/

メッシ欠くアルゼンチンに迫る W杯予選敗退の足音

サッカージャーナリスト 沢田啓明

サッカーの2018年ワールドカップ(W杯)南米予選で、2つの超大国が対照的な状況に置かれている。

全18節中第14節を終えた時点で、ブラジルは10勝3分1敗(得点35、失点10)の勝ち点33で、2位コロンビアに勝ち点9差をつけて首位を独走する。4節を残し、早々と4位以内を確定させW杯出場を決めた。一方、アルゼンチンは6勝4分4敗(得点15、失点14)の勝ち点22で5位。仮にこの順位で予選を終えたら、オセアニア地区代表との大陸間プレーオフに臨まなければならない。6位エクアドルが勝ち点2差、7位ペルーと8位パラグアイが勝ち点4差で迫っており、6位以下に落ちて敗退する可能性もある。

2つの超大国の「明と暗」

昨年3月の第6節終了時点ではアルゼンチンが勝ち点11の3位で、ブラジルは勝ち点9の6位に沈んでいた。南米最強国を決めるコパ・アメリカ(南米選手権)でも状況は似ていた。15年大会ではブラジルが準々決勝で敗退したのとは対照的に、アルゼンチンは決勝に進出(地元チリに延長、PK戦の末に敗れる)。昨年6月に米国で行われた創設100周年記念大会ではブラジルが早々と1次リーグで姿を消す一方、アルゼンチンは決勝に進んだ(再びチリに延長、PK戦の末に敗れる)。

しかし、ここから立場が逆転していく。ブラジルがドゥンガ監督を更迭して経験豊かなチッチ監督を招いたのに対し、アルゼンチンではチーム作りが軌道に乗りつつあると思われたヘラルド・マルティーノ監督が辞任を、エースのメッシ(バルセロナ)が代表からの引退を表明。その後、メッシは代表引退を撤回したがマルティーノ監督は退任し、エドガルド・バウサ氏が後任に指名された。

ブラジルは昨年のリオデジャネイロ五輪で初優勝。14年の自国開催W杯の準決勝でドイツに大敗を喫したショックを多少なりとも和らげ、選手たちは自信を取り戻した。チッチ監督はフォーメーションを4-1-4-1に変え、若手CFガブリエルジェズス(マンチェスター・シティー)、MFパウリーニョ(広州恒大)、左SBマルセロ(レアル・マドリード)らをレギュラーに抜てきした。ネイマールが主将を任されて精神的な重圧を感じているのを察し、主将をCBミランダ(インテル)らベテランに託すことでエースの負担を軽減した。トップと最終ラインの距離を常にコンパクトに保ち、高い位置からプレスをかけて相手ボールを奪うと人数をかけて攻めるアグレッシブなスタイルを植え付け、就任後の南米予選で8戦全勝。守備ではミランダ、攻撃ではネイマールが柱だが、最大の強みは中盤にある。カゼミーロ(レアル・マドリード)が最終ラインの前で強固な壁となり、センターハーフのパウリーニョとレナト・アウグスト(北京国安)が攻守両面で貢献してチームにダイナミズムを加えている。

これに対し、アルゼンチンは選手間の距離が遠く、攻撃と守備が分断されている。ブラジルのように、攻守のつなぎ役をこなせる選手がいない。前線と中盤でのプレスが効いていないので最終ラインが相手の攻撃に直接さらされることが多く、8試合で11失点。攻撃陣も、メッシが故障で欠場を繰り返し、イグアイン(ユベントス)、アグエロ(マンチェスター・シティー)らが極度の不振で、わずか9得点。新監督就任後、3勝2分3敗と苦戦している。しかも、メッシが第13節チリ戦で審判に暴言を吐いて4試合の出場停止処分を受け、今後、最終節エクアドル戦にしか出場できない。第14節終了後、アルゼンチン協会はバウサ監督を更迭したが、後任は未定。セビージャを率いるホルヘ・サンパオリ氏が有力候補と目されているが、誰が監督になっても極めて厳しい状況だ。

不振の背景に組織の混乱も

不振の背景には、昨年6月にサッカー協会幹部が収賄容疑で逮捕・起訴されてから機能不全に陥り、ようやく今年3月になって新会長が選出されたという組織の混乱もある。

選手個々の力の総和では、アルゼンチンはブラジルに全くひけを取らない。現代サッカーでは協会のサポート体制と監督の力量が極めて重要であり、これらの要素が代表チームの成績を大きく左右しかねないことを痛感する。

南米予選の残り4節で、すでにブラジルが獲得した枠を除く3.5枠を下位のボリビアとベネズエラを除く7チームが激しく争う。

今後、アルゼンチンは新監督のもとでまずは守備を立て直し、攻撃陣はディバラ(23、ユベントス)、イカルディ(24、インテル)ら若手を抜てきして総力戦で臨むしかあるまい。

最も重要なのが8月末に行われるアウェーでの宿敵ウルグアイ戦。ウルグアイもW杯出場を目指して懸命だろうが、少なくとも勝ち点1をもぎ取る必要がある。続く2節はホームでのベネズエラ戦とペルー戦で、絶対に連勝しなけれならない。そして、最終節でようやく復帰したエースを押し立て、ホームではめっぽう強いエクアドルに挑む……。想像しただけで、興奮してくる。

過去に2度世界の頂点を極めた超大国が底力を見せるのか、あるいは他の南米中堅国が手負いの巨人を敗退に追い込むのか。壮絶かつスリリングな試合の連続となるに違いない。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン