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加計学園問題、政府の説明「納得できない」8割

第322回解説 政治部次長 佐藤賢

学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設に関する文書が政界に波紋を広げています。文書の真偽を巡り、政府と前川喜平前文部科学次官(62)の見解が真っ向から対立する事態になっています。

どちらの説明に納得できるのか。電子版の読者に聞いたところ、政府の説明に「納得できない」は81.4%で、「納得できる」の18.6%を大きく上回りました。

前川氏の説明に「納得できる」は74.1%で、「納得できない」の25.9%より多かったです。この調査から見ると、読者の不信感は政府の方により多く向いているようです。

問題となっている文書は、安倍晋三首相の友人が理事長を務めている加計学園の新学部新設に関するものです。加計学園は政府の国家戦略特区に指定された愛媛県今治市で大学の獣医学部新設を計画しています。

文書は2016年11月に特区の諮問会議で獣医学部の新設要件が決まる前に内閣府が文科省に最短のスケジュールで新設を実現するよう促したことが記されています。「官邸の最高レベル」「総理のご意向」などと書いてあります。民進党が入手し、国会で示しました。

前川氏は5月25日、都内で記者会見し「確実に存在した」と証言しました。30日には、16年9月に面会した和泉洋人首相補佐官から「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」との趣旨の発言があったことを明らかにしました。

一方、首相は5月29日の参院本会議で「いずれのプロセスも関係法令に基づき適切に実施しており、圧力が働いたということは一切ない」と明言しました。文書の有無に関しては「文科省で調査をした結果、該当する文書の存在は確認できなかった」と指摘しました。

和泉首相補佐官も前川氏が指摘した自身の発言について「言った記憶はない」と否定しました。

どちらがウソをついているのでしょうか。政府の説明に「納得できない」と答えた読者の意見を見てみます。

「前事務次官の発言により、政府による介入があったことは明白と考える」(48歳、男性)

「完全否定ばかりではなく、もう少し再調査もしたうえで分かりやすく説明を」(64歳、男性)

前川氏の発言を完全に信じ切れるというわけではないものの、政府の説明が不十分との意見が目立ちました。「証人喚問や再調査、文部科学省や内閣府のパソコンの削除データの調査など、できることを拒む姿勢がすでに真実を物語る」(55歳、女性)。政府が役所の末端に至るまで徹底した調査をしないと、逆にやましいことがあるのではないかと疑念を抱く意見は消えないでしょう。

回答者の内訳
回答総数11019
男性91%
女性9%
20代以下2%
30代5%
40代14%
50代25%
60代36%
70代16%
80代以上3%

政府の説明に「納得できる」とする人の声はどうでしょうか。61歳の男性は「前川氏の個人的な恨み言に政治が付き合う必要はない」とコメントしました。

前川氏は16年6月に事務次官に就任しましたが、文科省の組織的天下り問題で今年1月、引責辞任しました。「当時は責任者として自ら辞める意向を全く示さず、地位にしがみついていた」(菅義偉官房長官)との証言もあります。こうした裏事情が絡み、政府の方が信用できるとの見方になっているようです。

前川氏の説明を「納得できる」と答えた人は全体の4分の3に上りました。どんな理由でしょうか。

「記者会見に弁護士を伴って現れ、証人喚問にも応じると言っており、覚悟の程がうかがえる」(65歳、女性)

「天下り問題の遺恨はあったとしても、わざわざ会見を開き、証人喚問にも応じると言っているのは相当な覚悟と思われる」(57歳、男性)

調査からは、おおむね前川氏の記者会見は好意的に受け止められた傾向がうかがえます。

前川氏の説明を「納得できない」とし、懐疑的な目で見る人もいます。「退職したら、在職時に知り得た情報の守秘義務はないのか」(60歳、男性)。国家公務員法100条は、公務員に「守秘義務」を退職後も課しています。

前川氏の25日の記者会見の発言への疑問もありました。前川氏は「出会い系バー」に通っていたと報じられたことについては「行ったことは事実」と認めたうえで、目的を「実地の視察調査だった」と説明しました。53歳の女性は「風俗通いを『実地調査』と言う人物は信用できない」と指摘しました。

改革に抵抗は付き物です。岩盤規制にドリルを入れて特区で突破口を開いたことは評価すべきです。前川氏が記者会見で「行政がゆがめられた」と言いましたが、それこそが特区の狙いであり、違和感を覚えます。ポイントは、獣医学部の新設計画をめぐる手続きで、政府が不当に便宜を図ったのかどうかでしょう。

文書が本物か偽物かという論点だけでなく、官僚や首相を取り巻く政治家が悪い意味で「忖度」(そんたく)したのかどうか。手続きのプロセスで不透明感はなお拭えず、政府は丁寧に説明を尽くさなければ国民の理解を得られません。前川氏ら関係者の証人喚問などを通じて真相を明らかにする必要があります。

安倍内閣の支持率は26.7%で、前回調査の52.1%から25.4ポイントも激減しました。12年12月の第2次安倍政権の発足以降、最低の水準に落ち込みました。

急落の背景には、加計学園問題や、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案の衆院での強行採決が影響しているとみられます。

日本経済新聞社とテレビ東京が5月25~28日に実施した定例の世論調査では、内閣支持率は56%で、4月と比べて4ポイント下落しました。クイックVoteの調査は世論調査とは異なり回答者に偏りがあり、全国の有権者の縮図といえるデータ標本とはいえません。とりわけ加計学園問題で政府に不満を持つ多くの方がアンケートに応じてくださったことで、異例の低支持率につながった可能性があります。

「安倍1強」といわれた安倍政権に変調の兆しが見えるのか。加計学園問題の行方とともに、次回の内閣支持率が注目されます。

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