2018年11月20日(火)

クラウド先生にお任せ!ネット連動の野菜栽培器

2017/5/10 6:30
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台湾の電源装置大手である台達電子工業(デルタ電子)子会社のアドトロンテクノロジー(東京・港、柯進興社長)は、スマートフォン(スマホ)やクラウドと連携する家庭用の野菜水耕栽培器「foop」を開発した。レタスやルッコラなど15種類の葉物野菜をクラウドから得た制御方法で栽培できる。最適な水やりのタイミングを知らせるなどで、手間も失敗も少なく、野菜を水耕栽培できる。

家庭に設置するfoopは昨年4月に試験販売を始め、12月に税別4万8500円で本格販売を始めた。3月には一部機能を省いた廉価版を発売するなどラインアップを拡充している。

アドトロンテクノロジーの水耕栽培器「foop」

アドトロンテクノロジーの水耕栽培器「foop」

従来から家庭で使う野菜の水耕栽培キットは多く販売されている。foopの最大の特徴はクラウドと連携して野菜に合った制御を自動ですることにある。庫内の環境データなどをセンサーで測定し、スマホに通知する機能も備える。

開発を主導するデルタ電子IoT事業開発部ジェネラルマネージャーのシェ・ユンホウ氏は「スマホやクラウドと連携するのが最大の特徴だ」という。foopはスマホと低消費電力の無線通信規格「ブルートゥース・ロー・エナジー(BLE)」で、クラウドとは無線LANで接続する。

まずは、庫内にあるスポンジを水に浸し、種を植える。スマホで野菜の種類を選択すると、最適な制御方法をfoopがクラウドから入手する。その方法に基づいて、野菜の成長に必要な発光ダイオード(LED)の光量などを制御する。スマホの位置情報から、地域の気温を考慮して制御方法をわずかに変えるなど、野菜作りが失敗しないように細かい工夫がされている。

foopは水位のほか庫内の温度や湿度、二酸化炭素(CO2)の濃度を測定するセンサーを搭載している。水位が設定値を下回ると、利用者のスマホに通知して、水やりを促す。家庭での水耕栽培にありがちな水のあげ忘れやあげすぎで、野菜が枯れてしまうリスクも最小限にとどめる。

種を植えてからの時間も計測しており、野菜の食べごろが近づくと、スマホに収穫期を知らせる。LEDは葉物野菜に最適な波長を選んでおり、多くの野菜は種まきから1~2カ月もすれば収穫できるという。

スマホのサポート画面には、利用者の声を集約する機能がある。うまく栽培できない利用者がいれば、クラウドに搭載した人工知能(AI)の機械学習機能を駆使して、クラウドに保存しているセンサーのデータなどを解析し、制御方法の改善に利用する。利用者が増えるほど、失敗のケースも増え、より精度の高い制御方法作りにつながる。

今秋には発育状況を記録するカメラを備えた新製品を発売する。家電向けの通信規格「エコーネットライト」にも対応し、部屋にあるエアコンや加湿器なども合わせて制御する仕組みも備える。家庭での利用だけでなく、新たに研究機関や企業などで、水耕栽培の可能性を検討、調査するための需要も見込む。新製品を利用した企業からfoopの一部を改良した水耕栽培システムの発注も狙う。

foopの生産は日本の工場に委託しており、日本国内のみで販売している。今後はfoopの機体だけでなく、葉物野菜の種の供給や、クラウドを通じた各種のサービスを有償化するなどで、継続して売り上げにつながるビジネスモデル作りも進めたい考えだ。

もっとも、電源装置を製造、販売するデルタ電子がなぜ国内で水耕栽培器というニッチな市場に参入するのか――。同社が「foop」で得ようとするのは何も野菜栽培の市場だけではない。様々な用途に展開する、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の技術とノウハウ蓄積というより大きな狙いがある。

生物が対象の野菜栽培にトラブルはつきものだ。各地に広がるfoopが送るデータのばらつきは、あらゆるトラブルが予想されるIoT機器の開発に必要なノウハウになる。わずか10人程度の小さな企業の新規事業が、デルタ電子本体のIoT開拓に向けたノウハウ蓄積の役割も担っている。

(企業報道部 河合基伸)

[日経産業新聞 5月10日付]

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