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第2の千賀や甲斐は? 試されるスカウトの眼力

スポーツライター 浜田昭八

育成選手出身の選手が注目されている。ソフトバンクの甲斐拓也だ。2011年、大分・楊志館高校から育成ドラフト6位で入団した7年目、24歳の捕手。同球団の捕手陣は11年目、35歳の高谷裕亮、15年目、36歳の鶴岡慎也が中心だが、今季開幕から一軍に定着した甲斐がやがて正捕手の座を奪いそうな勢いだ。

達川コーチに鍛えられた甲斐は強肩に加え、捕球やリードに長足の進歩を遂げた=共同

その強肩には、もともと目を見張るものがあった。今季からチームへ復帰した達川光男コーチ(元広島監督、前中日コーチなど)に鍛えられて、捕球、リードに長足の進歩を遂げた。強肩にも磨きがかかり、二塁送球の動きと精度は、12球団でも1、2を争うとまでいわれるようになった。

「エリート組に勝った」

5月9日のソフトバンク―オリックス戦で、興味深い顔合わせがあった。ソフトバンクは千賀滉大―甲斐のバッテリー。オリックスは金子千尋―伊藤光だった。千賀も11年入団の育成上がり。同期の甲斐ともども、支度金300万、年俸270万円(金額はいずれも推定)で入団した。これに対して、金子は2005年当時にあった「自由枠」入団で、最高の契約金1億、年俸1500万円で入団。伊藤も08年に高校ナンバーワン捕手と評価され、同5000万、500万円で迎えられた。

結果は2-1でソフトバンクが勝利。千賀は"おばけフォーク"と恐れられた魔球を駆使して前年に12勝。すでに名は知れ渡っていたが、新顔甲斐の存在が大きく「育成バッテリーがエリート組に勝った」と、センセーショナルに伝えられた。この顔合わせの再戦は5月16日にもあったが、千賀が初回2打者と対戦しただけで背中を痛めて降板したため、今後のお楽しみということになった。

育成選手制度は05年暮れのプロ野球実行委員会で導入が決まり、翌年のドラフト会議のあとに「育成ドラフト」が実施されるようになった。支配下選手の枠は70人だが、それ以外に育成を目的にした選手を保有できる。背番号は3桁で、1軍の公式戦には出場できない。企業チームの休部、廃部が相次ぎ、行き場がなくなったアマチュア選手を救い、野球界の裾野を広げようという狙いがあった。即戦力を求め、選手育成を大学、企業に丸投げしたような格好のプロ野球界が反省したという一面もあった。

最初の育成ドラフトで巨人が獲得した山口鉄也が救援投手として大活躍、08年の新人王に選ばれた。続いて07年、巨人に入団した外野手松本哲也が快足と好守で暴れ回り、09年の新人王になった。この成果が引き金となり、腰が引け気味だった各球団が育成制度に目を向けるようになった。今では独自の育成法をとる日本ハムを除いて、全球団が育成選手を抱えている。

ソフトバンクでは左腕飯田優也が勝ちパターンの救援組に加わり健闘。内野手亀沢恭平は中日へ移籍して、重宝に使われている。ヒットを飛ばしたのはロッテ。先発に転向した西野勇士は苦戦しているが、直近3年間は抑えの切り札で頑張った。2番中堅で攻守に活躍した岡田幸文は不振に陥っているが、代打、代走、守備固めで貢献している。このほか、DeNAの"未完の大器"国吉佑樹、中日の中継ぎ三ツ間卓也も育成上がりのスター候補だ。

原口はクリーンアップを務めるまでになった=共同

変わったところでは、阪神・原口文仁、狩野恵輔がいる。正規のドラフトで入団したが、故障で戦列を離れ、長期リハビリの間に育成選手になった。回復後、改めて支配下登録された。原口は打力を買われて捕手から一塁手に転向、クリーンアップを務めるまでになった。狩野も代打要員で頑張っている。

磨けば光る原石、必ずいる

育成制度に最も熱を入れているのはソフトバンク、巨人の両富裕球団。ともに3軍を編成し、若手を刺激している。ただ、両球団ともにフリーエージェント(FA)選手や大物外国人選手の獲得に熱を入れ、山口鉄や千賀のあと、育成選手で大きなヒットを飛ばしてはいない。

スカウト網の充実で、アマ球界の情報は余すところがないほど知れ渡っている。しかし、強豪高校、大学の控え組には、磨けば光る原石が必ずいる。甲子園からはるか遠い高校球児の中にも第2の千賀や甲斐が潜んでいるはずだ。それを探し当ててこそスカウトではないだろうか。

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