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出版物流、荷物減っても配送負担が増す理由

2017/5/5 6:30
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 荷物が増えすぎて運びきれなくなっているのが宅配だ。一方、荷物が減っているのに、人手不足に陥っている物流の現場もある。書籍や雑誌などの出版物流だ。その深刻さは、出版取次最大手の日本出版販売(日販)と2位のトーハンが大都市での出版物の共同配送を決めたことにも表れている。一体、何が起きているのか。深夜の配送の現場に記者が同行した。

「今は1回ですべての雑誌を運ぶことができる」と小島さんは語る
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「今は1回ですべての雑誌を運ぶことができる」と小島さんは語る

 「雑誌の数が少なくなりましたね」。出版物流を取次会社から請け負っているライオン運輸(東京・墨田)の運転手、小島信孝さんはトラックに乗り込んだ。小島さんはハンドルを握って14年目。都内のコンビニエンスストア約80店に雑誌を運ぶのが仕事だ。

 以前は運ぶ雑誌の量が多かったため、トラックに全部を積み込めなかった。数回に分けて運ばなければならず、積み込む手間と時間もかかっていた。だが「今は1回ですべての雑誌を運ぶことができる」(小島さん)。

 「楽になっているのではないか」。記者の思いをよそに小島さんはエンジンのキーを回し、午後11時にライオン運輸の物流拠点を出発した。

 この日は雨が降っていた。小島さんは慎重にトラックを運転し、最初の配達先のコンビニに到着した。「おはようございます」と言いながら雑誌の束を店頭に置き、代わりに売れ残った雑誌を引き取る。店員に確認の印を押してもらい次のコンビニへ向かう。

 数軒回ったところで小島さんの仕事の大変さがわかってきた。レジにお客が並んでいる店では、確認印をもらうために待たなければいけない。繁華街では、店の前に駐車ができず、数百メートル離れた場所から雑誌を運ぶ必要がある。平均すると1店につき5分程度かかる。

 この5分という時間は雑誌の量の多寡にそれほど影響を受けない。小島さんの負担になっているのは、配達先のコンビニの数が増えていることだ。「10年前は回る店舗数も少なくて休憩を取る時間もありました。今はどれだけ急いでも時間は足りません」

 小島さんは「担当地域のコンビニや書店の場所と道順はすべて覚えている」という。約80店をどのようにたどればムダがないのかを自分で考えており、記者が同行した日もカーナビゲーションを見ずに進んで行った。それでもすべてのコンビニを回り終えたのは、翌日の朝5時半だった。

 2001年度には約4万店だった全国のコンビニの店舗数は、今では6万店に迫りつつある。小島さんのような運転手にとって、仕事の負担は年々高まっている。

 運ぶ荷物の量も増えていれば、物流会社が受け取る配送費が増え、運転手の待遇も改善する。だが、電子化で紙の雑誌の需要は減る一方。ライオン運輸社長で、東京都トラック協会出版部会長でもある滝沢賢司さんは「同じ運賃をもらうために運転手が運ぶ時間は10年前に比べて2~4時間増えている」と語る。

 「これじゃ食べていけない」。都内の運送会社の社長はこう語った。この会社は7年間赤字が続いたため、16年に出版配送から手を引いた。車庫があった場所はマンションになった。

 10年前はトラック1台で1日6万円分の出版物を運ぶこともあったが、最近では1万5千円まで落ちていたという。そこから運転手や事務員の人件費、トラックの燃料費などを払わなければいけない。「運べば運ぶほど赤字が出る」

 仕事は大変になっているのに運賃が下がるという二重苦。これでは運転手を集めるのは難しい。トーハンの川上浩明専務は「待ったなしの状態。1~2年で物流問題を解決しなければ出版物を読者に届けられなくなる」と危機感を示す。

 こうした事態に対応するため、日販とトーハンは2年以内に共同配送を始める。首都圏と関西圏が最初の対象地域になる見込み。現時点では、日販がローソンファミリーマート、トーハンがセブン―イレブンといったように、別々に運んでいる。共同配送にすれば、10時間かかっているところを8時間にできる。

 配送休止日の増加にも取り組む。日本雑誌協会と協議、16年には年5日だった土曜日の休配日を、17年には13日にする。出版社には痛手だが、日販の安西浩和専務は「物流問題は我々取次だけでは解決できない。出版業界全体の問題として取り組まなければ大変なことになる」と語り、出版社に協力を求めている。

 コンビニに行けば最新号の雑誌がいつでも買えるという利便性の裏で進んでいた問題。配送の効率化だけでなく、物流のコストをどう負担するのかという議論も必要だ。

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 出版配送の小口化は急速に進んでいる。出版科学研究所(東京・新宿)によると、16年の出版物販売額は1兆4709億円で12年連続で前年実績を下回った。16年の書店の店舗数は1万3041店で07年から2割強減少したが、コンビニの店舗数は5万5636店。10年間で運ぶ荷物は3割減る一方で、配達先の数は2割増えている。

 本の売り上げのうち、出版社と著者が約7割、書店が2割強、残りの1割弱が取次の取り分になると言われている。取次が配送業者に払う運賃は、配送先の数や運送距離ではなく、運ぶ本の量で決まるのが一般的だ。

 荷物が少なくなるなかで配達先や距離が増えれば、運送業者は収入が減る中で従業員に長時間働いてもらわなければならなくなる。荷物の増加に悩む宅配便とは異なった危機がある。

(大阪経済部 荒尾智洋)

[日経産業新聞 5月5日付]

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