2018年10月22日(月)

「高さ世界一」 日本の先行くカナダ18階高層木造

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2017/6/23 6:30
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日経アーキテクチュア

カナダのバンクーバーに、木造を多用した高層ビルが完成した。混構造ではあるものの、柱や床といった主要構造材に木を用いた。単純な構造を採用して、横展開が容易なビルに仕上げている。

主要構造に木材を多用した18階建ての高層ビル「ブロックコモンズ」の建設が、終盤を迎えている(図1)。主要構造に木材を利用したビルとして実現した高さ58.5mは、世界一の水準だ。カナダのバンクーバー市内にあるブリティッシュコロンビア大学(UBC)に建設中の学生寮で、2017年6月から供用を開始する。延べ面積1万5115m2(平方メートル)の学生寮では、約400人の学生が生活できる。

図1  工事終盤に差し掛かったブロックコモンズの様子。東側から見る。柱や床に木材を用いていることが分かる。2016年8月に撮影(写真:KKLaw、naturally:wood)

図1  工事終盤に差し掛かったブロックコモンズの様子。東側から見る。柱や床に木材を用いていることが分かる。2016年8月に撮影(写真:KKLaw、naturally:wood)

この事業は、カナダの天然資源省が2013年に実施したコンペを経て進められている。「マスティンバー」と呼ぶ大型の木質材料を高層建築に活用するという要件で募集したコンペで、北米の森林資源の市場開拓とCO2(二酸化炭素)の固定による地球環境保全の狙いがある。

建築設計はアクトン・オストリー・アーキテクツ、構造設計はFast+Eppが、それぞれ担当した。いずれもバンクーバーに拠点を置く事務所だ。さらに、欧州の高層木造建築の設計で実績を積み重ねてきたヘルマン・カウフマンZT社がアドバイザーの役割を担った。

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国が支援する事業という点からも分かるように、このプロジェクトでは汎用性が求められた。つまり、複製や応用が容易な建物を実現する必要があったのだ。

■収縮を考慮して床を設置

図2  木造の躯体(くたい)を立ち上げる前段で、RC造のコアを建設する風景。2016年4月に撮影。火災時の避難経路となるだけでなく、風や地震による水平力を負担する(写真:ActonOstryArchitects&UniversityofBritishColumbia)

図2  木造の躯体(くたい)を立ち上げる前段で、RC造のコアを建設する風景。2016年4月に撮影。火災時の避難経路となるだけでなく、風や地震による水平力を負担する(写真:ActonOstryArchitects&UniversityofBritishColumbia)

木材を多用するうえで、構造材としての利用は効果的だ。ただ、高層建築の構造材として利用するには、法令で規定された耐火性能を満たす必要がある。ブロックコモンズが立つブリティッシュコロンビア州では、純粋な木造で7階建て以上の建物を建設することは極めて難しい。このプロジェクトでは、比較的容易に実施できる混構造を採用した。

基礎、1階の柱、2つの階段室であるコアを鉄筋コンクリート(RC)造で構築(図2)。コア部分は耐火性能の確保だけでなく、地震や風による水平力を受け持つようにした。

一方、2階から17階の柱にはベイマツによる集成材を、床には5層構造のCLT(直交集成板)を用いている(図3、図4)。

図3  2~17階部分は柱と床を木材で施工した。ベイマツ集成材の柱は軽いので、人力での施工が可能だ。2016年7月に撮影(写真: PolluxChung、SeagateStructures)

図3  2~17階部分は柱と床を木材で施工した。ベイマツ集成材の柱は軽いので、人力での施工が可能だ。2016年7月に撮影(写真: PolluxChung、SeagateStructures)

図4 格子状に配した柱に合わせて、CLTパネルを設置する様子。建物の建設に用いる木材は、施工当日に必要な量だけを現場に搬入した。2016年7月に撮影(写真: PolluxChung、SeagateStructures)

図4 格子状に配した柱に合わせて、CLTパネルを設置する様子。建物の建設に用いる木材は、施工当日に必要な量だけを現場に搬入した。2016年7月に撮影(写真: PolluxChung、SeagateStructures)


このCLTはトウヒとマツ、モミを用いたSPF材でつくったものだ。そして、主に26.5cm角の柱を2.85×4mのグリッドの頂点に配置して、その上にCLTの床を載せるシンプルな構造を採用(図5、図6)。同種の建物を簡単に設計できるような格好に仕上げた。

図5 シンプルな構造を選択して、作業性を向上させるとともに、同様の建物の設計を実践しやすくした。2016年8月に撮影(写真:KKLaw、naturally:wood)

図5 シンプルな構造を選択して、作業性を向上させるとともに、同様の建物の設計を実践しやすくした。2016年8月に撮影(写真:KKLaw、naturally:wood)

図6 耐火性能を得るための処理を施す前の建物は、木質感にあふれている。2016年8月に撮影(写真:StevenErrico、naturally:wood)

図6 耐火性能を得るための処理を施す前の建物は、木質感にあふれている。2016年8月に撮影(写真:StevenErrico、naturally:wood)


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訂正>6月23日公開の「『高さ世界一』 日本の先行くカナダ18階高層木造」の記事中「ブロックコモンズでは、合計2233m3(立方メートル)の木材を用いる。木材利用によって削減できるCO2の排出量は243万2000トンに及ぶ」とあったのは「2432トン」の誤りでした。(2017/10/23 19:19)

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