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ボーナスの得する使い方 もらう楽しみを形に残すには

いまさら聞けない大人のマネーレッスン

NIKKEI STYLE

こんにちは。経済エッセイストの井戸美枝です。

6月といえば、夏のボーナスですね。日本の会社の夏と冬のボーナスは、井原西鶴の『世間胸算用』に出てくる、お盆と暮れの「節季払い」が起源ではないだろうかと思っています。昔は掛けで品物を買い、盆暮れにまとまったお金を渡して精算していたのですね。

4月24日付の日本経済新聞朝刊に今夏のボーナス予測が掲載されていました。それによると、民間企業のボーナス支給総額は前年比2.9%増の15兆1000億円。2001年夏以来16年ぶりの高水準になるとのこと。パートから正社員への切り替えが進み、ボーナスの支給対象者が増えたことが主な要因とみられています。1人あたりの支給額も0.5%伸びて、2年連続の増加になる見通しです。

会社にお勤めの方はきっと楽しみにしていらっしゃるでしょう。買い物や旅行などに使うのもよいでしょう。ただ、ついつい使い過ぎてしまって「このままでよいのだろうか」と不安になった……。そんな経験はありませんか?

今回はボーナスをもらった喜びを形に残し、後悔しない使い方をいくつかご提案しましょう。

保険料は一括で支払って得をしよう

提案その1は、「保険料を年払いで支払う」ことです。

ボーナスの使い道としては地味な感じがしますが、民間の保険に加入している方は1年分の保険料を一括で支払うとお得です。

生命保険や医療保険の保険料は、毎月支払う「月払い」が一般的ですが、他にも「半年払い」「年払い」「ボーナス併用払い」「一時払い」などの支払い方法が選択できます。

「年払い」を選択すると、ほとんどの場合、毎月支払うよりも保険料が安くなります。どれぐらい割引されるかは保険商品や保険料によって違いますが、「年払い」を選択すると1年分の保険料が11.6~11.7カ月分になるケースが多いですね。

例えば、毎月の保険料が1万円の場合、「月払い」だと年間の保険料は12万円。「年払い」だと年間11万6000円程度の保険料になり、4000円程度おトクです。保険料を多く支払っている人ほど、年払いで支払うメリットが大きくなる傾向があります。気になる方は、一度保険会社に確認しましょう。契約済みの場合も、支払い方法の変更は可能です。

貯金する派は、少しでも金利の高いところへ

提案その2です。

ボーナスは将来のために貯金する、という方もいらっしゃるでしょう。そのお金、お給料が振り込まれた口座にそのままにしていませんか?

ご存じの通り、普通・定期預金の金利は低い状態が続いています。2017年5月現在、大手3行の定期預金の利回りは0.01%。100万円預けても1年間の利子は100円です(これに20.315%の税金がかかりますので、小数点以下切捨てで79円になります)。

しばらく使う予定のないお金であれば、できるだけ金利の高い銀行口座へ預けましょう。大手銀行より、店舗や窓口のないネット銀行の方が有利な場合が多いですね。地方銀行のネット支店でもキャンペーンを実施していることがあります。年0.1%の金利を目安に一度調べてみることをおすすめします。

ネット銀行やネット支店での取引は、各銀行のウェブサイトで口座開設の申し込みをします。口座を開設したら、キャッシュカードを使ってコンビニや提携銀行のATMから入金するだけ。慣れてしまえば、さほど面倒ではありません。

入金する際は、提携する金融機関の中から無料で利用できるところを選べばコストもかかりません。

積み立て投資を始めてみよう

既に十分な貯金があるのなら、ボーナスを機に「投資」を始めてみるのはいかがでしょうか。提案その3は「積み立て投資を始めてみよう」です。

投資というと「損をしそうで怖い」と抵抗感をもつ方もいらっしゃるかもしれません。そこでおすすめしたいのが「毎月コツコツ 積み立て投資」です。

どんな投資商品も価格は変動します。安いときに買って、高いときに売ることが理想ですが、それを判断することは難しいでしょう。そこで、毎月決まった額で商品を買っていくことで、価格変動のリスクを抑えようとするのが「積み立て投資」です。

例えば、毎月1万円ずつ投資商品を買うとします。最初の月の価格は、1口5000円だったとします。1万円分買うのですから、2口買うことになりますね。翌月の価格は1000円に下がっていたので10口買い、翌々月には2500円だったので4口買ったとします。

さて、3カ月で合計16口買いました。平均すると1口あたり1875円で買ったことになります。仮にいまの価格で全部売るとすると、16口×2500円=4万円ですので、1万円の利益がでます。買い始めたときより価格が下がっているのに利益が出ているということですね(価格変動は例ですのであしからず)。

最終的な利益は商品を売るときの価格によりますが、この「積み立て投資」は、購入価格を平準化する効果があります。また、何十年という大きな目線でみれば、価格は上昇傾向にあり、運用期間が長ければ長いほど有利だといわれています。

若いうちから、コツコツ積み立てていけば、預金しておくよりも大きなリターンが得られるかもしれません。

積み立て投資に向いている商品は?

この「積み立て投資」に向いている商品のひとつに、投資信託のインデックスファンドがあります。簡単に説明しておきましょう。

投資信託とは、運用会社が投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、国内外の株式・債券・不動産などに投資して運用する商品のことです。

インデックスファンドは、市場平均と同じような動きをする運用を目指すファンドのこと。ここでいう市場平均とは「日経平均株価」「TOPIX」など、いわゆる株価指数のことですね。インデックスファンドの多くは日本株式、外国株式などさまざまな投資先を商品化しています。運用管理費用が比較的安く、資金流入があるので規模が大きいことが「積み立て投資」の条件に適しています。

これらの商品は、毎月1000円程度から積み立てることもできます(運営会社によっては毎月一定額を自動的に買い付けてくれる「るいとう(累積投資)」というサービスもあります)。ボーナスを引き落としの口座に入れておいて、毎月決まった額でインデックスファンドを買い付けていく、という方法が簡単でしょう。

くわしい説明はまたの機会に譲りますが、こうした資産運用は、運用益が非課税となるNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)も活用したいところです。

毎月の赤字補填でボーナスが消える?

最後に、ボーナスは毎月の赤字の補填で消えてしまう……という方は、家計の見直しをするよい機会です。支出を見直して毎月の赤字がなくなれば、冠婚葬祭など突発的な費用にも対応できますし、貯金もできます。

支出の見直し方については前回の記事「楽々ためるには『時間』を味方に 貯蓄学の第1法則」をご参照下さい。

――まとめ――
・保険料は「年払い」で安くなる
・定期預金するなら金利0.1%を目安に探そう
・コツコツ積み立て投資を始めてみよう
・毎月の赤字をボーナスで補填している場合は、家計の見直しを
井戸美枝
 ファイナンシャル・プランナー(CFP)、社会保険労務士。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会企業年金部会委員。確定拠出年金の運用に関する専門委員会委員。経済エッセイストとして活動。近著に「知ってトクする!年金の疑問71」(集英社)「ズボラの人のための確定拠出年金入門」(プレジデント社)「定年男子定年女子」(日経BP社)など。

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