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琵琶湖のアユ不漁、真犯人に外来プランクトン浮上

関西サイエンスマガジン

国内最大の湖、琵琶湖に異変が起きている。春から秋にかけて美食家を楽しませる在来のアユが歴史的な不漁に陥っているからだ。昨夏の産卵期の小雨が原因ともされるが、外来プランクトンの一種が真犯人として急浮上。関西に恵みをもたらす貴重な水源の異変を解明しようと調査が進んでいる。

「40年間、琵琶湖のプランクトンを見続けてきたが、こんなことは初めて」。滋賀県琵琶湖環境科学研究センター(大津市)の一瀬諭専門員は驚いた表情でこう話す。研究室の顕微鏡で見せてくれたのは「ミクラステリアス ハーディ」という植物プランクトンだ。12の突起を持ち、花のように開いた星形が特徴。もともとはオーストラリアやニュージーランドなど南半球に生息する外来種で、琵琶湖では3~4年前に見つかった。昨秋には大量発生し、湖内で生息する植物プランクトンの8割を占めるまで増えた。国内の湖で大量発生が確認されたのは初めてだった。

このプランクトンが注目されるのは、今年のアユ漁が記録的な不振に見舞われているからだ。滋賀県漁業協同組合連合会によると、アユの漁獲量は今年1月から4月までで約3900キログラムと、昨年同期に比べて約10分の1にまで落ち込んだ。過去最悪の水準だ。5月に入ってからは持ち直して同3分の1程度(5月17日時点)まで回復してきたものの、昨年並みに届くか予断は許さない。琵琶湖のアユは大きく成長しないものの縄張り意識が強く、国内のほかの河川では友釣りなどの放流用として重宝される。琵琶湖の不漁は全国のアユ漁にも影響を与えかねない。

一瀬専門員らがこのプランクトンこそが真犯人と疑う理由は、その大きさにある。全長は最大150マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルと、通常の植物プランクトンの3~5倍。このため植物プランクトンをエサとするミジンコが大きすぎて食べられず、個体数が減少。食物連鎖でミジンコを食べる稚鮎の減少につながったと推定される。顕微鏡で見ると、動き回る動物プランクトンより大きく、威厳を示すかのように静かにゆったりと浮かんでいた。

同センターでは毎週1回、琵琶湖下流の瀬田川で水を採取し、プランクトンの種類などを調べている。約40リットルの水をくみ上げて専門の網でこし、約1000倍に濃縮して調べる。今後は国内のほかの湖でも大量発生する可能性があり、詳しい生態の調査が望まれている。

琵琶湖の自然はナゾが多く、神秘の湖とも呼ばれる。約400万年の歴史を持つ世界で有数の古い湖で、最深部は100メートルあり、豊富な水と生物を抱える。ところが戦後の開発で護岸が築かれて砂浜が消え、最近は下水道の整備で生活排水の流入が減り有機物が不足する「貧栄養化」も懸念される。

一瀬専門員は「生物多様性が失われている」と指摘する。1970~80年代は30種類くらい生息したプランクトンは大幅に減った。プランクトンの静かな変化は、琵琶湖の恩恵を受ける関西地方の住民にとっても無関心ではいられない。

(文:竹下敦宣、写真:山本博文)

 関西にはけいはんな学研都市(関西文化学術研究都市)や神戸医療産業都市、京都大学や大阪大学などのほか、大手企業の研究機関が集積する。関西の先端技術や研究を、独自の視点で切り取った写真と文章で毎月伝える。

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