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奇人変人の才能見抜け 「プレステ生みの親」のCTO論
CTO30会議(11)

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2017/6/9 6:30
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――技術者としての能力は必要ですか。

久多良木 私はCTOに求められる基本的な資質として、何よりもエンジニアとしての卓越した技量と豊富な知識と経験に裏付けられた突破力、そして修羅場における揺るぎない戦闘力を挙げています。

 いざとなったら、自らプログラムコードや図面を書いたり、チームメンバーと一緒にプロトタイプを作ったり、手足を動かして全員を力強く牽引するくらいでないとCTOとは言えません。CTOのTはテクノロジーですから、技術のディスカッションに加われないようでは失格です。最近の大企業には、技術者としての能力が乏しい中で、研究管理ばかりしている技術トップが多いことを危惧しています。

 さらに画期的なアーキテクチャーを見いだす力がCTOには必要です。頭の中にある実現したいものを、どう創るか、どういう形にするかがアーキテクチャー設計です。これが作れないと、途中で土台から崩れ落ちる。土台となる基本的なアーキテクチャーは、きちんと技術を理解しているCTOの下で考えなければいけません。

――研究者の実力を引き出すことが目標の達成には重要だと思いますが、その時にCTOはどのような役回りをすればいいのでしょうか。

久多良木 潜在能力の高い人が、さらなる実力を発揮できるように環境を整えることもCTOの役割です。人事の評価では、そこそこ優秀な人はたくさんいます。しかし、本当に優秀な人は埋もれてしまっていることが多い。周囲から奇人変人呼ばわりされ、人事評価では必ずしも高い評価を得られないような、そんな人の中に実はすごい仕事をする人がいます。そうした人を組織の中で生かしていくことが大事です。

写真2 かつてのソニーの経営者はCTOでもありCMOでもあったと語る久多良木氏(撮影:新関雅士)
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写真2 かつてのソニーの経営者はCTOでもありCMOでもあったと語る久多良木氏(撮影:新関雅士)

 こうした奇人変人たちの才能を見抜き、思う存分活躍してもらう場を提供することこそCTOが持つべき資質の一つなのかもしれません。管理志向のマネジメントや、今あるものの延長線上でしかものを考えられない普通の人々には、なかなかその人のすごさが分かりません。しかし、「ちょっと面倒な奴だが、これをやらせたらとんでもない力を発揮する」と思う眼力と、それを自らの職責でやらせてみる度量が必要です。

 有能なエンジニアなら横で見ていて、誰がその奇人変人なのかが分かりますし、逆に世渡り上手なものの実力は大した事がない人も簡単に見抜かれてしまうものです。優秀なCTOなら、そんな組織の中の奇人変人たちを、チャンスを見つけて適材適所で活用し、思う存分、持てる実力を発揮させるべきでしょう。

 最後にもう一つ。CTOは根っからの楽天家がいいですね。まわりの人が、「この人について行ったら、何か楽しいこと、大きなことができるかもしれない」と思えるくらいのほうが、優秀な人が自然と集まり、本来の実力を発揮してくれます。

――プレイステーションを創ろうと発想したきっかけは何ですか。

久多良木 プレイステーションは1980年代後半に構想を考え付きました。当時、私が所属していたソニー情報処理研究所には、最先端のデジタル信号処理を始め、コンピューターやネットワークなどの情報処理技術を米国の大学の研究室で学んだすご腕の研究者がひしめいていました。そうした研究者の力を結集したらとんでもないことが起こせると思ったのがきっかけです。

 最先端のコンピューターテクノロジーとエンターテインメントを融合させた新たな領域、「コンピューター・エンタテインメント」を世界規模で創造したい。そんな途方もない夢でした。様々な領域のクリエイターが世界中から自律的に集まり、全員で新たなエンタテインメント・ドメインを育てる。そんなプラットホームを創りたい、というのが夢でした。

――プレイステーションの開発を始める時に最初にしたことは何ですか。

久多良木 最初にソニー中の優秀なエンジニアを一本釣りで指名しました。もちろん、実力のある奇人変人たちも含まれます。声をかけると最初は一様に戸惑いますが、大きな夢やロマンを語り始めると耳を傾けてくれました。そして、5年、10年先にできそうなことを話しながら、何が解決されたら実現するかを質問します。

 そうすると多くのエンジニアは話に乗ってきてくれました。これが解決したら次はこれが実現するよなとなれば、あとは他の人がやってしまう前に我々が真っ先に実現しようではないかと持ち掛ける訳です。このチャレンジするバーの設定に実は妙味があます。目先の頑張り目標だけでは本当に実力のあるエンジニアはおいそれと乗ってきてくれません。設定が無謀に高すぎても、どれだけそれが困難か判りますから、これも逆効果です。

 しかし、チームで頑張れば何とか最後に手が届くかもしれない高さにセットすると、猛然とチャレンジしてみようかと思い始めるものです。自分たちがやらないと、他の誰かが実現してしまうかもしれないチャンスを、みすみす手放すのは難しいものです。PS3に搭載した「Cell Broadband Engine」(ソニー、IBM、東芝が共同開発したPowerPCベースの64ビットRISCプロセッサー)の開発では、米IBMのワトソン研の異才が「One lifetime chance(一生に一度のチャンス)」」とまで言って参加してくれました。

 ソニーグループ以外にも優秀なエンジニアやチームがいれば会いに行きました。海外であっても飛んで行って話をしました。世界中の技術者とどんどんつながっていきました。ここには一切壁は作りません。ソニーにも、日本にもこだわることなく、世界のベストプラクティスであることだけを考えました。

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