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山田や筒香、中田… 不振の影にWBC?

開幕から1カ月半、球界を代表する強打者たちにようやくエンジンがかかってきた。昨季の本塁打王、DeNAの筒香嘉智は今季1号が出るまで92打席もかかった。日本ハムの中田翔は故障で一時戦列を離れ、チームの低迷の一因にもなった。

にわか普請の影響ありあり

ヤクルトの山田哲人は深刻だった。4月末までの成績は打率1割9分1厘、2本塁打、8打点。4月下旬からは26打席連続無安打とどん底を味わった。僕のような2割5分ぐらいの打者であれば2割前後でも「まぁ、そんなもんだろう」でやり過ごせる。けれども山田は2年連続で3割30本塁打を記録したハイレベルな選手だ。精神的に相当こたえたと思う。

ヤクルト・山田は4月末の打率が1割台と低迷した=共同

よくいわれるのはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の影響だ。彼らはいずれもWBCで主軸を務めた。ヤクルトのバレンティン、ソフトバンクのデスパイネらWBCで大活躍した外国人選手たちも出遅れ気味だったところを見ると、多少なりとも影響はあったのだろう。そう考えざるを得ない。

気持ちの持っていき方も難しかったのではないか。あれだけの真剣勝負で完全燃焼した直後、すぐにまた気持ちを奮い立たせられたかどうか。

打者は毎年春先にバットを振り込み、開幕に向けて状態を上げていく。キャンプはイメージと体の動きを一致させていく大切な時間なのだが、3月にWBCがあった今年は、本来なら1週間かけたい基礎練習を半分でこなすなどして間に合わせたはずだ。短期間の大会はそれでも乗り切れた。だが長丁場のレギュラーシーズンとなると、にわか普請では難しい。はたから見ればそんなに違うものかと思うかもしれないが、これは全然違うと断言しておく。

打者はそれほど繊細だ。好調と不調の差は紙一重。バットが寝ている、体が開くなどよくある不振の原因にしても、ビデオで見てもその違いを判別するのさえ難しい。感覚ほど当てにならないものはないけれど、それでも感覚は大切だ。安打が出ていても自分ではどうもしっくりこないということもあるし、感覚はいいのに映像を見ると不調時に近いというのも珍しくない。疲労がたまれば無意識にどこかで補おうと体がいつもと違う動きをし、良い感覚が消えてしまうこともある。

スランプは不意にやってくる。いい当たりが野手の正面に飛んだり、美技に阻まれたりする。「うわ、ヒットを1本損した」と思ったところから、一気に打撃が狂い、全く打てなくなるということがある。反対に1本のポテンヒットで気持ちがガラリと変わり、スランプ脱出というのもよくある話。チームや投手には白星、打者には安打が最良の薬となる。病は気からというように、打撃においても気持ちの要素は大きいのだ。

まず頭のケア、そして練習へ

シーズンは好不調の繰り返しだ。不調のない選手はいない。だが不調のダメージをどれだけ小さく抑えられるかは選手によって変わる。一流とそれ以外の分かれ目もそこにあると僕は考える。プロの1軍にいるような選手は皆、好調時には安打を打てる。差が出るのはむしろ不調時だ。スランプに見舞われても人より早く脱出できる選手、本調子でなくてもチームに貢献できる選手がレギュラーをつかみ、一流になっていく。

調子が落ちたとき、まずすべきは頭のケアだ。自分と向き合い、何が問題で、何をすべきかを考える。その上で練習なりトレーニングをした方がいい。出した答えが必ずしも正解とは限らないが、少なくとも闇雲に動くよりは自分なりの根拠がある。裏付けのある練習は自信を与えてくれるものだ。

DeNA・筒香はかなり復調してきている=共同

山田の場合、彼の打撃を支えている軸回転ができていないように見える。これは体のキレに問題があるのだから、瞬発系のトレーニングが有効だと思う。本人も分かっているはずだ。数字から察するに、筒香はかなり復調してきたようだ。正直あまり見ていないので詳しいことはいえないが、彼は調子が悪いと自分から球をつかまえにいく癖がある。手元まで呼び込み、詰まりながらでもフェンスを越えるような本来の打撃を見せてほしい。

普通の選手であれば、調子が悪ければ休んで調整や気分転換という手もある。だが山田や筒香、中田クラスになるとその選択肢はない。4打席凡退しても5打席目が回ってくれば「そろそろ1発出るんじゃないか」と相手投手に脅威を感じさせ、ファンに期待を抱かせる。どんな状態でも打席に立ち続け、勝負に臨む。逃げ場のない立場は厳しくもあるが、そんな存在感と責任もまた、彼ら自身が築き上げたものだ。出口のないトンネルはない。間もなく本格的に復活するはずの猛打を僕も心待ちにしている。

(野球評論家)

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