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中古住宅、品質規格で安心感 統一基準で欠陥チェック

中古住宅に雨漏りなどの欠陥がないか確認できる品質規格が広がってきた。建築の専門知識がない買い主にとって、こうした「お墨付き」は不安の解消につながる。大手住宅メーカー10社が共同で手がける「スムストック」など民間の業界団体の取り組み実績が伸びているほか、国が関与して新しく公的な規格を立ち上げる動きも出ている。

「建物は築25年と感じないほどきれい。品質規格に適合しているとの説明を仲介会社から聞き、安心した」。会社員のAさん(41)は2年前、福岡市内に中古の一戸建てを購入した。

間取りは6LDKで、子どもが3人いるAさん一家にとっても十分な広さ。新築なら土地を含め5000万円はしそうだが、約3300万円で手に入った。

割安な中古住宅を探す人が増えている(図A)。不動産流通経営協会(FRK、東京・港)によると、2015年の取引数は推計約55万3600戸と前の年より7%増えた。新築物件の供給が、節税目的のアパートを除き頭打ちになっているのとは対照的だ。

その一方で中古住宅は品質をめぐるトラブルが少なくない。住宅リフォーム・紛争処理支援センター(東京・千代田)が応じた電話相談は15年度に930件。重大な欠陥かもしれない「雨漏り」だけで193件あった(図B)。

不安を解消してもらおうと業界がアピールするのが品質規格だ。冒頭の例でAさんの購入物件が認定を受けていたのがスムストック規格(表C)。積水ハウス大和ハウス工業など大手住宅メーカー10社が統一基準を設ける。

過去に自社で施工した一戸建て物件について、売り主からの依頼を受けて検査。品質を認定したうえで、系列の不動産会社が仲介して売りに出す。新耐震基準を満たし、メンテナンスの履歴が残る物件が対象だ。

この仕組みを用いて取引されるのは年間1600戸ほど。ここ3年間で倍増し、10社施工分の中古取引の1割を超える。中古物件の品質維持で信頼を得るのは住宅メーカーにとっても重要。古くなっても査定価格が安定していれば、新築の営業上も有利だ。

マンション向けも

規格認定を受けて築20年の一戸建てを売った東京都のBさん(84)は「愛着のある家をしっかり査定してくれた」と話す。10年目に約150万円をかけて補修しており、建物に約600万円の価値が認められた。

中古マンション向けにも品質規格がある。リノベーション(大規模な改修)事業を手がける企業が集まるリノベーション住宅推進協議会(東京・渋谷)が作成。インテリックスや大京穴吹不動産などが加盟する。

給水管の水圧が適正か、電気配線に正しく電気が流れているかなどを検査する。再生マンションは見た目が新しくても、給排水管や分電盤といったインフラ設備が古くなって十分機能しないリスクがある。

設備は新品に交換したのかどうかを報告書にまとめて購入希望者に開示する。1戸を対象とする「R1住宅」と、耐震性を含めて1棟全体をチェックする「R3住宅」は認定実績が合計で年間約5千件。「きちんと検査・改修している物件だとアピールできる」(同協議会)という。

中古住宅を選ぶ際に安心を得るには他にも選択肢がある。大手の不動産仲介会社には一戸建てやマンションを対象に提供する独自の保証サービスがある。

中古住宅で欠陥が後に見つかった場合、民法上は売り主が修繕責任を負う。瑕疵(かし)担保責任という。ただし売り主が個人である場合、責任を負う範囲は限られるのが一般的だ。

例えばFRKの標準契約書で欠陥とは「雨漏り」「給排水管の故障」「シロアリ害」「主要構造部の腐食」の4つ。期間も引き渡し後3カ月しかない。

購入希望者からすれば不安が残る。そこで東急リバブル、三井不動産リアルティといった大手仲介会社は自社サービスで検査し、条件を満たす物件は独自に2年間、修繕を保証する。引き渡し後3カ月の売り主責任を肩代わりし、さらに保証期間を延ばすことで買い主の安心につなげている。

売り主がプロである不動産会社の場合は、瑕疵担保責任の期間は2年以上で、欠陥の対象も限定されない。ただし現実には、不具合があって修繕を求めても「経年劣化にすぎない」などと応じてもらえないことがある。欠陥住宅をつかまされないためにも品質規格などは安心材料になる。

国も関与の動き

中古住宅の欠陥に備える保険があることも知っておこう。「既存住宅売買かし保険」だ。検査で合格すれば契約が可能。柱や梁(はり)といった構造部分、給排水管などについて修繕や仮住まいの費用を一定期間、保証してもらえる。

契約数は個人間売買で16年度に約1700件。多くは買い主が申し込んだものだ。まず住宅瑕疵担保責任保険協会(東京・港)のサイトで検査機関を探し、売り主の了解が得られれば検査の手続きに入れる。スムストック規格の認定物件は今春から、検査なしでも加入できるようになった。

国も統一規格の立ち上げに動いている。国土交通省が今夏をめどにスタートする「安心R住宅(仮称)」は、新耐震基準を満たし、構造上の不具合がない中古住宅が対象。リフォーム工事の情報も買い主が検討しやすい形式で開示する。こうした統一規格が普及すれば、中古住宅の買い主の選択肢はもっと広がりそうだ。

(表悟志)

[日本経済新聞朝刊2017年6月3日付]

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