クラブ消滅危機で自ら経営者に バスケ折茂武彦(下)
レバンガ北海道代表兼選手

2017/4/29 6:30
保存
共有
印刷
その他

始まりは深刻に考えていなかった。2011年。レラカムイ北海道は虚偽決算の問題で日本バスケットボールリーグから除名された。東日本大震災後の混乱が重なり新会社設立の動きも鈍い。クラブ消滅の危機。「引き受け手がいないならとりあえずやってみよう」。名乗り出たのは一選手にすぎない折茂武彦だった。

選手人生と違い、経営者・折茂は失敗の連続だった。「がんばれ」を逆さ読みした「レバンガ」にクラブの看板を掛け替え、新法人のトップに就いたが「事業計画書をつくったことも予算を組んだこともないし、何が何だか分からない」。

債務超過による2部落ちを回避するため、経営者としての手腕が再び問われる

債務超過による2部落ちを回避するため、経営者としての手腕が再び問われる

身の丈に合わない高年俸の選手を獲得し、資金繰りに行き詰まった。「前のチームが潰れた時、選手の動揺を生み、ばらばらにしたのは給料の未払いだった」。最後にすがったのが自分の預金口座。数千万円あった貯金はつゆと消えた。「年俸は興行で賄えるだろうという丼勘定でやってしまった。自分が選手であるあまり、勝ちたかったから」

いばらの道の経営が1つ報われたのは15年8月。新しく誕生するBリーグで、1部への参入が決まった。ファンの前で吉報を聞いた折茂は30秒間、涙を流し、何も答えられなかった。

支えてくれる人のために

今は堅実経営を心がける。別の最高経営責任者も起用。選手に専念しがちだったシーズン中も定期的に報告を受け、指示を出す。

今季は初の単年度黒字の見込みだが、順風満帆とは言えない。チームは残り5試合で総合順位は13位。15~18位が回る残留プレーオフは避けられそうだが、より高い壁が待つ。約2億円の債務超過を1年で解消しないと、規定で2部落ちとなる。確たる見通しはない。「スポンサーにアプローチするなどやらないといけないことがたくさんある」。再び手腕が問われる。

北の大地へ渡る前。トヨタ自動車のエースとして君臨していた折茂は鬱屈を抱えていた。野球やサッカーと比べものにならぬ注目度の低さ。「何でここまで違うんだ」。張り合うように東京の繁華街で飲み歩き、高級車を乗り回した。一方で、ファンからのサインの頼みは断った。「企業チームだから、誰かのためにバスケをしているわけではない。何でこんな面倒くさいことを、と思っていた」

プロクラブへの憧れからレラカムイに移り「自分ががらっと変わった」と言う。「ファンに支えてもらってクラブが成り立っていると分かった。支えてくれる人のためにバスケをやろうという気持ちになった」。6年前、二足のわらじを決めた心の底には「こういうファンのいる土地でプロクラブを残さないといけない」という思いもあった。

そう考えると、北海道に今、Bリーグのクラブが存在していることは1つの奇跡にも思えてくる。折茂が火中の栗を拾わなければ。地元のファンの声援が、孤高のエースの心を溶かしていなければ。(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊4月26日掲載〕

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]