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KDDI出資のロボVB、遠隔操作 触覚もリアル

KDDIはロボット関連ベンチャー、Telexistence(TX社、東京・港)への出資を決めた。TX社はネットワーク経由でロボットを自分の分身のように操れるユニークな技術を持つ。目標とするのは遠隔就労の実現。KDDIと組んで企業の遠隔就労を支援し、2020年度に50億~100億円の売上高を目指している。

「テレサV」はネットワーク経由で自分の分身のように操れる

TX社は東京大学の舘暲名誉教授が1980年代から研究を続ける、視覚や聴覚、触覚、自分の動作などをロボットに移す技術を事業化する目的で1月に設立された。Telexistence(テレイグジスタンス)は日本語で「遠隔存在」を意味する。

舘名誉教授が開発した最新のロボット「テレサV」を体験してみた。テレサVの外観は腰から上部だけの、何の変哲もないロボットに見える。しかし、対面すると印象が一変する。しぐさが妙に人間らしいのだ。握手したときに首が自然と傾くしぐさなどは、これまでの自律型のロボットには見られなかった。

それもそのはず。テレサVの動作は遠隔地にいる人間の動作そのものだからだ。テレサVの視覚や聴覚、触覚はカメラやセンサーを通じ、ネットワーク経由で離れた人間に伝えられる。逆に人間の動きもセンサーでとらえられ、テレサVが動きをまねる。

次にテレサVを操作してみた。ディスプレー装置を頭にかぶり、手や体の動きを検知する手袋やチョッキを着ける。手を上げると、テレサVもまったく同じようにした。ディスプレーにはテレサVの視点からの風景が仮想現実(VR)技術で映しだされる。テレサVの指先に搭載したセンサーを通じて、モノをつかんだ感触も伝わる。自分が"幽体離脱"してテレサVに乗り移ったかのような奇妙な体験だった。

舘名誉教授の技術に事業としての可能性を見いだしたのが、TX社の最高経営責任者(CEO)の富岡仁氏だ。前職の三菱商事でVR事業の立ち上げを目指すなかで、舘名誉教授の技術に出会った。「この技術が実現した場合、人間の移動コストや時間のコストが10倍以上改善される」と直感し、CEOに就いて事業化を担おうと決めた。

舘名誉教授の技術はロボットに乗り移ったかのような感覚になるため、繊細な作業も操縦者の経験を生かすことで可能になる。「少子高齢化に直面する日本では遠隔就労が重要。ペーパーワークでは可能になったが、(体を使う)実労働は取り残されたまま。それを解消できる」と舘名誉教授は力を込める。

遠隔就労を実現する技術は「通信以外はほぼそろってきた」(舘名誉教授)。現在、ネックとなっているのが通信の遅れだ。特に問題になるのは触覚の伝達だという。ロボットに乗り移って作業するとき、触覚の伝達の遅れがどうしても気になってしまうからだ。

ここへきて通信の遅れがわずか1ミリ秒程度となる次世代の通信規格、第5世代(5G)の商用化が見えてきた。5Gを活用すれば触覚の伝達も現実に近づく。TX社はこうした通信技術への期待もあり、KDDIへの出資を求めた。

TX社は今回、KDDIのほか、ベンチャーキャピタルなどから合わせて数億円の資金を調達したもよう。まずは17年末から実証実験を始め、18年末のサービス開始を目指す。建機メーカーや旅行会社、航空会社などが技術に興味を示しているという。20年度に50億~100億円の売上高を目指す富岡CEOの鼻息は荒い。

(堀越功)

[日経産業新聞 5月26日付]

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