パラリンピックの風

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銀色のヘルメットの誇り マルセル・フグ(中)
車いすマラソン

2017/5/21 6:30
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マルセル・フグの愛称は、常に銀色のヘルメットでレースに臨むことから「銀色の弾丸」だ。20年来の師であるコーチのポール・オダーマット(64)から、子どものころに与えてもらったものを気に入り、同じ色をかぶり続ける。「集団の中で目立つし、明るく輝いているので」とフグ。

昨年のリオデジャネイロ・パラリンピックでも銀色のヘルメットをかぶって優勝した

昨年のリオデジャネイロ・パラリンピックでも銀色のヘルメットをかぶって優勝した

2人の関係はスイス北部の小さな市、ノットウィルで始まる。ここにパラアスリートの"虎の穴"「スイス・パラプレジック・センター」がある。病気や事故で下半身に障害を負った人がリハビリを行うところだが、国際大会も開ける本格的な陸上トラックが併設されているのが特徴だ。スイスではリハビリを終えた障害者を、積極的にスポーツへといざなう。フグもここでアスリートとしての一歩を踏み出した。

先天性の二分脊椎をもって生まれ、小さいころから車いすに乗って過ごす。「障害とともに育つのが普通のことだったから、健常者の体が欲しいと思ったことはない。そもそも健常者の感覚が僕はわからない」

10歳の時、スポーツクラブで古い陸上用車いすに乗って夢中になった。「ダイナミックでパワフルで、技術も戦術も忍耐も必要だし、もちろんスピードが好きだった」。スイス出身の著名な車いす陸上の選手に憧れも抱いた。

11歳からコーチと二人三脚

その年に出場したレースで、センターの陸上コーチだったオダーマットの目に留まる。「最初から、強くなる可能性があるという印象を持った」とオダーマットは言うから、におい立つものがあったのだろう。フグ11歳の時から、師との二人三脚が始まる。

18歳で初めて出たパラリンピックは2004年アテネ大会で、800メートルと1500メートルで銅メダル。フグが「大きなサプライズ」という結果はプレッシャーもなく、ただ楽しんだ結果だ。4年後の北京大会は一転、マラソンなど2種目でクラッシュする散々な始末でメダルなし。数週間前に学校の試験があり、満足な準備ができなかった。

プロアスリートとなって臨んだ12年ロンドン大会。前年に中長距離で4つの世界記録を出すなど絶好調だったが、金メダルには届かない。地元の声援を背景に4冠を達成したデビッド・ウィアー(英国)の後じんを拝した。「でも自分のパフォーマンスは良かったし、ウィアーが少し上回っただけ」と切り替えた。

そして昨年のリオデジャネイロ大会では800メートルとマラソンの2つで悲願の金をつかむ。「ハードワークをしたし、(トレーニングの)細かな部分が大きな違いを生んだ」とオダーマットは分析する。

リオでも銀のヘルメット姿。これまで「金メダルを目指すなら金色を」と多くの人が進言したが、フグは受け付けなかった。「金だったら大きなプレッシャーになったかも。だから銀のヘルメットで金をとる方がよかった」。師がそこまで見通したわけではなかろうが、ちょっとしたおまじないにはなっての初戴冠だった。

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊5月16日掲載〕

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