2018年10月22日(月)

AIが書くお天気原稿

2017/5/15 9:07
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気象情報会社のウェザーニューズはテレビ局に送る気象予報のニュース原稿について、独自開発した人工知能(AI)の活用範囲を広げる。これまで降水確率だけだったが、今月から気温でも採用。さらに大雨や暴風などの警報・注意報、紫外線や洗濯の指数でも使っていく。テレビ局に送る原稿のうちAIを活用する割合は現在1割で、2018年までに最大3割にする。

AIがテレビ局や番組に合わせて10通りの原稿を提案し、気象予報士らが選ぶ

AIがテレビ局や番組に合わせて10通りの原稿を提案し、気象予報士らが選ぶ

ウェザーニューズはテレビ局のアナウンサーが読み上げる天気予報の原稿を作り、民放の大手キー局や地方局など、全国のテレビ局の8割に提供している。1日に提供する原稿は1500枚。放送気象担当の気象予報士らが作っている。

作業の効率化とミス防止のため、16年から機械学習が気象予報士をサポートしている。

AIの書く原稿の品質を担保しなければならないため、まず過去1年分の原稿を読み込ませ、文章の型をおぼえさせた。そのうえで、アメダスなどのデータをもとにウェザーニューズが独自で割り出す降水確率を入力する。そしてAIが、降水確率について10通りの原稿をパソコンに示す。そのなかから放送気象担当の気象予報士がひとつ選び、テレビ局に送る。

降水確率についてAIが10通りもの原稿を作る意味は大きい。ニュースはテレビ局や番組によって求められる原稿の長さや、「です」「でしょう」などと表現が異なる。

降水確率の表現を「西日本は50%以上です」とするか「西日本は60~70%です」とするかでもわかれる。盛り込む情報の種類の多さも違う。膨大なパターンを作れるが、番組やテレビ局に合わせた最適と思われる原稿を10通り示す。

AIは同じ降水確率であっても様々な表現で違った文章を作る

AIは同じ降水確率であっても様々な表現で違った文章を作る

同社AIイノベーションセンターの萩行正嗣情報学博士は、AIが原稿を提示するときに「できるだけパターンの異なる原稿を提示するようにしている」と語る。

原稿候補の最上位にはAIが最適と判断したものを提示するが、「下位に提示する原稿は最上位とは内容の異なる原稿を提示させる」。決定をくだす気象予報士らの選択肢を増やすためだ。

AIは、提示した原稿のうち、どれが選ばれたか学習する。その学びを生かし、次の原稿作成作業から、提案する文章の精度を高めていく。作業を繰り返すほど、原稿の品質が高くなる。

以前はウェザーニューズが時間や地域ごとに予測した膨大な降水確率のデータを人間が目で見て打ち込み、原稿を作成していた。そのためデータの打ち間違いや、数値チェックなどの負担が大きいという課題があった。

放送気象運営グループの田中由佳里気象予報士は「原稿の数値チェックの負担が減った分、放送内容の提案など能動的な取り組みに時間が割けるようになった」と語る。

例えば「台風の影響で高潮の恐れがあるため、放送中に注意喚起を促した方がいいですよ」というように、人にしかできないコミュニケーションに重点を置ける。

5月から降水確率だけでなく、気温の原稿にAIを使い始めた。

気温は平年比や前日比など、過去のデータとの比較が必要になる。原稿のパターンが降水確率よりも増え、人間の手によるミスのリスクが高くなる。AI活用による効果は大きいわけだ。

今後は気象庁が発表し、同社に情報が送られてくる大雨や暴風などの警報や注意報の原稿にAIを活用する。

同社が観測した日射量や天気をもとに解析した紫外線の強さを表す指数や、天気や気温をもとに洗濯物を外に干しやすいかどうかを示す洗濯指数などにAIも活用範囲を広げ、18年夏までに2~3割に増やす計画だ。

将来は深層学習を使い、気象衛星や天気図の画像を分析して原稿に反映する技術の開発も視野に入れている。

(企業報道部 毛芝雄己)

[日経産業新聞 5月15日付]

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