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いつも我々の一歩前に 女子サッカー・本田美登里(中)
長野パルセイロ・レディース監督

2017/6/4 6:30
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「いつも私たちの一歩前を歩いてくれた。道筋をつけてくれた」。常葉大付属橘高校女子サッカー部監督の半田悦子にとって、1学年上の本田美登里(52)はそんな存在だ。

同じ静岡県出身。小学生時代は本田の家で遊び、一緒にサッカークラブへ行って遊んで帰る。中学・高校でも日本選手権7連覇を果たす清水第八で共に戦い、1981年に結成された女子日本代表で共に1期生となり、最初の女子世界選手権(現ワールドカップ、W杯)へと挑む。

同世代で女子日本代表の高倉監督が選びたくなるような選手を育てたいと願う

同世代で女子日本代表の高倉監督が選びたくなるような選手を育てたいと願う

半田はウイング、本田はDF。世界へ出たての女子代表はまだ弱く、暴風のような猛攻を浴びた。「すごく体を張ってるな……」。本田が必死に体を投げ出し失点を食い止めるのを、半田は前線で眺めるしかなかった。

シュートの嵐も激しい接触プレーも、本田は怖がらなかった。「ケガをしても痛いというそぶりも見せない」。引退後、女子のS級ライセンス取得者第1号である本田の後を追って取得に挑めば、「男子に交じって道を開いた本田さんはもっと大変だったはず」としのばれた。半田にとって本田は常に「強い人」だ。

本田や半田、現日本代表監督の高倉麻子ら初期の代表メンバーは共に過ごした時間も長い。女子サッカーをメジャーにする希望が、かすかに目の前に開けた夜明けの時代。「絶対に先へ行く、このチャンスは逃せない」という切迫感や強い気持ちが、「なでしこ」に行き渡るメンタリティーだったと半田は振り返る。

時代は変わった。日本は2011年にW杯を優勝し、世界一を夢でなく現実としてとらえる世代が生まれた。エリートはスパイクや練習場にも恵まれる。本田は12年に20歳以下(U-20)代表コーチを務めたが、宿泊先は東京の超高級ホテル。本田にはビックリの待遇にも、後輩は驚かない。

「感謝」体現できる選手育てたい

「(環境が)当たり前になったことを感謝の言葉やプレーに変換できる選手を育てなければいけないのに、果たせてきたか」。問いは導く側へ回った自身へも向かう。「あらゆる面で『ぬるく』なったのかも」。ハングリー精神の薄れた今、違う形の原動力を植え付ける難しさも感じる。

同世代の高倉率いる代表を、長野から手助けしたい。高倉が選びたくなる選手を輩出し続けたい。高倉の理想は理解しているけれど、「違う意味のサッカー知能を備えた選手も送り出したい。ピッチに立つのは高倉本人ではないのだから」。高倉に頼らず、自分で判断し、苦境なら自然と集結して声をかけ、自分たちで打開する。本田や高倉の世代はそうしてきた。

長野の得点源の横山は欧州へ移籍する。痛恨の戦力ダウン、にも本田は泰然としたものだ。「また探して、育てればいいんです」。ないなら、作る。そうやって切り開いてきた。「前向きなエネルギーの強さ。足踏みなどしていたら、2度もチームを1部に昇格させることなどできない」。半田は今も頭が下がるばかりだ。(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊5月30日掲載〕

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