラ水晶振動子、イメージセンサー用パッケージ材
ミネベアミツミバックライト、レンズ用モーターなど
村田製作所セラミックコンデンサー、SAWフィルター、Liイオン2次電池(ソニーから買収予定)
日本電波工業水晶振動子
パナソニックインダクター、グラファイトシート、フィルムコンデンサー
シャープ液晶パネル、カメラモジュール、指紋センサーのモジュール加工
SMKiPadドックなど
スミダコーポ
レーション
インダクター
太陽誘電インダクターなど
TDKインダクター、レンズ用モーターなど

表1 2016年のサプライヤーリストに掲載された日本企業(部材総合)。供給内容が多岐にわたる企業や受動部品メーカーを記した。供給内容は筆者の取材に基づく

供給内容の分類社名詳細、補足供給内容の分類社名詳細、補足
材料旭硝子――機構部品古河電工放熱機構部品
ダイキンフッ素コーティング剤日本電産振動モーター
デクセリアルズ異方性導電膜東陽理化学研究所筺体加工
ポリマテック樹脂部品銭屋アルミニウム
製作所
筺体加工
住友化学――半導体日本特殊陶業パッケージ材
東レインターナショナル――ローム電源IC
UACJ古河スカイと
住友軽金属が源
ソニーイメージセンサー
ディスプレージャパンディスプレイ――東芝フラッシュメモリー
日亜化学LEDプリント基板フジクラフレキシブル基板
日本写真印刷タッチセンサーイビデンIC基板
日東電工ITO日本メクトロンフレキシブル基板
豊田合成LED住友電工プリントサーキットフレキシブル基板
ツジデン光拡散フィルムコネクター第一精工――
音響フォスター電機イヤホンヒロセ電機
カメラカンタツレンズ日本航空電子工業

表2 2016年のサプライヤーリストに掲載された日本企業(その他)。2016年にはなかった日本のサプライヤーは、シチズン電子(液晶バックライト)、カネカ(熱拡散シート)、スリーボンド(接着剤)

[注]近年買収されたり、経営の独立性が高かったりする企業は、独立してカウントしている。その対象企業は「TDK傘下の香港ATL(新能源)、米インベンセンス(Invensense)」「米ケメット(Kemet)傘下のトーキン(旧NECトーキン)」「ルネサスエレクトロニクス傘下の米インターシル(Intersil)」「米アナログデバイセズ(Analog Devices)傘下の米リニアテクノロジー(Linear Technology)」「台湾ASE(日月光)傘下の台湾USI(環鴻)」

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訂正>15日6:30公開の「解剖『ケイレツリスト』 アップル経済圏の栄枯盛衰」の記事中「逆にコネクターの米TE コネクティビティ(TE Connectivity)は2016年にリストから消えた」とあった部分は事実と異なる点があったため削除し、表に注記として「[注]TE Connectivityは2016年に回路保護製品部門を他社に売却したのでリストから外れた」を加えました。表中にある米TE Connectivityの提供内容の分類で「コネクター」とあったのは「回路保護製品」の間違いでした。(2017/6/24 9:00)

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