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U20日本代表、東京五輪へ求められる「野心」

サッカージャーナリスト 大住良之

東京五輪を目指す世代(2020年にU-23=23歳以下となる年代)の初めての世界への挑戦が終わった。韓国で開催されているサッカーのU-20ワールドカップ。1次リーグD組を3位で突破した日本は、ラウンド16(決勝トーナメント1回戦)でB組1位のベネズエラと対戦。0-0のまま延長まで戦ったが、延長後半に痛恨の1点を喫し、0-1で敗れた。

短期間にたくましく成長

敗れたものの、ベネズエラ戦はこのチームが大会スタートから10日間という短期間のうちにたくましく成長したことを実証するものだった。

5月21日の南アフリカ戦(2-1の勝利)、24日のウルグアイ戦(0-2の敗戦)、27日のイタリア戦(2-2の引き分け)ではすべて前半に失点し、後半盛り返すという展開だった。

失点はいずれも守備の甘さをつかれたもので、守備ラインの乱れ、マークのずれ、ロングボールへの対応の失敗など、いずれも基本的なことができずにシュートにもちこまれて失点した。

南アフリカ戦は後半に2点、イタリア戦では前・後半に1点ずつ得点した。ウルグアイ戦ではゴールこそ奪えなかったが、後半に立て続けにチャンスをつくって相手ゴールにシュートの雨を降らせただけに、試合序盤の守備の甘さが大きな課題だった。

しかしラウンド16のベネズエラ戦では立ち上がりだけでなく延長まで120分間を通じて守備の甘さによるピンチはほとんどなかった。ミドルシュートは打たれたものの、DF陣は最後まで粘ってブロックするなど、これが同じチームかと思われるほどの充実した守備を見せた。

そして守っているだけでなく、回数が多かったとはいえないが、日本らしいパス回しから何回もチャンスをつくった。

守備面で最も成長したのはセンターバックのDF冨安健洋(福岡)だろう。南アフリカ戦でオウンゴールを献上しただけでなく、イタリア戦ではバックパスを相手に奪われるなど非常にばたばたした印象があったが、このベネズエラ戦ではほぼノーミス。相手のドリブルもしっかりと止め、味方へのカバーもよく、延長戦までも戦えたのは彼の守備に負うところが大きい。決勝点のときにはマーク相手を見失ったようだったが、この大会の4試合にフル出場して大きく成長した一人だ。

もう一人、この大会で一挙に飛翔(ひしょう)したのがMF堂安律(G大阪)だ。左利きの右サイドMF。日本が記録した4得点のうち3点を決めた。

南アフリカ戦ではFW久保建英(FC東京)とのパス交換で鮮やかな逆転(決勝)ゴールを決め、イタリア戦ではMF遠藤渓太(横浜M)のクロスに飛び込んで左足のつま先で触れて1点、さらにペナルティーエリアの外からドリブルで入って3人の相手DFを抜き、日本にとって値千金(この1点で日本は決勝トーナメントに進出した)の同点ゴールを決めた。

堂安の活躍は得点だけにとどまらない。果敢なドリブルで何回も攻撃を切り開き、日本ではただ一人安定して攻撃的なパスを供給した選手となった。

昨年10月に行われたアジア予選では優勝したことで大会最優秀選手(MVP)に選出された堂安だったが、その当時のプレーは決してチームをけん引する類いのものではなかった。右のタッチラインに張り付き、パスを受けてはバックパスをするだけ。私は「まるで35歳のマラドーナ」とまで書いた。

だが今大会では、1対1の状況では果敢にドリブルを仕掛け、しかもボールを失わず、そこから何回もチャンスを生みだした。間違いなく「チームMVP」の活躍だった。

不運だったFW小川の負傷

不運だったのはFW小川航基(磐田)だ。ウルグアイ戦の20分、失ったボールを無理に奪いにいき、左ひざの大けがを負った。前十字じん帯断裂、半月板損傷という重傷だった。

小川はDF中山雄太(柏)、MF堂安とともにこのチームの「柱」の一人だった。器用とはいえないが、183センチの長身を生かして前線にポイントをつくり、ダイナミックなシュート力でこれまで多くの得点を生んできた。同じタイプのFWとしては田川亨介(鳥栖)がいたが、粗削りで小川の代わりになれなかった。

小川を失ったことは、内山篤監督のこの大会のプランを大きく狂わせたはずだ。小川と組んだFW岩崎悠人(京都)にとっても、ポストプレーヤーの小川の周囲を激しく動いてボールを拾いまくるタイプだけに、イタリア戦の前半途中からは自らが小川の役割を果たさなければならなくなり、持ち前の機動力を生かすことができなかった。

堂安が得点を量産するまでこのチームの話題を独占したのがMF久保だった。01年6月4日生まれ。ベネズエラ戦で勝っていれば準々決勝の日に16歳の誕生日を迎えるはずだったが、残念ながら15歳のまま大会を終えた。

「すでにU-17のレベルでプレーする選手ではない」。久保は本来、今年10月に世界大会に出場するU-17日本代表選手だったが、内山監督がそう言って大抜てきした。しかし結論からいえば「時期尚早」だった。

久保は南アフリカ戦の59分から出場、いきなり天才ぶりを見せつけるスルーパスで小川にビッグチャンスをつくり、72分には堂安の決勝ゴールにアシストして鮮やかな「デビュー」を飾った。しかしウルグアイ戦ではドリブルすれば追い抜かれてボールを奪われ、パスを受けようとすると自分より20キロほども重い選手たちに体をぶつけられて倒れた。

日本がペナルティーエリア付近まで攻め込む状況を数多くつくりだせる試合であれば、その天才ぶりがもっともっと発揮されただろう。しかしその前の段階でボールを預けられても、まだ成長期の体ではもちこたえられなかった。ウルグアイ戦では小川の負傷で20分から出場、ウルグアイ守備陣の暴力的な当たりにさらされ、少し気の毒だった。3年後の東京五輪で圧倒的な存在になる可能性は十分ある。しかし今回のU-20に準備ができた状態だったとは言いがたい。

この大会の他の試合を見て、多くが「インテンシティー(強度)」の高い試合であることに驚いた。身体的にも精神的にも、選手たちは90分間スプリントを繰り返し、体をぶつけて戦い続ける準備ができていた。日本と同じグループのウルグアイ-イタリア戦が、まさにそうした試合だった。そうしたサッカーに対し、日本はまだ子供っぽさが抜けないサッカーで苦しんだが、ようやく対応できるようになったのがラウンド16のベネズエラ戦だった。

世界大会上位進出への課題

できればもっと多くの試合を経験したかったが、4試合だけでも大きな経験になったはずだ。煮え切らないパスを繰り返した昨年のチームから、インテンシティーの高い相手にしっかりと守り、攻撃をつくれるようになったのは、今大会の大きな成果だったと思う。

だが、今大会の21人がそのまま20年の東京五輪まで突っ走るわけではない。フランスでは、1歳年下のU-19日本代表が5月29日から歴史ある国際大会に挑んでいる。

今大会のU-20日本代表を見ると、GKと両センターバック、そして堂安はまずまずだったが、他のポジションはかなり力が落ちるように見えた。攻撃陣だけでなく、両サイドバック、ボランチにも、もっともっと力を持った選手がそろっていなければ、世界大会で上位を目指すことなどできない。

「東京五輪」という明確で挑戦しがいのある目標がある現在の「20歳以下」の選手たち。野心あふれる取り組みに期待したい。

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